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18 正解より問題は何かを考えよう

 前回は解決策にすぐに飛びつくよりもまず知る事と書きました。他人が提示する人生への回答は誰にも適用できる概要であり、実際の問題への回答にはならないからで、それよりも問題の構造を知っておく方が助けになるからです。その中で私やあなたの問題は個別に発生するのです。

 今回は問題と答の関係について考えます。まずはわかりやすくする為に仕事でよくある例をあげてみます。

 工場で製品に不具合が発生したとします。それに対処する為に会議が開かれました。(会議の様子はかなり端折っています) 会議には関連部署の多くの担当者が主席します。最初は品質管理の担当です。
(品)「皆さん、まずは原因の究明をしましょう。原因は何か教えてください」
生産の担当が言います。
(生)「機械です。機械の調子が1週間前から悪くなったのです」
(品)「メンテナンス担当、機械が壊れたのですね?」
メンテナンス担当が言います。
(メ)「はい、確認したところベアリングが破損していました」
(品)「では、ベアリングを交換すれば良いのですね?」
(メ)「はいそうです」
(品)「わかりました。簡単な事ですね。では会議は終わります」

 ありがちな会議の内容です。機械が壊れたのが原因ですから機械に問題があります。では、機械を直しましょうという内容です。多くの場合会議はここで終わり、機械の修理が行われて生産は元に戻ります。ここで注目していただきたいのは、生産担当が「機械の調子が悪かった」と言ったのを受けて、品質管理担当が「機械が悪かった」と機械に注目しメンテナンス担当に意見を求めたところです。品質管理担当は「機械の調子が・・・」と聞いた途端に頭の中に「答」を持ってしまいました。「問題と答は同時に出る」の法則は前の記事を参照してみてください。

 ですが、この会議の進行は正しかったと言えるでしょうか? はい、もし本当の工場だったら落第です。残念でした。理由は皆さんが想像されるとおりで、答でなくて問題の設定が間違えているからです。この中には隠れた(いえ、実際には全然隠れてはいませんが) 問題がたくさん含まれています。

  • 1週間前からわかっていたのになぜ放って置かれたのか

  • 定期点検は行われていなかったのか

  • 始業点検は行われていたのか

  • この種のトラブルは初めてなのか

  • そもそもベアリングは壊れる物ではないのに何故破損したか

  • ベアリングの仕様は規定の物だったか

  • ベアリングを以前に装着した記録は残してあるか

  • 誰が管理しているのか

 ちょっと考えただけでもいろいろ思いつきます。まだまだあるでしょう。それぞれの問題にそれぞれの答があるはずです。つまり、問題の設定によって答は変わりますし、問題が複数という場合もあります。

 では応用編として、工場から外に出て私たちの身近な問題に置き換えて考えてみましょう。

 50代の女性がこんな悩みを持っていました。「20代の息子が家からお金を持っていってしまうのです。先生、どうしたら良いでしょう?」さて、この先生は誰でしょうか?

ケース1
「お母さん、それはね、あなたの前世が良くなかったのです。この問題を解決するにはこの霊験あらたかな壺を床間に飾りなさい。100万円です」
ケース2
 「お母さん、息子さんはきっと神経を病んでいるのでしょう。一度診察に連れて来ると良い」
ケース3
 「お母さん、今の政権は増税増税でちっとも国民の事を考えていません。次は我が党に投票してください」
ケース4
 「お母さん、お金はね、大切なものだからタンスなんかに隠しといちゃいけません。どうです、この金庫。お母さんの指紋でしか開かないようにできるんです」

 笑ってしまいますが、わかりやすいですね。つまり、一つの事でも何を問題と考えるかによって正解は変わるという事です。このお母さん、最初に息子の事が問題だと考えた時点で、心の中に正解を用意しているのです。ですが、本人は気付いていません。無意識にある先生のところへ行ってしまいます。先生たちは自分の答えたい回答がありますのでそれを回答するわけです。

 そうしたわけで、正解を考えてしまう癖を意識的に停止して、まずは問題が何かを考えてみるべきです。正解の方は実際には問題を考えるよりも100倍楽なのです。なぜなら、その正解がダメなら再度チャレンジすれば良いだけですから。

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