【#122】静岡県・藤枝市長選挙&市議会議員補欠選挙レポート(2024 5.26)
こんなコトが許されるのでしょうか。
“選挙出まくりマン” 小西彦治氏が、静岡県藤枝市長選挙(5月19日告示、26日投票)に出馬しました.。
彼が選挙に出まくるのはいつものコトですが、皆様ご存知でしょう。
今月12日告示の兵庫県相生市長選挙で立候補を届け出たものの受付締め切り直前に立候補を取り下げるという前代未聞の珍事を引き起こした衝撃が残る中、翌週にしゃあしゃあと堂々と藤枝市長選に乗り込んできたのです。
当初は取材する予定では有りませんでしたが、この異例の選挙はどうしても見ておきたいと思い急遽現地取材。 合わせて取材した市議補選も加えたレポートです。 有料記事となっていますが小西氏に関する内容は無料で読めますので、是非チェックいただきたく存じます。
この「事実」を忘れないために
▼藤枝(ふじえだ)市・概要
面積:194.06㎢(静岡県 第10位 / 35市町)※静岡県に「村」は無い
人口:140,365人(第6位)※2024年3月末現在
人口密度:723.30人/㎢(第10位)※2024年3月末現在
平均年齢:48.31歳(第14位)※2020年10月1日現在
衆議院は静岡2区に属し、井林辰憲(自民 4期)を選出
▼藤枝市長選挙
◆立候補者
5期目を目指す現職は2期目以降連続で無投票当選。 よって、
が立候補する選挙を決める条件だと公言している小西氏にとっては格好の “獲物” となります。
ただ、今回は今までと明らかに違うコトがひとつ有るのですが、それが何なのかなどを御説明いたします。
◆POINT
①久しぶりに「人口10万超え」自治体に出馬した小西氏
小西氏が立候補する選挙を決める条件を先程3つ挙げましたが、実はもうひとつ有りまして、それが、
というもの。 過去の “首長選シリーズ” を振り返ると、
最初に出馬した三重県松阪市長選だけが7万以上の自治体(156,760人 ※2024年5月1日現在)で、それ以外は全て人口7万未満の自治体を狙って出馬していました。
ところが今回の舞台、藤枝市は人口140,365人(2024年3月末現在)。 実に16戦ぶりに人口7万超えの自治体で立候補したのです。
本人は「恩人から藤枝市長選への出馬をお願いされ、義理を果たすため決断した」と出馬理由を語っておりますが、その発言の真偽真意や内容についてはひとまず横に置いて、ココに出馬するメリットを考えてみましょう。
②“トリプル選挙” の藤枝市
藤枝市長選の投票日は同時に静岡県知事選と藤枝市議補選が行われます。
知事選は4期15年務めた川勝平太知事が差別的発言等で辞職したコトを受けて行われるもので、2期目以降圧倒的な強さを誇っていた知事が辞め、元浜松市長と元副知事の事実上一騎打ちとなっていました。
前回の知事選は結果こそ川勝前知事の圧勝でしたが自民が参院議員を辞した候補を出してきたので注目されていた選挙で、投票率が52.93%。 今回は上がりこそすれ投票率が前回を下回るコトは無いでしょう。
前述の通り市長選は16年ぶりなので参考になりませんが、2022年に行われた藤枝市議選の投票率44.15%と比較すると知事選と同時に行うコトで大幅に投票率が上がると思われます。
投票率が上がるというコトは当然ながら投票者数が増えるというコト。 その「母数」が増えれば小西氏へ票を入れる人が増えると考えるのが自然で、小西氏に一定数(例えが供託起因没収ラインの得票率10%以上とか)の票が見込めます。 これまで小西氏が「人口7万未満」の自治体に拘ったのは小西氏が行政運営したい自治体のイメージがその規模なのでしょうが、実際は大きい自治体だとポスター掲示場の数が増え(藤枝市は274か所)、運動員の少ない小西陣営(本人+運転手)では貼り切れないから、だと私は見ています。
“首長選シリーズ” で当初小西氏は選挙区内を選挙カーでもないフツーのクルマでポスターを貼ってまわり、全て貼り終えたら住まいの有る兵庫県に戻り二度と選挙区には入らないという “超手抜き省エネ選挙” をしていましたが、今年2月頃から選挙カーを持ち込みポスターを貼り終えても選挙区内に留まり選挙運動を続けるようになりました。 選挙期間中ずっと選挙区にいるのなら市内を選挙カーでまわりながら貼り続ければ良い、という結論に至ったとしても不思議では有りません。
この選挙は小西氏にとって新たなステップで “首長選シリーズ” の「第3章」が始まったのかもしれなくて、
もしこの選挙で一定の結果(例えが供託起因没収ラインの得票率10%以上とか)が出れば小西氏の “選択肢” は大幅に広がると考えられるコトから、私は注目しているのです。
◆小西氏の選挙ポスターをチェックする
毎度お馴染みのデザイン。 もうツッコミ入れるのも飽きてきましたが、いつもの使いまわし。 「市民」というワードと「退職金約2000万円」と書かれている「市長選Ver.」です(町村長選は「退職金約1500万円」と記入)。
ただひとつだけ変わっていたのが、
QRコード。 「選挙チラシ(マンガ) 選挙公約」と有りますが、これ自体は4月の埼玉県伊奈町長選から付け始めたものです。 ただ、
ご覧のように伊奈町長選ではQRコードがシールで上貼りされていました。 それは前週の「幻」となった兵庫県相生市長選も同じでありまして、
QRコード部分を上から貼っているのが分かります。 しかし今回はQRコードをポスターに加えたデザインでプリントしたものを使用。 というコトは、今後の選挙(←出る仮定で話を進めるのも変ですが、どーせ出るでしょう)でも使用に耐えうる “汎用性の高い内容” が書かれているというコトになります。
その中身については、次の項目で。
◆小西氏の選挙公報をチェックする
選挙公報は自治体毎に様式が異なるため選挙毎に作成しています。 が、内容についてはこれまでの選挙と重なる部分が多々有ります。 それを「ブレない政策」と言えばそうなのでしょうが、ドコにでも当てはまるようなフワっとしたコトしか書いていないとも言えます。
コチラは(幻の相生市長選を挟んで)直近の選挙となる埼玉県伊奈町長選の選挙公報です。 コチラと比べると「お約束」の数が12→10に減っています。 更に精査した結果、だというコトにしておきましょう。 ただ、2つの公報を比較すると、
と、ほぼほぼコピペです。 例えば「藤枝市③:大型公園の整備」については一体どこの公園を指しているのか分かりませんし、「藤枝市⑥:福祉」については「全般的に、とことん寄り添う」という何も言っていないに等しいほどボンヤリした内容です。
また、藤枝市公報の左側に書かれている「首長(市長)の長期政権は・・・」については伊奈町公報の⑩とほぼ同じです。 ただ伊奈町で「70歳を超え任期で」としていた部分が今回は「3期12年で」という表現に変わっています。
コチラの記事で「70歳を超えたら」という記述に対し私は、
と指摘したのですが、それを受けて記述を変更した、と考えるのは私の思い上がりですねきっと。
そして「藤枝市⑤:市立中学校選択制の導入」は1月に行われた長野県須坂市長選の⑥に同内容が記載されていました。
コピペでは有りますが、かつて掲げた公約を再度持ってきたトコロは、自治体の規模や状況に応じて取捨選択をしていると言えるのかもしれません。 だとしても、藤枝市には「藤枝MYFC」とう地元が誇るサッカーJ2チームが有るのだから、それぐらい触れてもイイんじゃない??
ちなみに、QRコードについては読み取るとGoogle Driveのリンクが表示され、読み取ると選挙チラシが表示されます。 伊奈町長選では何故か「自分のGoogleアカウント名」が表示され「ファイルのオーナーにアクセス権をリクエストしますか?」と聞かれる、まさかの「許可制」だったのですが今回は許可は必要なく、リンクを押せばちゃんと作りこまれたチラシを見るコトができ、更に詳しい公約とマンガで「1票の価値」を示したものが見られます。 しっかり作り上げたマンガでしたが、今の時代AIを使えばそれなりの絵が出来上がるので、恐らくそうやって作ったものと思われます。
なお、アクセスの安全性を私が保証したワケではないため、各自「自己責任」で判断して下さい。 許可制ではなかったので私は問題ないと判断しましたが、一応 “捨て垢” でアクセスしました。
◆選挙費用の公営負担を算出してみる
得票率が10%を超えれば供託金(市長選は100万円)が返還され、更に選挙運動にかかった費用を自治体が負担する「公営負担」(公費負担)が発生します。 では今回、得票率が10%を超えた候補者に対し支払われる公営負担がいくらになるか、
市HPに載っているコチラの条例から算出してみましょう。
①選挙カー及び燃料代と運転手
選挙カーは自ら準備する方法とレンタカーやタクシー等をレンタルする方法の2タイプに分かれますが、小西氏はニュース映像を見ると選挙カーを準備し持ち込んでいました。 過去の例を見る限り運転手を1人用意していたので、その想定で計算すると、
が候補者に支払われます。
②選挙ポスター
最大でこの額が支払われます。 小西氏の場合、先程載せた3つのポスターを見ていただければ分かる通り、他選挙でも使いまわせる使える “汎用性の高いデザイン” となっているため、作成費用がそこまでかかるコトは無いと思いますが、計算上ではココまで請求できます。
と、いうワケで、①と②を合わせて候補者へ最大「718,699円」が公営負担、つまり市民の税金から支払われる想定が出来ます。 勿論、実際に市がいくら負担するかは小西陣営から出た請求(領収書)次第です。
なお、先述のチラシをWeb上だけでなく手渡しで有権者に配った際はそれも公営負担になりますが、チラシを配るには「証紙」を貼らなければならず、最小限の人数で選挙運動をしている(と思われる)小西陣営が貼れる数は少ないと想定されるため、計算していません。 御了承下さい。
③選挙ハガキ
伊那町長選に続いて「選挙ハガキ」が市内の各世帯に届いたという情報が入ってきました。 電子電話帳から住所を得たという方法も前回と同じです(ハガキにその旨を記載)。 普通は「選挙人名簿抄本」から正確に調べるのですが、如何せん小西氏は告示前に選挙区に来て準備するコトが殆ど無いため、電子電話帳を使うコトになるのでしょう。 先述の通り “首長選シリーズ” 開始時の「ポスター貼ったらサヨウナラ」状態だった頃と比べると格段に選挙戦略が練られてきました。
コレにより市民に「候補者」として認識される効果は有るのでしょうが、データが直近のデータではなく電子電話帳を用いた古めのデータなので、市民からは、
という声も挙がっているようです。 実際私も現物を見ましたが(掲載許可を取っていないので載せられない旨、御了承下さい)、いくら市長選候補といえど、ポストから誰だか知らないオッサンの顔がデカデカと載ったハガキが出てきたらキモチ悪いでしょうし、勝手に個人情報を入手されている! と怖くなりますよね。 果たしてこの戦略はプラスに働くのでしょうか。
◆「今はもう秋なのか問題」
小西氏は相生市長選立候補取り下げの理由を。
と説明しています。 藤枝市長選の出馬理由を「恩人から藤枝市長選への出馬をお願いされ、義理を果たすため決断した」と語っているので、「支援していただいている県外の人」と「恩人」は同一人物だと読み取れます。
だとするならば出馬取り下げ時に語った「今秋までに実施される」という言葉は「(告示日や投票日はまだ決まっていない)今秋までに・・・」と受け取るのが自然であり、それまでは選挙に出ないのだろうと捉えられた人が多いコトでしょう。
しかしながら小西氏は翌週にしれっと堂々と藤枝市長選に出てきた。 果たして「5月下旬」というのは「秋」なのでしょうか。 そして取り下げ時に藤枝市長選出馬が想定されていたのなら、翌週の選挙に対して何故「・・・までに実施される」という曖昧な表現を用いたのか。 私は大いに疑問を持っています。
「無投票は問題視すべき」と藤枝市長選出馬の取材で答えていますが、それは相生市長選も同じ。 何なら相生市長は、これまで5期連続無投票当選で6期目に挑戦するトコロでした。 程度の話で言えば相生市の方をより問題視すべきなハズです。 ニュースによると相生市民は24年ぶりに市長選が行われると楽しみにしていた市民もいたようで、その期待を小西氏は奪ったといって良いでしょう。
無投票が続く問題、コレの解決策として小西氏が全国の選挙に出るというのは如何なものかと思っていますが、一方で「無投票が問題」という意見は私も同じであり、(それを小西氏が担ってるのはどーかと思うが)選挙が行われて有権者が民意を示す場が出来たという事実については認めるトコロです。 それを相生市から奪い「相生市は藤枝市より優先順位が下だから」と言わんばかりに翌週の藤枝市長選に出るという姿勢は、私には理解できません。
もちろん小西氏も「支援者からのお願い」というコトで苦渋の選択だったのかもしれませんが、そうだとしても人口約2万7千人の相生市民より支援者を選んだという事実を、私はどうしても納得がいかないのです。
ただ小西氏は相生市長選をドタキャンしたコトが、ここまで全国的なニュースになると想定していたのでしょうか? この珍事が各メディアで報じられヤフトピにも載るコトで更に知名度が上がり、一般層には「選挙出まくりマン」としてよりも「選挙ドタキャンニキ」として名が知られてしまいました。 当然藤枝市民も一連の珍事を知っているでしょう。
そんな中で、果たしてどのような結果が出るのか、全く読めない選挙です。 注目しましょう。
※小西氏についての記事は以下のリンクにまとめてあります。 是非ご覧ください。
◆市長選・選挙結果
トリプル選挙の効果で、この構図にも関わらず投票率が5割を超え、結果は北村候補が5選を果たしました。
まぁそれは分かってたコトとして、小西氏の得票率は21.35%と2割超えという結果で、「供託金没収ライン」の得票率10%を基準にした勝敗は「12勝3敗1ドタキャン」となりました。
歴代3番目に高い得票率を獲得となり、やはり人口が多い自治体の方が票を獲りやすいという見立ては当たっていたように感じます。 人口10万前後の自治体で、且つ「多選」「高齢」「対抗馬ナシ」という選挙はそうそう当たるものでは無いでしょうが、もし見つかれば狙ってくるでしょうし、かといって町や村の選挙も引き続き対象内でしょうから、この選挙を以て小西氏にとって全ての首長選がターゲットになったといって良いでしょう。
さぁ、これから選挙が有るけど無投票になりそうな自治体及び住民の皆様、貴方の街に “選挙出まくりマン” がやってきますよ。 4年に一度の大切な選挙をこのようなしょーもない構図にしないために、対策を立てて下さいね。 有権者から意思を示す場を奪うというコトが無いように、しっかりと。
◆書き留めておかなければならないコト
またひとつ供託金没収ラインを超えて “勝ち星” を重ねた小西氏(まぁ落選なので負けは負けなのですが)。 ただ今回の選挙はこれまでの選挙とは別の意味合いを持つコトを忘れてはいけません。
それは、この選挙に出られたのは相生市長選を出馬取消したからだというコト。 つまり今回獲得した「13,345票」は、相生市を踏み台にして獲った票なのです。 コレは本人の意思に関係なく時系列で見れば揺るがしようのない「事実」です。 今後も選挙に出続けるのかは自由だし勝手ですが、二度と今回のようなコトが無いように! 強く反省していただきたいと願います。 小西氏も、小西氏に相生市長選の取り下げをお願いした「支援者」も、そして(「支援者と同一人物かどうか分かりませんが)藤枝市長選出馬をお願いした「恩人」も。
以上、小西氏についてのレポートでした。
取材に行ったため以降は有料とさせていただきます。 有料部分では市長選現職候補の話と、同日に行われた藤枝市議補選について書きますので、ここまでで充分お腹いっぱいかもしれませんが、宜しければ御購読ください。
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