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塩分量と土用干し,保存方法における梅干しのうまみの考察

2013年に初めて梅をカビさせてしまい、原因を突き止めるべく研究した2014年の私の梅干し作りをまとめたレジュメがでてきたので、noteに書いてみました。文中の資料とは、レジュメの提出先にその時々に出来た梅を小さなタッパーに保存して、このレジュメを読みながら試食してもらったので、それを前提で書いております。これからの梅干し作りの参考になれば幸いです。

1.研究背景・目的

 2013年,8%の塩分で例年通り梅を漬けたところカビが生えてしまった.梅漬けは2001年より行っており,これまでは塩分を13~15%にして行っていた.10年間失敗はなく,居住地の気候的に塩分が8%でもカビが生える恐れはないと判断したが,梅酢はほぼあがらないという結果に終わった.
 2013年度の失敗から,梅干し作りにおける塩分量および熟成,干す期間,保存方法について研究を行った.

2.梅干し作りの材料について

 ネット通販で無農薬栽培の2Lサイズの南高梅を10Kg購入した.南高梅は梅干を作るために品種改良したという梅であり,今年は本研究のためブランド,大きさをそろえたものを用意した.塩は株式会社天塩の赤穂の天塩を使用した.また,梅のカビを防ぐために25度のホワイトリカーを使用した.

うめ         Fig1 完熟した南高梅10Kg

3.梅漬けについて

 今回は2種類の塩分量で梅を漬けるため,ジップロック袋漬けという方法を取った.[1]
 また,ジップロックに梅を入れる際,カビ防止のためにホワイトリカーにくぐらせて消毒してから袋に入れるようにした.ジップロックに平たく入るだけの梅を入れ重さを量り,10%と13%に分け塩をならすように入れた.また,本来なら梅の重さと同じ分量の重しをするのだが,今回は梅を潰したくないため,梅の半分の重さの重しをした.

うめ2            Fig2 袋詰めした梅

4.梅酢のあがりの進行度数について

 梅干作りにおいて欠かせないのが梅酢である.塩分により梅から抽出される梅酢が梅を覆うことでカビ防止になり,梅の味を調えていく.塩分が多ければ多いほど梅酢の上がりも早く,カビを防ぐことが出来,長期保存もできるのだが健康を考え今年は10%と13%で漬けた.
 2日たって梅の様子をみてみたところ,13%は少し梅酢があがってきた状態.10%はまったく梅酢が上がる気配がない.塩分3%の違いでここまで違うということを実感した.梅は冷暗所に置き,毎日塩と梅酢がなじむよう袋を揉むようにていねいに混ぜた.
 2週間後には10%,13%ともに梅酢があがりきった状態となったため,この状態で赤紫蘇を投入することとした.毎年,赤紫蘇を入れない白梅も作成していたのだが,赤紫蘇を入れる前の梅はしょっぱさ,酸っぱさよりもフルーティーさが勝る感じがした.これは南高梅という梅の特性と思われるのだが,昔ながらの梅干しを作りたいため今回は赤紫蘇を多くに投入し,比較対象としての白梅を1袋づつとした.

5.土用干しについて

塩分量と干し時間から,出来上がる梅を比べるために以下の条件で土用干しを行った.

SnapCrab_梅干しdocx [互換モード] - Word_2020-7-7_9-20-49_No-00           Table1 土用干しの気候条件

1日目干したものを見てみると,10%の梅は少し実が硬かったものが柔らかくなり,種から取れやすい状態になっていた.まさに土用干しの効果である.13%の梅はかなりしわしわになり小さくなった.すべての梅を梅酢に戻し冷暗所で一晩保管した.
 2日目は夕方から雨の予報だったので,干す時間が若干短くなってしまった.10%の梅は,実がまだ少し硬いものはあと1日干すこととし梅酢に戻した.10%の梅のうち2日干しで実が十分に柔らかくなったものを資料3とした.13%の梅はこの時点でかなり水分が飛んだ状態になり,これ以上干すと果肉のおいしさを損なうと判断し2日干で資料4として完了とすることした.

うめ3         Fig3 土用干し中の梅(二日目)

6.塩分量についての考察

同じように2日干した結果,しっかりとした梅を楽しむという点では10%の塩分量が南高梅とは相性がいいような気がした.ご飯のおかず,というよりは純粋に梅を楽しむ,という感じだ.ただ,ご飯のお友として考えるとやはり13%の梅の方がやはりなじみ深く,うまみも凝縮されている.

うめ4    Fig4 塩分量による梅漬け後のサイズ差(左:10%,右:13%)

Fig4を見てみると,同じサイズの梅で作ったにも関わらず左の塩分10%に比べて右の塩分13%は明らかに水分が抜けて小さくなっている.水分量とうまみの関係については今後の課題としたい.
 今回,塩分について厳密に量った結果,赤紫蘇の塩分に気が付いた.赤紫蘇を投入する際,塩で揉んであく抜きをするのだがその際どうしても塩分が付加される.実際に,同じ10%で漬けた梅を白梅と赤紫蘇に漬けたものとで比べてみると赤紫蘇を入れたものの方がしょっぱく感じた.
 土用干しをする際,梅酢も一緒に干すのだが少量ではあるが水分が飛んで塩分濃度があがりさらにしょっぱくなったと考えられる.塩分濃度という点では,赤紫蘇の塩分についても今後は考慮していきたいところである.

7.土用干しについての考察

今回は土用干しの効果をみるために2日天日に干した資料4と干していない資料5を用意した.二つは同じ条件で漬けた梅である.この2つを食べ比べて感じるのは,天日干しの重要性ではないだろうか.2日間干しただけで,うまみがぐんと増え,やさしいまろやかさが加わる.干していない梅は若さというか,漬物の域をでておらず物足りなさを感じる.
 梅干しのうまみ成分で気になるのが干した際,Fig5のようにうっすらと白くなる点である.梅酢が固体化しただけなのかもしれないが,これがうまみ成分としてどのような役割を果たしているのか,今後の研究の課題としたい.また,干すことによって果肉がやわらかくなり,種から果肉が取れやす
くなるというのも土用干しの効果として重要な点であるだろう.

うめ5       Fig5 うっすらと白くなった土用干し中の梅

8.結果

塩分量については好みの別れるところだが,10%でカビが生えずに梅酢が上がり,梅干しが作成できることが確認できた.
 土用干しは3日間とは限らないが,必ず行った方が良いということが確認できた.保存方法については実験をさらに進め資料2の状態の梅と,13%で漬けた梅20個を干さない状態で1年間梅酢に漬けて保存後干した梅,土用干しして乾いた状態で1年間保存した梅の3種類を食べ比べてみるという試みを来年行うこととした.

参考文献

[1]

[2]NHK きょうの料理 2014年6月号

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