カップルで見てはいけない。定点カメラ映画「パラノーマル・アクティビティ」
公 開:2007年
監 督:オーレン・ペリ
上映時間:86分
ジャンル:ホラー
「パラノーマル・アクティビティ」シリーズと言えば、定点カメラの映像に、タイトルの通り超常現象が映っている、というところから展開していく物語となっています。
はいはい、そういう系ね、と思う人も多いと思いますし、ホラーであることもあって、なんとなく見るのを避けている人もいるかと思います。
しかし、「パラノーマル・アクティビティ」シリーズ、実は、2023年現在において、6作品つくられています。
ある程度のパターンはあるにしても、これほどシリーズ化するには理由があるものです。
作品全体をつなぐストーリーラインは存在するのですが、今回は、あえて一作目である「パラノーマル・アクティビティ」について、どのように見ていくと面白いか、という点に絞って感想を述べていきたいと思います。
超低予算映画
製作費15000ドル。
車一台程度の金額でつくられたという破格の製作費となっています。
そのため、最近の映画と比べると、2007年公開の「パラノーマル・アクテビティ」は、映像的には見劣りする部分はあるかもしれませんが、そのアイデアと、見せ方については、決して古びるものではありません。
いわゆる、モキュメンタリーという作りである本作品は、一般人が撮影した映像を我々がみている、というつくりにしています。
映像的に粗目だったりするのも含めて、いわゆるホームビデオ風だと思えば、そのうち気にならなくなってきます。
逆に、誰かの家の私的な映像をみているという気分になっていくにしたがって、主人公であるケイティとミカという二人の人間が、どんどん険悪になっていく姿のほうにも、ドキドキさせられてしまいます。
さて、早速、内容に入っていきたいと思います。
騒がしい霊
3年ほど同棲しているカップルである、ケイティとミカ。
ミカは、デイトレーダーで稼いでいる男性で、ケイティは、子供の時から超常現象を体験していた教師を目指している女性です。
そんな二人が気にしているのは、夜中寝ているときに起きる謎の現象。
ドンッ。
という音が家に響き渡ったり、ドアが開いたり閉じたり、と不可解な現象がおきます。
いわゆる、ポルダーガイスト現象です。
「パラノーマル・アクティビティ」をたんなるホラー映画だと思ってみてしまうと、まぁ、そのうち悪魔と対決するんだろうな、と思ったりするのですが、残念ながら本作品は、そういうものがありません。
霊能力者を名乗る博士は、「人間の魂と交流することはできるが、悪魔の退治はできない」と言って帰ってしまいますし、悪魔の専門家の先生は、海外出張でなかなか連絡がつきません。
どうなっているんだろうかと思っているうちに、怪奇現象は益々活発になっていきます。
「あなたが、刺激するのが悪いのよ」
と言って、どんどんヒステリーになっていくケイティ。
最後のほうには、実害が彼らに及びますが、それまでの間については、実は二人の仲が悪くなっていくほうが、恐ろしい作品になっていきます。
カップルは見てはいけない。
「君の為にやっているんだ」
とミカは、ガジェット好きらしく、高価なカメラを購入します。
興味本位で、ケイティの身に起こる現象を記録しようとしますが、懸命な観客であれば、それが、なんかあまりいいことではないだろうとは感づいてしまうところです。
しかし、物語の始まったときは、ケイティとミカのいちゃいちゃした映像がかなり長い時間垂れ流しになります。
15000ドルでつくられたというだけあって、役者はまったくの無名の人をつかっており、決してケイティは、圧倒的な美人というわけでもありません。むしろ、かなり肉感的な女性であり、そこが素人撮影っぽさに拍車をかけており、演出の勝利だといえます。
「パラノーマル・アクティビティ」は、いわば、ラブラブだったカップルが、超常現象という事件によって、価値観の違いがはっきりとしていき、やがて、心が離れていくのを描いた、かなりキツイ映画となっているのです。
霊と交信することができるというヴィジャボード。
はじめは、買わないと約束するよ、と言っていたミカですが、気づいたらそれを家に持ち込んでいます。
「買わないっていったじゃない!」
と激高するケイティに対して
「買ってはいない。借りたんだ」
と、言い訳します。
カップルにおいて、やってはいけないことが次々と行われています。
「君の為だ」
と言いながら、ミカはどんどんケイティを怒らせていきますし、霊に操られていたらしいとはいえ、家の外に薄着で飛び出していき、椅子に座ったまま家に入らないケイティに困惑するミカ。
超常現象を前に、もっとお互い協力したり、助け合ったりすればいいのに、なんだか二人はかみ合っていません。
そのうち、霊の動きはますます活発になり、物語は最終局面を迎えることになるのです。
モキュメンタリー
さて、話は逸れますが、モキュメンタリーで有名な作品といえば、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」は欠かせません。
魔女伝説のドキュメンタリーを撮影していた学生たちが消息不明となり、ビデオテープが見つかった、という作りは、話の筋を聞くだけでもゾクゾクする感じがします。
この手の作品の原点的なものといえば、イタリア映画「食人族」が有名ですが、当時は、この手のものが流行っていたというか、良くも悪くも冗談が通じる世の中だったのかもしれません。
いずれにしても、フィクションをドキュメンタリー風に撮るという手法は数多くありますが、「パラノーマル・アクティビティ」も、成功例の一つといっていいでしょう。
単に恐ろしい話を、ありそうな雰囲気で語ることで怖がらせるものであれば、おそらく、そこまでヒットはしなかったことでしょう。
本作品は、全6作品によってつくられる意外にも壮大な物語となっているのですが、少なくとも、その一作目だけを見るのであれば、それは、カップルのすれ違いを描いた作品となっているところが、面白い点です。
何事もやりすぎはいけません。
以上、カップルで見てはいけない。定点カメラ映画「パラノーマル・アクティビティ」感想でした!
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