キツネの置物
朝、咳をしました。
風邪をひいているわけではないのですが、喉に違和感を感じたのです。意識的にひとつ、咳をすると、口からカランと音を立てて何か床に転がりました。
拾い上げると、それはキラキラと輝くキツネの置物でした。透き通った白で、陶器のような、すりガラスのような不思議な素材でした。
しばらくキツネの置物を眺めたのですが、心当たりがありません。こんなものを飲み込んだっけか。
しばらくキツネのことは忘れていました。
ある日、家に古くからの友人を呼んで飲んでいると、友人が机上のキツネに気付きました。
「それ」
「あぁ、これかい。しばらく前に口から出てきたんだよ。不思議だろう」
友人はキツネをつまみしげしげと眺めました。
「お前、呪われてんじゃねぇの」
「はは、バカいえよ」
「バンビ無意識下にて流動モンスター」
「え?」
「ノートルダム的モジュールを左辺にミシシッピアカミミ噴射」
友人は、発狂しました。
静かな発狂でした。
私は急いで友人を病院で引きずっていくのですが、それが彼の言葉に阻まれて、いて。延々となんです。言葉が。
延々と呟かれる意味不明の言葉は、意味を成していません。無意味の意味がもちろん無いからです。マジです。マジ侍ですか。?ロッキン。
そこにある意味にスプレーを吹きかけるとしたら、きっと自慢の一品といえるのでしょうか。それとも、全力で登校するピアニストの口枷によるとでしょうね?
未来ポインティングの果てに起こるブランド品川と気球地獄で悩みは君とポンチョしてた。あ、涙とは桃ナチョス。嫌い君。ダリの回転ごあいさつ。仁王像ニッ!レレれ。ア、レレ。
ア、ア、ア。来た。
キツネの置物は、透き通った白で。
陶器のような、すりガラスのような不思議な素材で。
キツネの置物が、静かに。
発狂を、見る。
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