普通でないことに誇りを


私は、自分で言うのもアレだが結構波乱万丈な人生を送っている。


中学1年まではテスト90点台常連、成績表ではオール5を取ったこともある、といった俗に言う「超優等生」を経験したのち、突然のパニック発作で不登校になる。修学旅行を始め学校行事に参加できなくなり、勉強もできなくなったため、俗に言う「底」に落ちた。


中学3年の時、進路をどうするか問題に直面した。中学の3年間でオール5からオール1になった私は勉強面の自信などとうに無い。

だが、私にはやりたいことがあった。小学生の頃から体調を崩す直前まで習っていた、ミュージカル。私は舞台に立って歌ったり踊ったり、お芝居するのがとても好きだった。
どれだけ体調を崩していた中学3年生の時でも、それが大好きなことに変わりはなかった。

先生の薦めで、隣県の芸能が学べる高校に受験した。正直言ってしまえば、そこは学力は見ずに志望理由書のみで通ってしまうようなところだったが、体調のせいで勉強はできないものの好きなことが学べるその高校は、私にとって奇跡の場所だった。

受験は合格し、無事入学。だが、私は電車通学が難関だった。
毎日1時間半電車に揺られなければいけなかったため、入学してからわずか1ヶ月で私の体調は限界を迎えた。
結局、その高校は2年の冬で中退。私の人生の中で、またひとつ失敗経験が増えたように思えた。

その後、地元の通信制高校に通い直し高卒の単位はなんとか取得。
ここでもまた進路をどうするかの時期がやってきて、私は舞台芸術が学べる芸術大学を進路先に選択した。やっぱり私は芸事が大好きで、それが揺らぐことはなかった。

この時点で、中学1年の発症時からかれこれ5年は経っている。体調は少しずつ良くはなりつつあるものの、相変わらず勉強をしようとすると体調を崩すため、私はAO入試で大学を受験した。結果、合格できた。

私は晴れて芸大生になったのだが、結論から言うと私は大学を1年で中退した。
人生初の田舎で一人暮らし、舞台芸術学科は身体を使う授業が非常に多く体力を使う学科であることなどから私の疲労やストレスは1年で限界を迎えたのだ。
私の人生史の中でまた、大きな失敗経験が増えた。


…と、ここまで私の経歴を長々と語ったわけなのだが、これを読んでくださっている皆様は一体私の人生についてどう思っただろうか。
大変な人生、可哀想な人生、しんどい人生。そういうネガティブな感想になっただろうか?

ちなみに私自身は、大学の頃までは自分の人生のことを「可哀想な人生」だと思っていた。人生の中で中退という選択を2度も経験し、ここでは触れてはいなかったがこれまでにアルバイトをいくつかしており、全て1ヶ月前後で辞めている。

なんて私は可哀想なんだろう、と。別に悲劇のヒロイン気取りというつもりもない。可哀想な事実が並んでいるから、あぁ、私は可哀想だなと思っていた。



だが、母と話していたある時、私の考えは大きく変わる。

母と話していて、ふと私はこう言った。「普通の子だったらどんな人生だったんだろう」と。それはもちろん体調不良を起こしていない、ごく普通の自分だったら、という意味で。

母は、「普通なんかない」と言った。

まあ、よくある返し言葉っちゃよくある返し言葉。でも、私はこれに妙に納得した。
そうか、私の人生、普通ではないと思っていたけど、…まあ、平均ではないのかもしれないけど、決して可哀想ではないな、と。

そもそも論で、普通の方が幸せという根拠は、正直ない。普通っぽい生活をしている人のほうが人生充実しているかと言われれば、人による。

私はその言葉をきっかけに色々思い直してみた。
高校を中退して通信制に通い直す。つまり、人生の中で私が通った高校は2校だ。
結果、2校ともにかけがえのない友達がいる。今でも連絡を取って会う友達が、両校ともにいる。それはその先の大学でも同じで、今でも仲の良い友達が私には沢山いる。

なんてラッキーなんだろう。私は友達が多い方だという自負はあるが、確かにこの環境じゃないとここまで友達の数は多くなかったかもしれない。

そして、私はミュージカルが好き、ということを最初から書いていた。
ミュージカル教室に通っていたのは体調を崩す前、つまり超優等生の頃だったが、実はこの頃もミュージカルをしている自分は人と少し違っていて変なのかなという気持ちがあった。
それは小学生のクラスメイトがその頃割と陰湿で、そういう珍しいことをあまり受け付けなかったからなのもあるが、私は自分を変な人なのかも、とは思っていた。悪い意味ではなくとも。

でも、そのミュージカルが好き、という事実が、私の進路の選択に非常に大きな役割を果たしているのは間違いない。
高校も芸能系だったし、大学も芸術大学。私の人生の基盤は芸事と言っても全然過言ではないのだ。

普通ってなんだろうと考えるより、普通ではないことの素晴らしさを発見できた時、私の人生ってとても面白くないか?!と我ながら思った。

まあ、そう思うためにはやっぱり多少の年月は必要だったのは事実。
だから、今もし自分の環境が普通じゃなくて、普通ではない人生に苦痛を感じている人がいたら、私はこう伝えたい。

普通じゃないって、ものすごく財産になる。
普通でないことに失望するより、誇りに思う選択をしてほしい、と。

俗にいう「普通」じゃないってだけで、普通じゃない人側の気持ちをよく理解できる。それは今後、誰かを救うことにも繋がると思っている。

普通の幸せが良くないなんて一切言ってない。むしろ、いまだに普通の幸せに憧れている自分もいるんだと思う。
でも、普通じゃない側の人間って超〜〜おもろいぞ!!私はそう思っている。

そんな私は今日も体調に気を遣わず働ける「普通」を夢見つつ、自分の個性である「普通ではない」ところを大切にしていきたいと思っている。



#あの選択をしたから

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