映画感想文「パラレル・マザーズ」ペドロ・アルモドバル

配信で「パラレル・マザーズ」を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

※トップ画像は映画と関係ないです。すみません。家の近くの紫陽花を思わず撮影したのでございます。

さ、話を映画に戻します。
まずは情報はどうぞ。

2021年　スペイン・フランス合作
監督　ペドロ・アルモドバル

写真家として成功しているジャニスと17歳の少女アナは、同じ病院の産科病棟で偶然出会い、同じ日に女の子を出産。ともにシングルマザーとして生きていくことを決意していた2人は、再会を誓って退院する。ところが、ジャニスがセシリアと名付けた娘は、父親であるはずの元恋人から「自分の子どもとは思えない」と言われてしまう。それをきっかけにジャニスがDNA検査をしたところ、セシリアが実の子でないことが判明。アナの娘と取り違えられたのではないかと疑うジャニスは、悩んだ末にこの事実を封印し、アナとも連絡を絶つ。しかし1年後、偶然アナと再会し、アナの娘が亡くなったことを知る。

映画.comより

スペインの名匠、ペドロ・アルモドバルさん作品。
アルモドバル作品に詳しいかと言われるとそんなことはないのだけど、以前感想文を書いた「ペイン・アンド・グローリー」が素敵だったので、期待して観ました。

で、どうだったかというと、自分はアルモドバルさん好きだなあ、と。
あらすじにあるように、２人のシングルマザーの赤ちゃん取り違え事件がお話のメインなのだけど、実はもうひとつテーマがあって、それは過去にあったスペイン内戦の話。
内戦により行方が分からなくなった主人公ジャニスの曽祖父の遺骨を発見して、ＤＮＡ鑑定して、人物を特定するというもの。
自国の歴史の暗部をきちんと見つめようというメッセージがあります。

正直、その２つがスマートに結びついてるかと言われると、首をひねってしまう。ちょっと飛躍している気がします。
構成が見事、という感じはなかった。
だから作品の出来だけでとらえるとなかなか難しいのだけど、その強引な感じも含めて好きか嫌いかと問われると、好きなんだよなあ。
ゴツゴツしてるんだけど温かみがあるんですよね。

だって、過去の内戦のことを語るのに現在のシングルマザー２人が主役って、すごくないですか？
一歩間違えるとマッチョで大きな語り口になりそうなのに、アルモドバルさんは大胆さとナイーブさを併立させて物語るんですよね。
作風である女性賛歌はそのままに、命の認識という「人間の基盤」から目をそらさない。

良い所だけを見せようとしてないのがいいんだよなあ。
良い所もそうでない所も全部見せる。そしてそれを讃える。
ポジティブということではなく、行き先をしっかり見据えて道を作っていくというか。
間違いなく重い話なのだけど、アルモドバルさんの鮮やかな画調もあって、全体的に風通しは良いです。

自分は女性２人がキッチンに並んでいるシーンが印象に残っています。
中年のジャニスが若いアナに家庭料理の作り方を教える。
ジェンダーうんぬんということではなく、歴史も料理も伝えるっていう意味ではつながってるんだなあとハッとさせられました。
アルモドバルさんのインテリア、特にキッチンの内装が好きです。

ただ自分は「ペイン・アンド・グローリー」（☆４つ）の方が好きなので、☆半分減らしましたとさ。

総合評価　☆☆☆＋☆半分

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう！世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆　→面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆　　→まあまあ。
☆☆　　　→う～ん、ちょっと。。。
☆　　　　→ガーン！