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【開講】SW概論A ①ルークのオイディプス葛藤

(※極力排除しましたが、文中には若干のネタバレが含まれます。そして愛が溢れた故に長文です。これでも短くしたので許してヒヤシンス。)




スター・ウォーズ(以下SWと略記)は私のバイブル(ただしep.7~9、おめぇはダメだ!)どうも、はやぶさでございます。

唐突ですが、SWをこよなく愛する私が『SW概論A』を開講いたします。今後続く(未定)の『SW概論B』以下、ないしは『SW特論』『SW演習』『SW研究』等の講義を履修する際の必修授業となっておりますので、履修の際にはお気を付けください。また、本講義の単位認定方法は各々がSWを視聴した上での小レポート、ないしは授業終わりの課題をコメント欄にて提出(記載)することとします。

ちなみにep.1~9まで視聴するとおそらく24時間程度はかかると思います。
また、はやぶさが今までに当たってきた補助文献は以下に一部記載しておきますので、時間のある方は参照してください。

・映画:『ローグ・ワン』『ハン・ソロ』など
・ドラマシリーズ:『マンダロリアン』『オビ・ワン』など
・アニメシリーズ:『クローンウォーズ』『反乱者たち』など
・ゲーム:『BATTLE FRONTⅠ・Ⅱ』『JEDI FALLEN ORDER』など
・小説:『ニュー・ジェダイ・オーダー』シリーズなど

一部抜粋

尚、本講義は、はやぶさの個人的偏見と偏愛、空想・妄想・大暴走等が多分に含まれますので、気になる方はきちんと原典を当たるように。
(ちなみに私はライトなオタクでしかない。それだけ銀河は遥か彼方まで広がっているのだということもお忘れなきよう。)

SWとは——制作の背景とシリーズの大枠

SWとは、天才ジョージルーカスが監督・脚本・制作総指揮を執った一大SF映画…であった。
なぜ過去形なのかというと、ep.4~6、ep.1~3まではルーカスお膝下のルーカスフィルムで制作されたが、それ以降の作品は版権をディズニーに売っ払ってしまったのである。
ちなみにep1~9を『SWサーガ(正史)』と呼び、その他作品は『アンソロジー・シリーズ』と呼ばれている。

また、当時はep.4~6(1977~1983)を先に公開していたが、後になってルーカスが「あれ、1~3じゃないのよね。実は全9作品なのよ」と語って大衆の度肝を抜いたのである。
その後ep.1~3(1999~2005)が製作されたという経緯があるため、こうした独特な表記になっている。一般に前者は『旧三部作』、後者は『新三部作』と呼称される。

「9部作って言ったけど、やっぱ6で打ち止めにするわ」と言い出したルーカスに、ファンは失望と期待を入り混じらせていた。そして2012年、上記したディズニーへの売却が行われる。その後制作されたep.7~9(2015~2019)は記憶に新しいものと思われるが、これは『続三部作』と呼ばれ、サーガはこれにて完結ということになっている。
また、上記したアンソロジーシリーズはディズニーに版権が移ってからの作品であり、こちらは今後も無限に作られていくものと思われ、現時点でも相当の作品がディズニープラスにて配信されているので、本講義をより深く履修されたい方はディズニープラスへの加入をお勧めしたい。

定義の話はまだまだ出来るが、とりあえず今回はこのあたりにする。
そして今回はサーガ処女作にあたるep.4『新たなる希望』を中心に、特に冒頭30分~60分に焦点を当てて解説を行いたい。

正確には解説というより、視聴の上での補助線になるような、はやぶさなりの解釈・理解を共有したいと考えている。


世界観について解説

これは新三部作にも言えることだが、6作品を通して我々が体験するのは「スカイウォーカー家による、宇宙を巻き込んだ大騒動」であるということを念頭に置いていただきたい。急にトンデモB級感が出てきたが、家族がテーマの映画と思えば邦画的なニュアンスも出てきて、妙な親近感を抱かないだろうか。しかし、実際そうなのである。

特に旧三部作ではそれが顕著で、言ってみれば『オイディプス王の悲劇』のような父子間葛藤が重層的に織りなされていると言っても良いだろう。
中でもep.4の冒頭は、スカイウォーカー一族の最初の登場人物ルークの個人内の心理的葛藤に焦点付けられている。

さて、宇宙でのすったもんだがあって脱出ポッドで命からがら逃げだしたR2-D2(背が低くて青いやつ。本来はアストロメクドロイドということで、宇宙船の操縦補助を目的として作られている)とC-3PO(慇懃な金ピカくん。通訳ドロイドで数万の言語に精通している)が不時着した後、その先でようやく登場する主人公ルーク・スカイウォーカーがオーウェンおじさんと話すシーンは視聴者を混乱させる。

「え?なんでいきなりおじさん呼びなん?」
「親子の食卓のシーンじゃないん?」

そう、何の説明もないが、オーウェンおじさんは養父であり、ルークとの直接の血縁はないのである。この辺の説明に薄いためSF要素でお腹いっぱいになった視聴者は早々に心が折れてしまう。それもそのはず、上記してきたように旧三部作第一話はサーガ上第四話なのである。話が分からなくて当然なのだ。

また世界設定についても話が薄いので補足しておく。
世界は銀河帝国がその栄華を極めて、圧政を敷いており、ごくわずかな人々が反乱軍として反旗を翻そうと希望を紡いでいるが、その灯は消えかかって絶望的、という世界観。
また、”銀河”なので、国ではなくて星々で構成されている。この世界の銀河はコルサントと呼ばれる首都惑星を中心に、インナーリム、ミッドリム、アウターリムと遠くなっていく。日本で言ったら首都東京を中心において同心円を描き、近い方からインナーリムと考えるとわかりやすいだろう。

宇宙船からの脱出ポッドでドロイドたちがが不時着する星、タトゥイーンはアウターリムの辺境の星。言わばド田舎である。また太陽が2つあるため気温が高く、砂漠が広がる不毛の土地である。日本で言ったら鳥取あたりかもしれない。
居住に適した星とは言えず、あまり人が寄り付かないため、犯罪者や賞金稼ぎなどのいわゆるゴロツキたちが身を寄せるにはぴったりの場所となっていて、都市部は相当に治安が悪い。ちなみに郊外部分はほとんど砂漠だが、野生動物がうようよしているだけでなく、サンドピープルと呼ばれる原住民が住んでいる。ルークも襲われているが、彼らはかなり野蛮で、人間を単に殺すだけでなく、弄んで嬲り殺すというかなり歪んだ倫理観を持っている。都市部も郊外も危険な星なのである。日本にこんな地域がないことを祈っている。(cf:鳥取?)

そんな危険な星でルークの養父にあたるオーウェンは代々農場を経営している。ちなみに農場の収穫物は水である。この辺りはSFらしい設定である。
そしてオーウェン一族はこの星においてはそこそこ成功した農家であるので、金銭的には困らず、それなりに裕福な暮らしも出来ているし、この治安の悪い星の中で平和に暮らしているのである。

そこで暮らすルーク君は自分が何となく里子だとわかっていて、でもそれなりに裕福で安全な暮らしをしている。しかし年頃ということもあるのか「僕は大学に行きたい」「なんでわかってくれないの!」「みんな他の星に行ってるのに!」と文句を述べるのが、先の食卓シーンである。
これも日本風に言うと、田舎ながらもそこそこの暮らしを築いた農家の一家が、治安の悪い中でも大切に養子を育ててきたのだが、その養子が「おらこんな村いやだ」「東京さ行きたいだ」「東京でベコ買うだ!」という話なのである。

しかして、ここからオイディプスは始まっているのである。

【ざっくり解説:オイディプス王の悲劇とは?】
ある王が子ども:オイディプスを授かるが、神の信託によって『その子は親を殺す』と予言があり、王はオイディプスを殺そうとする。母のイカオステは殺すことはできず、川に流すと隣国にたどり着いてすくすくと成長。ある日、本当の親を探すために旅に出る道中で男性と喧嘩し殺害。隣国にたどり着いて、未亡人となる人物と結ばれるが、その人物は自分の母イカオステであり、自分が殺害した男性こそ、自分の父親だったことを知る。失意に落ちたイカオステは自殺し、オイディプスは自ら盲となって放浪の旅に出る。

ということで、オーウェン夫妻は、脱出ポッドで逃げ出したドロイドを探していた、銀河帝国配下の軍隊、ストームトルーパーに抹殺される。
抹殺と書いたのは、以降のSWシリーズでは絶対に見られないレベルで徹底的にやられているのである。唐突に軽いグロが放り込まれている。
劇中、ストームトルーパーはほぼポンコツの象徴になっているが、確かに、本来の彼らは選抜されて訓練された超エリート軍人である。足跡を残さない隊列と突入、民間人にも慈悲のない徹底した軍人ならではの徹底した命令順守は、オーウェン夫妻の亡骸を見ればわかるだろう。
しかし、それを差し引いてもオーウェン夫妻の死に様は凄惨である。短いカットだが、その凄惨さはその前に殺されてしまったジャワ族(R2-D2とC-3POを捕まえて販売していた現地民)と比べても随分と生々しい。

ここからルーク青年の冒険譚が始まっていくわけであるが、ここで既にルークの心には2つの側面があると私は考えている。それがSWお馴染みのライトサイドとダークサイドである。

ルークの中のライト/ダークサイド

ライトサイドはわかりやすい。自分の育ての親を殺されてしまったわけだから、その復讐、仇討ちなのである。自身の良心や正義感に従って突き進めば良いのである。

一方で、彼の心にダークサイドも既になかっただろうか、と私は考えている。ちなみにみんな少し単純化しているが、ダークサイドはただ悪い心というものではない。それについてはマスター・ヨーダがこう言っている。

恐れはダークサイドに通じる。恐れは怒りに、怒りは憎しみに、憎しみは苦痛へ。

マスター・ヨーダ(ep.5)

ダークサイドは誰の心にもある。そしてそれは単純な怒りや憎しみだけではない。不安や恐れ、悲しみなどのネガティブな感情が連なり、あてどなく増幅し、堕ちていく先にあるのがダークサイドなのである。更にジェダイ(特殊な力、フォースを理解する人々。ep.4時点では滅亡。ロストテクノロジーとなっていて、SW世界の一般人は お伽話だと思っている)の教えを紐解いていくと、功名心や自尊心、驕り高ぶりも、ダークサイドの入口なのである。

ルーク君は育ての親の亡骸を見て何を思ったのだろうか。
一つは対象への恐れである。ストームトルーパーの冷徹さ、ひいては銀河帝国という巨悪への畏怖、立ち向かえば最後、オーウェン夫妻同様に自分も殺されるかもしれないという恐怖があるだろう。

そしてもう一つは自己への恐れではないだろうか。
そこには最後に喧嘩をして別れてしまった夫妻への申し訳なさや罪悪感もあるだろうが、更に深堀りすると、オーウェン夫妻の死は、ルーク自身の空想や怒りが具現化してしまった結果と捉えることも出来ないだろうか。
彼は心から怒っていた。この砂だらけで夢も希望もない環境にも、無理解なおじさんにも。そしておそらく、自分を養子に出し、こんな世界に放り込んだ実の親に対しても。

「こんなクソみたいなところに自分を縛りつけやがって」
「あんな親(養父)、死んでしまえばいいんだ」

そのやるせなく止めどない怒りの象徴が、あの夫婦のグロ死体である。しかもおそらく焼死であることも鑑みると、怒りの業火という言葉にあるように、ルークの内に秘めた怒りは計り知れない。
確かにルークは直接手を下してはいないが、空想が現実化したという意味では、プチオイディプス=親殺しに直面するのが、あの亡骸を発見するルークであり、その時点でルークは自分自身への恐れ、内なる怒り、破壊性への恐れがあったのではないだろうか。それはこの惑星タトゥイーンのように粗暴で、野蛮で、非常に危険なものであったのかもしれない。

恐れはダークサイドに通じる。恐れは怒りに、怒りは憎しみに、憎しみは苦痛へ。

ルーク(Luke)という名前は、ラテン語で『光をもたらす者』という意味があり、明るさの単位:ルクスの語源とも言われている。ep.4の副題『新たなる希望』における主人公名としてはまさに的確で、銀河帝国の闇に沈む世界に光明をもたらす希望であると言える。

しかし光あるところに影があるように、彼の名前からして既にライト/ダークサイドの内なる戦いは始まっていたのかもしれない。

こうしてルークにおけるオイディプス葛藤は、養父から実父へと引き継がれスカイウォーカー家の受難として話が続いていくのであります。この問題をルークはどう乗り越えるのか、自身の抱えるライト/ダークサイドの葛藤を通じて、オイディプスと同じ道を辿ってしまうのか、あるいは…という話へと続いていくわけであります。

さて、字数が5000を超えようかというところまで来たので今日の講義はここまでにしたいと思います。次の講義までにep.4の視聴をお勧めしておきますよ。
特にep.4の冒頭でスターデストロイヤーのトラクタービームに捕まってしまう反乱軍クルーザーの名前は次の小テストに出しますから、答えのわかった人はコメント欄に書き込んでおくように。

それでは皆さん、フォースとともにあらんことを。
May the force be with you.







【あとがき】
突然思いついて開講してみましたが、案の定、愛が溢れて止まりませんでした。まだまだパダワンはやぶさであります。続くかどうかはわかりませんが、また思いついたら唐突に開講します。
本当は今年の5月4日まで待ちたかったけど、我慢できませんでした。
いいですか、5/4はMay the 4th(force)なので、SWの日なのです。だから5/4までにはSW履修しようね。マスターはやぶさとの約束だよ。

ハッシュタグがシュールすぎて自分で笑った。


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