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映画感想文「浮き雲」アキ・カウリスマキ

9月の終わりにそろそろ秋(アキ)の出番というオチで、アキ作品の感想文を書きました。

で今、秋の真っ只中なのだから、アキ監督の映画じゃん!ということで「浮き雲」を鑑賞しました。某大手サブスクです。
アキさんの映画を観るのは今年5本目。ファンなのでございます。
って季節関係ないっすね。。。


96年のフィンランド映画で日本公開は97年。
97年の映画界の大ニュースといえば、邦画ではジブリ「もののけ姫」公開。
洋画では「タイタニック」公開。
この2本に挟まれてひっそり公開された作品です。

内容は不幸続きの中年夫妻の話。
2人は慎ましく暮らしていたのだけど、路面電車の運転士だった夫はリストラに遭い、レストランで給仕長だった妻は店が大手チェーンに買収され、解雇される。
2人は職探しをするのだけど、夫は決まった仕事が健康診断で引っかかり、なかったことに。
妻はうさんくさいオーナーの飲食店を切り盛りするも、給料を不払いされる。
夫妻は妻の経験を生かしてレストランを開こうと決意。だけど銀行から融資の許可が出ない。なら資金を作ろうと車の売却代を持って2人でギャンブルに向かうも、全額スってしまう。
もうどん底まで落ちる。。。
と、そんな夫妻に救いの手が差し伸べられて…。

っていうのがストーリーのほとんど。
ただアキ映画って話のスジを追うタイプのものじゃないんですよね。
むしろ話の起伏もなければ感情の爆発もない。登場人物が笑わない。
あとセリフは少ないし、音もあまりない(今作は比較的多めだけど)。
もうないない尽くし。

ここだけ読むとよくそんな映画観るよなって感じですよね。
でもね、ないない尽くしなぶん、ちょっとしたことが心に染みるのです。

夫妻はいろいろうまくいかなくて、失意のなかソファで肩を寄せ合う。
ああ、苦しい時に肩を寄せ合える相手がいるって、こんなに素敵なことなんだと思えるのです。

他にこんなシーンもある。
ローンが払えなくなって家具がない部屋で妻が開業計画を立てている。
夫は傍らでそれを見守る。「コーヒーを(飲む)?」
妻が「お願い」と答える。
夫はコーヒーを入れて妻に渡し、また見守る。

こんなさりげない生活の描写が、とてもいいもののように映るのです。
「幸せ」っていろんな形があるけれど、こういうことなのかなと思うのです。

「もののけ姫」も「タイタニック」も好きだけど、アキ作品も好き。
決して派手さはないけれど、身体の内側からじんわり温まる作品でございます。

ってやっぱり秋にぴったりじゃん!
でも答え合わせをすると、実際は「もののけ姫」の1週間後の7月26日に公開されています。。。
秋公開の方が絶対良かったと思うけどなあ。
自分、しつこいっすね。

総合評価 ☆☆☆+☆半分(☆5つが最高)


🫛豆情報🫛
12月にアキさんの新作「枯れ葉」が公開します。
ぜひ映画館で観たいのだけど、行けるかなあ。
ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」もあるんだよなあ。
ああ、どうしよう。どっちも観たい。
さあ時間が取れるか。

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