見出し画像

【#98】長野県議会議員選挙 東御市選挙区レポート(2023 4.9)

 東御(とうみ)市は人口3万人弱で県内に19ある市の中で下から3番目の小さな市ですが、それでも周辺自治体と合わせない、東御市単体でひとつの選挙区となっており、あまり注目されない選挙区なのが正直なトコロ。
 だがしかし、この選挙は非常に「学び」の多い選挙となりました。 是非是非、皆様にも読んでいただきたいレポートです。

 なお、この記事を含めた「長野県議選レポート」12本を1本あたり県議選の基本価格¥200で購入できるマガジンを販売していますので、是非ご購入を検討いただきたく存じます。




◆概要

  • 東御市のみでひとつの選挙区となっている

  • 有権者数:24,315人

  • 衆議院は長野3区に属し、


◆立候補者(定数1/3名)

佐藤 千枝  (67) 無所属 新 元東御市議
石和 大   (58) 自民  現 4期目を目指す(自) 公明推薦
藻谷 ゆかり (59) 無所属 新 経営エッセイスト

※末尾に所属会派を記入
(自):自民党県議団
(共):共産党県議団
(改み):改革・創造みらい(立憲社民系)
(県公):県民クラブ・公明(公明系)

 4期目を目指す現職に新人2名が挑む構図です。


◆前回(2019年)の選挙結果

無投票

 前回は無投票で石和候補が3選。 更に前々回(2015年)も無投票のため、東御市で県議選が行われるのは12年ぶりとなります。

 一見すると選挙が行われないので “無風” な選挙区に見えるコトでしょう。 確かにそうかもしれませんが、前回からの4年間の間に大きな変化が起きていました。 そう、選挙で民意を問う前に


◆POINT 立憲系 → 自民系への、華麗なる?転身(2019Ver.)

 ひとつ前に出した県議選レポート「安曇野市選挙区レポート」にて、立憲系会派に所属していた寺沢功希氏が今回の選挙より自民系候補として立候補したというコトをお伝えしましたが、実はその “先達” にあたるのが、石和候補です。

(民主系会派「信州・新風・みらい」 2017年頃に更新されたHPより引用)

 このように石和氏は非自民の会派に所属(赤枠)し、しかも「幹事長」でした。 ちなみに安曇野市の寺沢氏も所属していた(橙枠)コトがお分かりいただけるかと。
 そこまで重要な地位を担いながら、2019年に無投票で当選後、自民系会派に転身したのです。

7月の参院選で自民候補の小松氏を応援(石和氏のTwitter-X より引用)

 少なくとも安曇野市の寺沢氏は(明確に示さなかったまでも)自公推薦候補として立候補し選挙にて当選したため、市民の民意を得た形にはなっていますが、この時の石和氏は無投票で当選後に会派替えをするという、市民の信任もへったくれもない荒業をやってくれました。

8/19追記
 更に石和候補は、共産党長野委員会調べで統一教会関連の行事に「賛同」したコトが明らかになりました。 これに対して石和候補は特に反応していないようです。

 さぁ、12年ぶりの選挙戦となった今回、アレもコレもひっくるめて、有権者はどのような判断を下すのか。 定数は僅かひとつ。 是か非か、明確に審判が下る選挙です。

 それでは、各候補者の様子を見てみましょう。
 まずは、“第三の候補” を御紹介します。


◆藻谷 ゆかり(もたに ゆかり)候補

 藻谷候補は横浜市出身。 東京大学卒業後、金融会社に入社。 1991年にハーバードビジネススクールでMBA過程修了し、外資系メーカー勤務から1997年にインド紅茶の輸入通販会社を千葉県で起業します。
 2002年に家族で東御市に移住し昭和女子大学の客員教授を経て2018年から「経営エッセイスト」として活動開始。 地方経済の活性化や地方移住促進を出版や講演を通して伝えています。
 今回、自らのビジョンを実践しようと県議選に立候補。 「あるをつくす」を政治信条に初当選を目指します。

 このように著書も多数ある藻谷候補。 ちなみに結婚相手の方は国際エコノミストの藻谷俊介氏で、義弟は地域エコノミストの藻谷浩介氏。

 著書も多数あるようです。

 さて、先程書いた「あるをつくす」という言葉は、長野県の宴会の終わりころに使われる言葉で「目の前の料理は残さずに、キレイに食べ切って締めましょうね!」という意味が有ります。 私も前職の忘年会とかに(イヤイヤながら)参加したら幹事さんが言っていた覚えが有ります。
 フードロスを減らすイイ言葉だとは思いますが、それを藻谷候補は「SDGsに通じる」として政治信条として掲げたようです。 宴会以外にこの言葉を用いるのは伝わりづらい気もしますが・・・

 藻谷候補の選挙事務所は市中心部にある自身の個人事務所を使っていました。 伺って藻谷候補のスケジュールをいただいたのですが、この日は東信地区全て(東御市・佐久市北佐久郡・上田市小県郡)の取材を一日で済まさねばならぬ荒々しい日でして、教えていただいた時間全て他候補と被っており、藻谷候補に立候補の理由を直接お聞きしたいところでしたが、正直言って当選の可能性は低いのが明らかだったため後回しになり、結果お会いできませんした。 申し訳御座いません。 ただ、

 東御市長から為書きが贈られていたのが気になるトコロで、もしかしたら結構票を獲るかとも思いましたが、結果は得票率15%で最下位でした。

(クリックやタップで拡大してご覧ください)

 選挙公報はコチラ。 現在は再び経営エッセイストとして全国メディア出演や県内の講演活動に励んでいるようです。
 これだけのバイタリティがあり身内にも知名度の高い方がいるのであれば、ひとつの自治体にこだわらず全国を舞台に活動した方が良いのでは、と私は考えます。
 とかく最近は「政治家」「センセイ」という肩書きを欲する方が増えてきていますが、それが必要な人と不要な人(それと政治家にしてはいけない人)、そしてその肩書きが逆に “足かせ” になってしまう人がいるので、そこを見誤らないでいただければと、願います。

 それでは、事実上の一騎打ちとなった両候補の模様は、有料部分で。
 「会派替え」という決断が正しかったのか否かを是非見届けていただきたく存じます。


 

ここから先は

3,779字 / 15画像
この記事のみ ¥ 290

もし宜しければサポートをいただけると大変嬉しいです! いただいたサポートは今後の取材費として使わせていただきます。