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Age well Japan Day1 セッション報告|シニアDXの現状と今後の課題

9月30日〜10月1日の2日間にわたり開催したAge Well Japan 2022 Day1の各セッションについて、もっと詳しくお伝えして参ります。

本noteは、コロナ禍により「デジタル格差」が浮き彫りになっている社会を踏まえて、シニア向けサービスを展開されるスタートアップ企業の代表の皆様と日本のDXの現状や今後の展望について話し合った、パネルディスカッションセッションについてのレポートです。

左から日比谷さん(進行)、伊藤さん、三橋さん、梶原さん

シニア向けのデジタルサービス提供を考えている企業の皆様、オンラインとリアルの顧客接点における体験設計のポイントが気になる方は、特に必見です!

Age Well Japanの全貌について知りたい方はこちら↓

シニアDXに関する最先端の取り組みについて

 本セッションは、登壇者の皆様が現在取り組んでいる事業のご紹介や皆様が感じている課題の共有から始まりました。

日比谷尚武さん(進行)


プロフィール
「人と情報をつなぎ、社会を変える主役を増やす。」をテーマに、セクターを横断するコネクタ。広報、マーケティング、新規事業の支援、コミュニティ作り、官民連携促進を中心に活動。一般社団法人Public Meets Innovation理事・ Project30(渋谷をつなげる30人)エバンジェリスト・ 公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会 広報副委員長・Shibuya Startup Support PR担当特別アドバイザー・ロックバー主催、他。

伊藤光一さん


伊藤)一般社団法人『デジタル田園都市国家構想応援団』の代表をしております伊藤光一です。
 デジタル田園都市国家構想とは、岸田内閣の掲げる国家成長戦略の要であり、「誰も取り残さない」次の時代を作るために日本の地方創生をデジタルによって促進させていくものであります。実際、今までの政府の試みは民間に降りてこない、知っている人と知らない人の差が大きい等の問題がありました。デジ田が使われるべき人に使われるように、産学官民として正式発足したものが『デジタル田園都市国家構想応援団』です。
 本日は、政府がどのような形でシニア事業を推進しているかについてお話していきたいと思っております。

三橋克仁さん


三橋)株式会社ファミトラ代表取締役の三橋克仁です。テクノロジーの力で【笑って長生き】を実現、をミッションとして掲げ、Age-techの将来性を感じてこの領域に来ました。その中でも特に家族信託に着目して事業を行っています。
 認知症になると、当人に意思能力がないものとされる、不動産の売却ができなくなることがあります。子どもが介護料金を負担できず介護難民が生まれてしまうのです。その中でも、現在の成年後見人制度ではなく、高齢のご両親がお金や不動産、株、家族信託に管理する権利だけまかせられる、家族信託が当たり前な世の中を作りたいと考えています。

梶原健司さん


梶原)株式会社チカク代表取締役の梶原健司です。「距離も時間を越えて大切な人を近く・知覚できる人に」を掲げ、シニアにこそデジタルの恩恵を、シニアの人こそを第一に考えた開発の姿勢で事業に挑んでいます。
 具体的には「まごチャンネル」の開発・運営を行っています。家の形をした端末を用いて、ご高齢者宅のテレビにお孫さんの日常が写るチャンネルを設定できるサービスです。
 「まごチャンネル」は、端末にSIMを内蔵しているため,電源ケーブルとテレビさえあればそのまま使えます。テレビリモコンで操作できるため、誰でも操作をすることができ、100歳の方にもご使用頂いています。スマホ非保有者の方の満足度は100%と大変高いです。身体能力の衰えていく高齢者にとって一番なじみがあるテレビを用いたサービスであることがポイントの一つでもあります。さらに、自治体と連携したコンテンツ配信も行っています。今後はスマホやPCだと届かない,例えば遠隔診療、フィットネスなど、色々なサービスをベースにした協業ができたらと考えています。ご高齢者の方に、色々な恩恵を提供できればと感じています。

Age techをとりまく政策&社会背景

伊藤)現在、政府としてデジタル田園都市国家構想の交付金の金額規模が過去最高額となっており、特にシニア領域に対する交付金は大きくとられています。交付金は色々なジャンルがあるため、どこに自分の思っているビジネスがカテゴライズされるのかを意識する必要があります。交付金の主体は自治体になるので,企業の方々は自治体にアプローチをしていただく必要があるのです。そこで課題になってくるのが、地方の役人の方々もデジタルディバイドの一人である場合があり,いきなり企業の方々からハイテクノロジーなことを言われて,どうしたらいいのだろうか・・と思うことが起きてしまうのです。そのため、企業の皆様は自治体の方と接するとき、利益のためでなく「本当にその地域の課題を解決するものでなければならない」というスタンスでいないといけないと考えています。地域の課題を根本から解決したいのだ!という思いを持つこと、また自治体の方とコラボをすることでソリューションを見つけていくこと、これらが「デジ田」を活用していくコツになるのではないでしょうか。
 これは私の考えですが、地方の課題は地方で解決すべきです。例えば、東京からITベンダーが来て変革を起こしても彼らが帰ってしまったら元通りに戻ってしまうケースがあります。そのため、きちんと責任を持って、芽を息吹かせていくスタンスであってほしいです。

日比谷)現在進んでいるデジタル田園都市構想の交付金のお話を受けて、今後展開していくにあたって、三橋さんと梶原さんのお二人にお伺いしたいです。

三橋)toGは説明コストが一番高く、私たちの「3か月先は未来」のスピード感だと合わないと感じ、中小企業との取り組みの方を優先してしまいがちです。一方、インバウンドで自治体が「こういう風に組みたい!」という熱量を持っているケースの場合は良いと思っています。私達側からアウトバウンドでいくのはスタートアップの立場上悪手だなと感じてしまうこともありますね。

梶原)自治体は3年5年くらいのスパンで考えているので、スピード感が合わずサービスがそこまで大きく広がらない可能性があり、踏み込みづらい部分が僕らにあると考えています。そのため、スピード感のある自治体さんが増えると良いなと思っています。
 また、「スマホの普及率が上がればなんとかなるんじゃないの?」というマインドセットも感じていますね。もちろんスマホが広がることによって解決できることもあり、可能性もあります。しかし、今後は身体能力が衰えてくる80代の方が増えてくる時代となり、彼らが本当にスマホをバリバリ使いこなせるようになるのでしょうか?「スマホの普及率が上がればなんとかなるんじゃないの?」というスタンスを突破していきたいと考えています。

三橋)私は、「ロマン」と「算盤」と「自慢」の3つを考えたときに、シニア×ITがどんぴしゃだと考えたのが大きな理由です。実際構想する際に、大きな市場である認知症に注目したのですが、認知症を「治す」という観点だと競合が強すぎると感じた一方で、金融の認知症対策である「家族信託」を知り、なんでこんな良い仕組みがあるのに広まっていないのか、と感じ今の事業を立ち上げるに至りました。

梶原)私の実家は淡路島にあり、実家の父母と自分の家族や子供たちを繋ぐことの難しさを感じていました。スマホを両親に買い与えても、使うことには使うのですが使いこなすところまではいかないのです。
 高齢化が圧倒的に進んでいるのは日本であり、Appleはグローバル向けなので高齢者向けのデバイスは作りません。そこを自分で解決したら面白いのではないかと考えました。また、日本が他の国に対していろんなものを波及させていけるのではないか、日本の高齢化向けの市場は来るぞ、と思っています。

日比谷)『デジ田』という追い風があるものの、企業と自治体の繋ぎはきちんとうまく行くのでしょうか?

伊藤)一概には言えませんが、比較的地方の温度差は感じています。企業側が課題を理解した上できちんと提案していってほしいと思っていますし、自治体側もどんな技術があるのか知識を伸ばしていってほしいと思っています。
 また、応援団としては、地域で課題を解決できる、地域DXのプロデューサーを育成しようとしています。トータル的にプロデュースできるソーシャルプロデューサーを育成していきたいです。

最後に一言

日比谷)それでは最後に皆様一言ずつお願いいたします。

伊藤)目指すところは、誰も置いていかない皆が幸せな世界です。そのうえでテクノロジーは重要なファクターとなっています。他者の違いを認め合う時代として、テクノロジーを用いて幸せな未来を作り、次の時代に継承してく時代になればと思っています。

三橋)私が運営していたひとつ前の事業は、親がお金を払って、子どもが使うというシステムで、お金を払う人と使う人が違います。現在の事業も、子どもが払って親が使うというシステムです。このつなぎが重要だと考えています。例えば「親父そろそろ認知症になるから、お金俺にくれよ」というつなぎ方は難しいです。家族信託のネガティブなイメージを、プラスに変える仕組みを作るため、 「家族信託は幸せのため」、というブランディングをしていきたいです。

梶原)Fin-techやBrain-tech等はほとんど欧米発のものです。一方、日本がこれから掴んでいけるのが、良くも悪くもこの「Age-tech」という領域。官民一丸となってこの課題を解決していけたら、「日本がAge-techのフロント」という領域までいけるのではないかなと思います。日本人としてそんな夢を抱いているので、ぜひこのAge well Japanのような機会を使って色々進めていけたらと思っております!

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