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バンクシー展よりー反資本主義、反消費社会を訴えるバンクシー

見出し画像:バンクシー「Sale Ends」(2006年)

バンクシーは、高度に発達した資本主義社会において、お金やモノに支配される社会を風刺する作品を数多く発表しています。
このような社会では人間も疎外され、モノとして扱われます。

そんな資本主義社会や消費社会にNO!を突きつけた作品を紹介します!
写真は以前日本で開かれたバンクシー展に行ったときに撮ったものです。

TESCO  Petrol  Bomb(2011年)

英国最大のスーパーチェーン(TESCO)が地元の反対を無視して開店した日、バンクシーの故郷のイギリスブリストルでは数十名の逮捕者が出る「暴動」が起きました。
この作品はその裁判費用に充てるためバンクシーが印刷し、一部5ポンドで販売されました。

Falling Shopper(2011年)

ハイブランドが並ぶ高級ショッピング街から少し入った、廃ビルの側面。
慣用句「Shop Till You Drop(ヘトヘトになるまで買い物しろ)」をモチーフにショッピングカートを押しながら落下する女性を描くことで、高度消費社会に警鐘を鳴らしています。

Napalm(2004年)

タイトルの「ナパーム」はベトナム戦争で米国が使用した大量破壊兵器。
この作品のもとになっているのは、ナパーム弾で火の梅となった村から逃げ出す少女を写した報道写真です。
その少女が左腕をドナルド・マクドナルドに、右腕をミッキーマウスにとられてバンクシーの作品に登場しています。
ミッキーとドナルドは米国のグローバリズムのアイコンで「ようこそ、夢の国へ」とばかりにベトナムの少女の腕をつかんで、貪欲な資本主義と大量消費の病んだ世界にひきずりこんでいく。
陽気なスマイルと少女の悲痛な表情とのコントラストが特に目を引きます。

Laugh Now(2002年)

「今は笑え、しかし、いつか我々が取って代わる。」という不気味な警句のボードを首から下げて立つ猿。
映画「猿の惑星」を連想させるが、それはフィクションではなく現実に起こりうるディストピアだとバンクシーは警鐘を鳴らしています。
肩から広告を下げてストリートに立つ人は、サンドイッチマンと呼ばれます。
パーソナリティを消して人間看板と化した姿は、機械労働によって疎外された近代人の極致です。産業革命の発祥地である英国でこのジョークは特に強烈なインパクトがあります。

Dismaland(2015年)

2015年8月21日から9月27日までの期間限定で、イギリス南西部の街ウェストン・スーパー・メアの屋外プール施設の跡地に、美術展と遊園地を重ね合わせたプロジェクトをバンクシーはプロデュースしました。それが「Dismaland(ディズマランド)」です。
資本主義の象徴「ディズニーランド」をもじったもので、「ディズマランド・ビミューズメント(困惑)・パーク」は「アミューズメント・パーク」を思い切り皮肉ったものです。
ディズマランドという名称は、ディズニーランドと“悲しい、陰鬱な”という意味のdismalを組み合わせた言葉遊びです。

観客は料金を払って入場し、有名なアーティストの美術作品が随所にある園内を移動し、さまざまな展示物やアトラクションを見ることができます。

そのコンセプトは巨大な資本主義社会に対するブラックユーモアを交えた批判でした。
一般的なテーマパークでは、社会にある現実の問題から目を背け、笑顔と夢に満ちた体験を提供しますが、「ディズマランド」は真逆です。
無気力なスタッフは微笑みもせず態度も悪い。
あくまで、社会にある現実の問題を来場者の眼前に突きつける「悪夢の遊園地」なのです。
しかし、それは決して重すぎず、ジョークが効いていて、エンターテイメントであり啓蒙的であり教育的なものでした。


バンクシーの作品で伝えるメッセージは、資本主義、消費社会、私が当たり前だと思ってたことに向き合わせ、立ち止まらせてくれます。
資本主義によって得たものよりも、失くしたもの、傷ついたものの方が多いのかもしれません。


<参考文献>


執筆者、ゆこりん

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