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映画感想文「戦場のメリークリスマス」

配信で「戦場のメリークリスマス」を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

坂本龍一さんが亡くなられました。
すごいファンだったかといわれるとそうでもないのだけど、悲しい。
自分の世界を自分なりのやり方で表現できる、かっこいい大人だと思ってました。
心に穴が空いた感じです。寂しいです。
ご冥福をお祈りいたします。

1983年 日本・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド合作
監督 大島渚

第2次世界大戦中のジャワの日本軍捕虜収容所を舞台に、極限状況に置かれた人間たちの相克を描いた異色のヒューマンドラマ。日本軍のエリート士官ヨノイと連合軍捕虜セリアズ少佐の愛情めいた関係を中心に、日本軍人と西洋人捕虜との関係が興味深く描かれる。デビッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけしといった国内外の異色スターたちが共演。坂本の音楽も高い評価を獲得し、テーマ曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」は誰もが知る名曲となった。
映画.comより


面白かったです。
まあ「腹を抱えてワッハッハー」的な面白さではなくて、「興味深い」面白さです。

第二次世界大戦中の日本軍の捕虜収容所のお話。
捕虜収容所ものの映画って、日本やドイツの非人道的な扱いに対して連合国側の捕虜たちが悲惨な状況の中でも人間性は失わない、もしくは西洋的な民主主義的価値観で立ち向かう、ってテーマがベースにありますよね。

で、そこにプラスして作品ごとに味つけがある。
「大脱走」なら仲間との作戦もの、「第十七捕虜収容所」なら裏切り者をさがすサスペンス、「戦場にかける橋」なら敵味方をこえた友情というか。

じゃあこの「戦場のメリークリスマス」のそれを問われると、なんだろう、「(東西文化の)美意識の邂逅」とでもいうのでしょうか。

坂本龍一さん演じたヨノイ大尉は、「2・26事件」の直前に異動させられたので、同士とともに志しをまっとうできなかった後悔を抱えています。
一方、デビッド・ボウイさんが演じた英国人捕虜・セリアズも、その階級意識から弟がいじめに遭っているのにも関わらず助けなかったことを悔やんでいます。
弟はその一件がもとで、大好きだった歌うことをやめてしまいます。
セリアズは弟から歌を奪ってしまったことを引きずっていて、ある種「死に場所」を求めるように戦争に参加していました。
ヨノイもまた「死に場所」を求めていた。

文化的背景も違えば個人的背景も異なるにも関わらず、ある種共通する精神性を持った2人が、戦争中の捕虜収容所という特殊な状況下で出会ってしまったことによる感交というかシンクロ、ってなものがこの映画の肝だと思います。

        ****

オープニングのタイトルロールで坂本さん作曲の「Merry Christmas Mr. Lawrence」(ピアノではなく電子音)が流れるのですが、日本軍の戦争ものだし、このセンチメンタルなメロディーが映画にあうのかなと一瞬思いました。

でも、最後まで観るとこれはマッチしてましたね。

この作品は戦争を描いた作品で、日本軍の非人道的な部分や全体主義的な負の側面をちゃんと描いています。
切腹のシーンも数か所ありますが、格好悪く描いていて、当時の日本的価値観を変に美化していません。

ただ一方で、どこか「甘美」な印象を受けました。
全く背景の違う2人が出会い、ある種通じ合う「生き方への信念」から恋愛感情に近い気持ちを抱くのだけど、結果的にそれが成就しない切なさがある。
この切なさが、「Merry Christmas Mr. Lawrence」の感傷的なメロディーとマッチするんですよね。
そもそも「戦場のメリークリスマス」っていうタイトルも、センチメンタルですよね。

※あ、はっきり言って、クリスマスは本筋と関係ありません。
これからご覧になる方がいれば、そこは知っておいた方がいいかも。

まあ急いでない話のテンポだったり、どこか「ファンタジックな甘さ」だったり、1980年代らしい作品だなあと。
きっと世界中の監督に影響を与えてるのだと思います。

自分的には、日本人監督が80年代に「イギリス人が戦争に参加する理由」をちゃんと描いているところはすごいなと。
当時より個人主義的な生き方が広がっている今なら、いろいろ感じるところのある映画だと思います。

総合評価 ☆☆☆☆

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

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