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映画感想文「EO(イーオー)」 主役のロバを通して人間性に光を当てる、スタイリッシュ作品

某有料衛星チャンネルの配信で「EO(イーオー)」を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

2022年 ポーランド・イタリア合作
監督 イエジー・スコリモフスキ

愁いを帯びたまなざしと溢れる好奇心を持つ灰色のロバ・EOは、心優しい女性カサンドラと共にサーカスで幸せに暮らしていた。しかしサーカス団を離れることを余儀なくされ、ポーランドからイタリアへと放浪の旅に出る。その道中で遭遇したサッカーチームや若いイタリア人司祭、伯爵未亡人らさまざまな善人や悪人との出会いを通し、EOは人間社会の温かさや不条理さを経験していく。

映画.comより

はい、ロバが主役の映画「EO(イーオー)」を観ました。
監督はポーランドのイエジー・スコリモフスキさんで、巨匠だそうです。
自分は知らなかった。。。

とはいうものの、さすがに巨匠と呼ばれるだけあって、凄みのある作品でした。
サーカス団のロバ・イーオーは、動物愛護団体の抗議によりサーカスが閉鎖されたことから、流浪の旅に出ることを余儀なくされます。
心優しいサーカス団員カサンドラと離れることになり、いろんな土地を転々としていく。
それをスタイリッシュな映像を挟みながら展開していきます。
カサンドラへの思いだったり、ロバの見る夢(ちょっと悪夢っぽい)だったり、思考のイメージだったり。

ロバがどんな夢を見るか、人生の中で考えたことあります?
自分はなかったです。。。
そういう常人離れしたことを堂々と表現するのが巨匠なんですよね。
自分のような小市民みたいに、ちまちましてないんです。

まあ最初はロバが馬を羨んでるようなシーンもあって、「ロバがそんな風に思うのかなあ?」なんて思ったりしました。
なんか人間寄りの発想というか、擬人しすぎてるというか。
「ロバにはロバの、人間には思いもつかない豊かな世界があるんじゃないのか。人間と一緒にするな」って感じ。

でも序盤を通り過ぎると、タイトルにあるように「ああ、この監督はロバを通じて人間性というものに光をあててるんだな」と。

岩波少年文庫の「くまのプーさん」にイーヨーというロバが出てきますが、言葉は良くないけど、ちょいと愚鈍。
自分はイーヨーの、斜め上ぐらいからくる愚鈍さが大好きなのだけど(話はそれますが、A.A.ミルンさん著「くまのプーさん」は傑作だと思う。おすすめ。アニメは知らない)、ヨーロッパではローポジションの動物に見られてるのかもしれません。

そのちょいと下に見られてるロバを通じて、人間の本質的な願い(愛だったり自由だったり尊厳だったり)に迫るという大胆なアイデア。
さすが巨匠ですね、はんぱないっす。

ちょっとくたびれてる時に観たら、寝ちゃうかもしれない。。。
でも(人間)社会にとことん嫌気がさしてる時に観たら、ものすごく刺さると思う。

人間にとって何が大事か、イーオーが教えてくれます。
決して優しいだけのお話ではないけれど、今世界で起きていることに誠実に応えようとしている作品です。


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