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〈インタビュー〉『三度目の、正直』野原位監督&川村りらさん①

2022年1月22日(土)より公開が始まり、その公開規模を徐々に広げている『三度目の、正直』



今回は本作の監督であり『ハッピーアワー』『スパイの妻』でも共同脚本を務めた野原位さん、同じく『ハッピーアワー』に出演し本作では野原さんとの共同脚本を務めながら中心人物である春を演じた川村りらさんのお二人にインタビュー!
パンデミック、政治、暴力。複雑な時代•2022年の最初にドロップされた本作の魅力、そしてお二人の普段考えていることまで、たっぷりお話を伺いました。

Interview:まっぴい、おく

神戸の街と、映画『ハッピーアワー』で築いた信頼関係


まっぴい:作品を拝見させていただきまして、第一に、生まれてから21年間ずっと神戸に住み続けていて、すごく神戸愛に溢れた作品だと感じて胸いっぱいでした。

どうして再び神戸で『ハッピーアワー』のキャストの皆さんと一緒に映画を撮ることになったのか教えていただけますか。


野原さん:まず、『ハッピーアワー』の時はスタッフとして濱口(竜介)さんと神戸に移り住んで、脚本を一緒に書き、ラインプロデューサーや助監督を担当しました。
その中で神戸のいろいろな場所にロケハンで一緒に行きましたし、多くの人とも触れあう中で、神戸は映画撮影に向いているなあと感じていたんです。

キャストについても、『ハッピーアワー』が終わってから自分の監督企画を考える中で、『ハッピーアワー』で得た体験や信頼関係は特別なものだったと改めて感じこの方たちといつか映画を作れたらという気持ちが芽生えてきました。

なので、今回に関して言えば、「川村さんに一緒に脚本を書きませんか」とお誘いして書いていく中で、誰が演じるかというのはとても重要なので、誰かを想定しながら書きたいとなった時に、自ずと知っている方で、そして『ハッピーアワー』の出演者であれば信頼できるとなりました。

それは、近くにいてお願いしやすいからということではなく、神戸に関しては魅力がある街だし、出演者も魅力的な方だしということが大前提としてありましたね

まっぴい:今、脚本は川村さんと、とおっしゃっていましたが、『ハッピーアワー』の時、川村さんは脚本の勉強をしたくて始めたということを伺いました。どうして今回、共同脚本という形になったのかも教えていただけますか。


野原さん:最初に僕の方から言いますと、『ハッピーアワー』の時に3人で書いてたんですが、やっぱり1人で書くよりも3人で書く方が映画に広がりが生まれると実際やってみて感じたので、自分が撮る時にも誰かと一緒に書きたい、そして男性だけで書くよりはできれば女性も一緒の方が良いと思っていたので、川村さんにお願いしたという流れでした。実際、川村さんはオファーされてどうでしたか。


川村さん:私は勉強しているだけの身だったので、いつか自分が書いたものが映像化される時が来たら良いなという淡い願いはあったんですが、それがこういった形で叶うとは夢にも思わなかったので本当にラッキーだなという気持ちですね。


脚本と、”演じる”ということ


まっぴい:脚本を書くにあたって苦労した部分はありますか。結構直前までできていなくて、といった話をお聞きしたのですが…。


野原さん:そうですね。もう少し正確に言うと、脚本はありましたが納得のいくところまでは届いていなかったため、直前まで書き直していました。そこは撮影と脚本執筆が並行することになり苦労しましたし、川村さんに関しては、最初は今よりも小さな役だったんです。
でも、途中でがらりと脚本が変わるタイミングがあって、それは映画のクオリティを保つため、映画を良くするためには何かを大きく変えなきゃいけないなって思うタイミングで、川村さんとも相談したうえで、脚本を変えて川村さんに主役をお願いするという形になりました。

そういうことがあって、川村さんは、出演もしながら、脚本も書くような状態になって、そこはすごい苦労されたと思います。
僕の方は、脚本を書きながら、ロケハンなどの準備も進めるということが増えたので、そういう苦労はあったと思います。



川村さん:撮影が途中で頓挫しかけたことがあって、2週間くらい撮ったところで配役なども含めて見直さざるを得なくなったんですが、そこまで撮った脚本っていうのがものすごく時間をかけて書いたものでした。
それをかなりの部分捨てなくてはいけない状況にはなったんですけども、自分の中には何年かかけて蓄積してきたテーマ、想いがあったので、配役も物語も多少変わりましたけど、描いている人間の本質は変わっていないと思います。

感想などを見ていると、あまりにも「直前で書き直した」ということを取材で繰り返し言っていると、付け焼き刃で書いたかのような印象を持たれることもあるようなんですが、
そうではなくて、積み上げてきたものがあって、最後こういう形で出たものではあると思ってます。


まっぴい:それは誰かを想って書いたからこそガラッと変えざるを得なかった、ということなんでしょうか。


野原さん:そういうこともありますし、ガラッと変えなきゃいけないっていうのは、脚本と演じる人とが上手くいってない部分を感じるということも理由の一つです。別に当て書きをしているわけではないんですけど、その人しか演じられないもの、逆にその人では演じるのがなかなか難しいもの

があって
実際にそれを現場で見てみて、これはこのまま進めてどこまで行けるだろうかと考えたときに大きく変える部分が生まれましたね。

これはなんとも上手く言い切れないんですけど、現場で見ていて、演技をするというのはある程度危険なことでもあると思うんです。その人自身を曝け出すわけではないですが、カメラにその人がありのまま写ってしまう。そして、それが不特定多数の人に半永久的に見られ続けるようなところが映画にはあるので、表に出すというのは慎重にやらなくちゃいけないと感じています。


「世界のどこかにこんな人がいるかも…と思ってみてほしい」

おく:主役の川村さんと同世代の30代40代あたりの所謂ミドルエイジと呼ばれる人たちが映される映画で、さらにお二人が住んでらっしゃる神戸の街の物語ということもあって、自然と自身の経験や考えていることが強く反映された作品なのかなと思ったのですが、脚本を書く上で、そしてそれを演じる上で、川村さんが春という人物に託したものや、逆にここが自分とは違うと思った箇所などはあるのか見ていて気になりました。


川村さん:自分の人生経験も入っています。どこまでが私のことですとは言いづらいですけど、友人で春と似たような境遇にある女性たちも知っています。こんなことないだろうってことが、案外世の中にはいっぱいありますね、自分を含めて。

春への寄り添い方については、そういったこともあって理解し難いということはないんですが、でもあんなに頑なに宗一朗に全てを明かさずにいられるだろうかとかは思いました。ただ、ある程度極端な方が今回自分にとっては演じやすいかもしれないというところは意識して脚本は書きました


野原さん:こういうキャラクターたちが自分と100%重なるかと言われると難しくて、この世界のどこかにはこういう人がいるんじゃないかくらいのことを思っていただけると、もう少し観客の方にとってもいいんじゃないかなと。それが他人を受け入れることにも繋がっていったら嬉しいです。

僕も20代でこれを観たら、こんな面倒くさい、大変なことになるなら結婚とか…みたいに思いそうな気もするんですけど、若い人が見て、分からないけどこういう世界もどこかにあるんだなと思ってくれたらそれは良いことではあると思います




②へと続く


映画『三度目の、正直』は、4月1日(金)まで元町映画館にて公開中、4月2日(土)よりシネ・ヌーヴォ、4月8日(金)より出町座にて公開です!
ぜひ劇場でご覧ください!!

公式HPはこちら↓

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