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映画感想文「ラスト・ショー」ピーター・ボグダノビッチ

配信で「ラスト・ショー」を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

って、みなさん「ラスト・ショー」ご存じですか?
まあ有名ではありませんよね。。。
ここで勝手にハードルを上げると、1972年のキネマ旬報ベストテン洋画部門で栄えある第1位に選ばれています。
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、1972年といえば映画史に燦然と輝く「ゴッドファーザー」の公開年。

で、気になる「ゴッドファーザー」のほうの順位はというと、8位。(ランキングがいかに水ものか。。。)
他に有名どころだと「フェリーニのローマ」が2位、「時計じかけのオレンジ」が4位、「フレンチ・コネクション」が10位、「ダーティハリー」が11位となっております。
名作ぞろいの年だなあ。

その中で1位に選ばれた「ラスト・ショー」は一体どれだけすごいんだってなるのですが、あおり記事を書いているわけではありません。
感想文です、お間違えなく。

ひとことで言うと、渋い。渋渋渋い。
アカデミー賞でも助演男優賞と助演女優賞を受賞しています。
ね、渋いっしょ。
もう随分前に1度観ているのですがその時も渋いと感じました。
で、今観たら印象が変わるかなと思ったのですが、やっぱり渋かった。。。

1972年のアメリカ映画で、監督はピーター・ボグダノビッチさん。
1950年代のテキサスの田舎を舞台にしたお話で、モノクロ。
高校生男子のパッとしない青春ものなのですが、さびれた街の描写だったり、古き良きアメリカを体現する大人(上記の助演男優賞受賞のベン・ジョンソンさん。渋い。)の死だったり、全体的にノスタルジックな喪失感に包まれています。
ウィスキーをちびちび飲みながら観たら絵になりそうな映画。

この映画が1位に選ばれた理由はもう半世紀前のことなのでよく分からないけど、主人公たちの「青春の苦み」が等身大に描かれているので、1970年代の日本の人が共感できる部分が大きかったんじゃないかなと。
(イタリアにルーツをもつアメリカマフィアのスケールはピンとこなかったのかもしれないし、マフィア=マチズモと誤解されたのかもしれない)

        ***

この映画の特徴は喪失感なのだけど、自分は性的描写がいいな、と感じました。
高校生同士の性体験だったり、高校生男子と既婚の中年女性の逢引きだったり、女子高生と中年男性のビリヤード台での行為だったり、結構性的なシーンがあるのですが、全部見せないし動きもリアルじゃない。
でもそれくらいが丁度いい。
時代もあるしモノクロということもあるかもしれないけど、全然違和感ない。
性的な行為そのものというより、そこから生まれる感情の揺れみたいなものを映しとってて、それがまた喪失感あふれる作品にマッチしてました。
最近そういう映画ってないかもなあ。

       ***

あと、印象的なセリフが2つありました。
ひとつは、主人公たちのグループがその中でうまく話ができない子をからかい、その子に女性をあてがうのだけど、その子は意味を理解していないから女性に叩かれて鼻から血を出す。
それに対して、古き良き大人のベン・ジョンソンさんが若者たちに「最低だ。ビリー(うまく話せない子)をもてあそんだ。血を拭いてやる優しさもない。二度と関わるな」とビシっと言う。
(その後、主人公はちゃんと謝りベンさんと和解します)

もうひとつは、ビリーは箒で道を掃く習慣のある子なのだけど、終盤でトラックにはねられて死んでしまう。
大人たちは「君(トラック運転手)の責任じゃない」とか「こんな朝に何をしてたんだ」とか「ただの愚かな子だ」みたいなことを口々に言って、横たわっているビリーを起こそうともしない。
その大人たちに対して主人公が「道を掃いてたんだよ、クソ野郎どもめ。道を掃いてたんだよ」と憤り、ビリーの身体を起こす。

ああ、なんてまともなセリフなんだろう。
翻って、果たして今の自分はどうだろうか?
集団で弱い者いじめする側に回ってないだろうか?

「ゴッドファーザー」のような派手さはないけど、「ラスト・ショー」は内省を促す映画です。
まあ一度目よりはその渋さの良さが理解できたかな。

総合評価 ☆☆☆☆

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

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