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【読書日記】ひんやりした千早世界

「透明な夜の香り」

今読んでいるのは「透明な夜の香り」。

心にいろいろ抱えた主人公若宮一香はスーパーの掲示板で見つけた求人に応募する。雇い主は調香師の小川朔だった。


本書は全部で12章あり、5章まで読み終わっている。
主人公を雇っている小川朔は調香師の仕事をしているのだけれど、とにかく臭覚が超人的である。
生活に支障をきたすレベルなので、主人公が採用されたとき、ボディソープや洗髪関係、化粧水などに至るまで小川朔指定のものを使うことになる。

翻って主人公若宮一香は、特殊な能力ではないけれど、色を感じる力というか感性がある。
これは本編に何か影響をあたえている訳ではなく、作者の目線が入っているのかなとも思うけれど、読んでいて特徴のひとつとして感じることが出来た。
家族、特に兄弟のことでいろいろあるようで、それが終盤に向けてどのようになっていくか楽しみである。

千早茜作品

この作品の他に千早茜作品は過去に2冊読んでいる。
「魚神」と「西洋菓子店プティ・フール」の2冊。
「魚神」は遊郭の島が舞台の白亜とスケキヨ姉弟の物語。
「西洋菓子店プティ・フール」は、フランス菓子店で修業した亜樹が祖父がやっている昔ながらの洋菓子店「プティ・フール」で働く中での物語。

「透明な夜の香り」含めて、どの主人公も感情をストレートに出すタイプではない。それゆえ、白亜のスケキヨへの思いや亜樹の菓子への思いが際立っているのではないかと思う。
一香は少し病んでいる部分はあるが、朔の家のハウスキーパーとして淡々と家事や料理に打ち込む場面がくっきりと出ている。

3冊とも描かれている世界は違う。しかし、どの世界も土台にひんやりとしたものがあり、その上に「魚神」の神秘、「西洋菓子店プティ・フール」の甘い菓子、「透明な夜の香」の様々な香りや色の世界が豊かに描かれているのかなと感じた。

他の作品もまた更に読んでみたい。


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