ジュニアサッカー育成について

「それぞれの年代で目指すこと、やっておくべきことは異なる」

サッカーの育成において、長期的な育成の過程の中でそれぞれの年代で目指す・やっておくことは異なります。大人でやることをそのまま縮小すれば良いというものではありません。小さな勝利や成功を唯一の価値と考えるのではなく、子供たちが大人になった完成形の時に最高のパフォーマンスに至るよう、下から順番に積み重ねていかなければなりません。長期的プロセス、全体像の中の一部であることを意識しつつ、育成にあたる事が重要です。U12以下の年代では、様々な局面を技術と判断で打開できる「クリエイティブでたくましい選手」の育成のため、サッカー選手のベースである「技術」「ボールを自分の意のままに扱えるスキル」を確実に習得させて、ジュニアユース年代につなげていかなければなりません。

「基本技術がしっかり確実にできる事」

ひとつひとつのプレーの精度に対する日頃の意識の差が、世界との差になっていると考えられます。世界はフリーでプレーすれば10回に9回は成功するレベルにあります。だからこそ、プレッシャーの中でも精度が落ちずにプレーできるのです。又、正確に止める・パスができる・運べる、そういった確かな自信と裏付けがあるからこそ、ボールから目を離せる時間が長くなり、日本人が3m、2mの相手との間合いで感じるプレッシャーをプレッシャーに感じずにプレーすることが可能なのです。この事から、止める・蹴る・運ぶといった基本技術のトレーニングを再認識し、プレッシャーのない中では妥協せずに100%の精度を要求したトレーニングをさせることが、特に育成年代では必要です。

「トレーニングの考え方」

低学年(1〜3年)ではクローズドスキル(*1)、ドリルトレーニングの重要性を再認識することが必要です。「単純でリアリティがない」「飽きてしまう」などの理由から、基本的なドリルトレーニングを軽視する傾向があります。同じ状況で反復練習する事が出来る為、自分にとって理にかなった正しいフォームを身につける有効なトレーニングです。単純なドリルトレーニングが、退屈で低レベルなトレーニングではありません。コーチの積極的でポジティブな働きかけにより、飽きることなく高いモチベーションで取り組むことが可能です。

思い通りに正確にプレーできたら、これほど楽しいことはありません。楽しいサッカーとは自分の思うようにプレー出来ることです。状況を把握した中でボールを扱い、正確にプレー出来ることです。そして、自分に要求された役割を確実に行うことです。正確にプレー出来る基本が身について初めて個性が生きるのであって、基本のないところに個性は存在しません。

日本人の特徴のある動作の敏捷性を生かし、組織的なプレースタイルを確立するためにも、精度の高いプレーを選手に要求していく指導者の姿勢が、今もとめられていると思われます。組織は「個」で支えられています。優れた「個」の存在が組織を機能させ、システムを機能させるのです。

中・高学年(4〜6年)ではオープンスキル(*2)のトレーニングやゲームの中では「トライ&エラー」を心がけましょう。ミスを恐れずに積極的にトライさせる、その為に指導者が結果ではなく過程を重視することが重要です。失敗を恐れるあまり、トライしなくなっては、失敗はしないかもしれませんが、成功も成長もしません。

ただ誤解してはいけないのは、怒ってはいけないということではありません。気の抜けたプレー、オフ・ザ・ピッチでのいい加減な行動・言動など、そおような時は本気で起こり、なぜコーチが怒っているか真剣に伝えなくてはなりません。指導者は常に本気でなければいけません。

(*1)クローズドスキル = 実践とは異なり単純なシチュエーションで発揮させるスキル

(*2)オープンスキル = 実践のように相手の存在も含めて状況が変化する中で判断しながら発揮するスキル

「コーチの心構えと留意点」

この年代のトレーニングは「シンプル」に、それ以上に子供との接し方も考えなくてはいけません。練習中にコーチが話す時間・でもが長かったりすると、子供は目を向けているようでも、実は話を聞いていない場合がよく有ります。せっかく貴重な時間を費やしたにもかかわらず何も伝わらなければ意味がありません。したがって、子どもたちに大切な話をする時は、シンプルかつ明確にまとめる必要が有ります。コーチは事前に話のポイントを整理する必要があります。説明が足りない・長すぎてまとまりのない指導者は、コミュニケーションスキルが欠けていると思われます。

チームを指導するということは当然集団をまとめることになりますが、そのポイントとして子供達と信頼関係を構築する為に避けなければならないことがあります。

■過剰な管理

■情報を詰め込む

■執拗な説教

の3つは代表的なものです。


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