映画感想「イニシェリン島の精霊」 二人の話、内戦の話
映画館で「イニシェリン島の精霊」を鑑賞しました。
いろんな賞レースで賞を取っている(アカデミー賞にもノミネート)ので、どないやねん、って感じで観に行きました。
やっぱり映画館はいいなあ。
感想を書いてみようと思います。
ストーリーはシンプル
話はいたってシンプル。仲の良かった男性2人が突然の仲たがい。
ただ「喧嘩した」とかはっきりした理由はなく、一方が一方にいきなり絶交を突き付けるというところから物語が始まります。
まあ絶交を突き付けた音楽を愛する芸術家肌のコルムは、パードリックのような物事を深く考えない男の相手をするのはもう嫌だ、自分の時間を好きなように使いたい、っていうそれらしい理由を言います。
う~ん、それはあると思うけど、それだけじゃない気がします。
お話としては、それに納得がいかないパードリックが何かとコルムにつきまとい、コルムはまたそれに腹をたて、どんどんエスカレートしていって…って感じで、ほんとうにシンプルな筋立て。
そこにパードリックの妹・シボーンがときにふたりの仲裁に入ったり、島で浮いた存在の若いドミニクがちょっとした展開を加えたりと、マクドナー監督の前作「スリー・ビルボード」に比べると、舞台(演劇)っぽい印象。
ところどころ出てきて、予言めいた言葉を吐く魔女っぽい人も「マクベス」を彷彿とさせます。
ただ島のきれいな風景をたっぷり映したり、動物を出したり、パブで飲んでるシーンあり楽器の演奏シーンありと、舞台臭をうまく消してるなと思いました。
個人的に舞台っぽい映画は得意じゃないので、そこはホッとしました。
内戦のメタファー
話を戻すと、この映画のメインストーリーである男2人の抜き差しならない争いはいったい何なんだ、ってことですよね。
このイニシェリン島の隣のアイルランド本土では内戦が起こっています。
劇中、その砲撃の音が聞こえます。
なので、この男2人の争いは内戦のメタファーとしても捉えることができそうです。
昨日まで仲の良かった者同士が主義・主張の隔たりから翌日にはいがみあう。
最初はささいないざこざだったのに、お互い引き返せなくなり、血が流れるようなことになる。
しかも第三者から見ると、どうしてそんなことになるのか、よく分からない。
「そこまでしなくてもいいのに」とか「適当なところでおさめればいいっしょ」と思ってしまう。
実際、パードリックは本土の内戦を自分には関係ない、どうでもいいと思っています。
でも自身とコルムとのやり取りはどうでもよくない。
今までの(仲良かった時の)歴史・思い出を考えると、そう簡単になかったことにできない。
というように、この映画は、戦争だったり内戦だったりの構造を狭い人間関係にうまく置き換えている。
表面的な出来事にもうひとつの層が上重ねされています。
最後に
とまあここで文章が終わればキレイな感想文なのだけど、もうひとつ(余計な)自分が思ったことを。
これって1人の人間の内面と読めないかなあと。
誰しも、人当たりのいい部分とそうでない部分を持ってませんか?
ちなみに自分は両方あります。
くだけた表現をすれば、誰かと話したい時もあれば1人で好きなことをしたい時もある。
気難しく考えることもあれば、何も考えないこともある。
自分はコルム性とパードリック性、両方持ち合わせてる気がして。
となると、1人の人間の両極性の対峙と見ることもできるのでは。
と、もっともらしいことを書きましたが、自分に引きつけ過ぎて見当違いなニオイがぷんぷんするので、深追いせずにやめておきます。。。
話を強引に変えると、マクドナーさんは火の使い方が上手。
前作の「スリー・ビルボード」も上手だったけど、今回もそう。
火の攻撃性を効果的にお話に組み込みますよね。
総合評価としては、☆3こ半。
でも☆半は潔くないし、俳優さん達の演技が皆さん良かった(コリン・ファレルさんの八の字眉毛!)ので、☆4つ。
総合評価 ☆☆☆☆
☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆ →まあまあ。
☆☆ →う~ん、ちょっと。。。
☆ →ガーン!
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