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【レポート #45】群馬県・安中市長選挙レポート(2022 4.17)

 群馬県初の取材は安中市の市長選挙。 首長選でこんなにも対照的な一騎打ちは久しぶりに見た気がします。
 “平成の大合併” で誕生した自治体が抱える問題として「新庁舎建設」というものがあり、安中市も例に漏れずそれで争っていたのですが、ちょっと今までとは中身が違いました。
 群馬県初の女性市長として2期8年務めた現職に対して、県議を6期も務め、今回満を持して市長選に出て来た新人との選挙を、レポートします。


◆概要

安中市役所
  • 面積:276.31㎢(群馬県第8/35位) 群馬県南西部に位置し、高崎市、富岡市、甘楽郡下仁田町、長野県軽井沢町と接する

  • 人口:55,767人 ※2022年3月31日現在(群馬県第9/35位) 2006年に旧安中市と碓井郡松井田町が合併し、新・安中市となる。 合併時の人口は64,842人で、そこから約14%減少している

  • 中心市街地付近は関東平野末端の低地であるが、西側は山間地になっている。 特に西端にある長野県との県境、碓氷峠は古来より交通の難所として知られている

  • 市の東部に東邦亜鉛安中製錬所、西部に信越化学工業磯部事業所があり、この二大企業に市は依存する形になっている

(安中駅隣の斜面にへばりつくように建つ、東邦亜鉛安中製錬所)
  • 碓氷峠といえば、鉄道ファンにはお馴染みの「峠の釜めし」と、頭文字Dの聖地「めがね橋」が有名

  • 市内の磯部温泉は温泉マーク()発祥の地として知られる

  • 衆議院選挙区は群馬5区に属し、小渕優子氏を選出。


◆立候補者

(安中駅前にて)

茂木 英子 (62) 現 3期目を目指す
岩井 均  (58) 新 元県議会議員
 

 茂木候補は旧安中市出身。 富岡東高校卒業後、保険会社に入社。 1989年に地域づくり団体を創立し1995年、安中市議補選に立候補し初当選。 以降、市議を4期務め2007年県議会議員選挙(安中市選挙区)に出馬し当選。 2期目途中で辞職し2014年、安中市長選に立候補し現職を破り初当選。 群馬県初の女性市長となりました。 今回「つながろう!安中」をスローガンに掲げ3期目を狙います。

 岩井候補は旧松井田町出身で筑波大学卒。 “大勲位” 中曽根康弘元首相の秘書を10年間、県議会議員を6期務めている大ベテラン議員です。 「国や県との豊富なネットワークを活かす」というキャッチコピーの通り、今回自民党や公明党の全面的なバックアップを受け、満を持しての市長選出馬となります。


◆POINT

①“保守王国” 群馬で異彩を放つ茂木市長

 茂木市長は完全なるリベラル市長。 群馬県といえば、中曽根康弘福田赳夫福田康夫小渕恵三といった総理大臣を輩出した全国トップクラスの「保守王国」「自民党大国」であり、そんな中で茂木氏のような(野党系、ではないものの)リベラル的な人物が首長になるというのはそれ自体が奇跡のように見えます。 ただ、安中市という自治体は、“ばらまき” “箱モノ” 行政を嫌うキッカケとなった前代未聞の事件が過去に有りました。

 安中市土地開発公社の職員が1987年から1995年にかけて、群馬銀行から約48億円もの大金をだまし取っていた安中市土地開発公社巨額詐欺事件という大事件があり当時の市長が責任を取り辞任。 逮捕されて懲役14年の実刑が下った犯人は既に大金を使い込んでおり返済能力は無く、結果安中市が群馬銀行に対し約24億円100年かけて支払うコトで和解が成立。 よって現在も安中市は毎年2000万円群馬銀行に支払い続けています。 この事件の影響が強く残っているため安中市は「改革」的なものを他自治体より受ける土壌が有るようで、そんな中で当選し2期8年も務めたのが、茂木市長なのです。

②市役所新庁舎建設問題

 そんな茂木市長が昨年基本構想を発表したのが、市役所新庁舎の建設です。

安中市の資料より引用)

 冒頭に貼った市役所は2001年に建設されたものですが、写真の左端にチラリと映っている色の違う建物が旧庁舎。 こちらは1959年に完成し60年以上経過した古い建物なので耐震性に問題があり、また庁舎を集中させて利便性の向上を図ったり防災センターや避難先となる防災広場を併設するコトで非常時に備えるという目的で、近くの旧安中高校跡地に新庁舎を建設するというものです。
 ただ、リベラル色が強い現職が、必要性が有るとはいえ高額な「箱モノ」を打ち出してきたのは違和感を感じます。 財源には地域振興基金合併特例事業債や緊急防災・減災事業債の活用を検討するとしていますが、市長選で相対する岩井候補はこの計画に異を唱え計画を「精査する」と訴えています。
 ここで気になるのが、ゴリゴリの自民党系である岩井候補が市役所新庁舎建設に異を唱えているという光景。

 同日に投開票があった愛知県あま市長選挙では、3期12年務めた自民党系の現職(当選)が新庁舎建設を強力に推し進めていて「『合併推進債』で費用の50%を市が負担してくれる」と繰り返し訴えていました。 同じ自民党系でも、ところ変われば訴えも変わるというのでしょうか。 見直しを訴える岩井候補も、そして新庁舎の必要性を訴える茂木候補にも、一筋縄ではいかぬ “キナ臭さ” を感じてしまうのです・・・

「2期8年の女性市長 vs 県議6期務めた自民系の大物」の対決は予想外の結果となりました。 岩井候補の公約の危うさに警鐘を鳴らすとともに、茂木候補の選挙事務所に有ったとんでもないモノについて、写真つきで晒します。 是非ご購読ください!

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