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【研修医、専門医勉強ノート】謎の意識障害?集中治療室で原因不明の突然死。非痙攣性てんかん重責とは?(NCSE:non-convulsive status epilepticus)

今回は非痙攣性てんかん重責(NCSE:non-convulsive status epilepticus)についてお話しします。

以下NCSEと略記しますね。

これは知らないと、わからないです。
疑わないと、検査すらしないです。

そもそも脳の発作は痙攣するもの…というイメージが強く(恥ずかしながら脳外科医でも)、「けいれん」と「てんかん」の違いすら、わからない医者が多すぎることに私は警鐘を鳴らしたいです。

脳の発作が起こるには神経細胞の異常な興奮が起こることが必要であり、それが運動に関わる脳の部分を巻き込めば痙攣がおこりますし、そうでなければ起こりません。

さて、話を戻します。

昔、集中治療室で、原因不明の意識障害とか、そのまま突然亡くなる患者さんがいて、その中に一定数は本疾患が関与していた…という報告があります。


以下、端的にまとめています。若い先生は、よかったらスクショなどしといてください。

救急治療室(ER)においては臨床的に明らかな痙攣性発作がなくても、意識障害が遷延する症例に遭遇することが多い。このような場合、見えない発作、すなわちNCSEを疑い、脳波検査を行うとNCSEを検出する場合が少なくない。

NCSEとは

明らかな臨床的けいれん発作がなくても、脳波にてんかん発作様の波形がみられる場合はNCSEと考える場合が多い。最近の報告では、意識障害患者で5分以上脳波上で発作パターンが続く場合、もしくは繰り返し発作パターンがみられる場合はNCSEと診断すべきであるとされている。NCSEの場合は死亡率、後遺症発生率が高いため、適切な抗てんかん薬による治療が早急に必要になる。

NCSEを想起する病態

一般に下記に示す所見が見られた場合は、NCSEを疑って長時間にわたる脳波検査を行った方が望ましいと言われている

先行するけいれん発作後の遷延する意識障害
意識混濁、意識障害と覚醒状態が混在している状態
顔面のミオクローヌス状態がみられる場合
眼振を伴う意識障害
失語やせん妄といった認知症様の症状が間欠的にみられる



NCSEの頻度について

SAH 19%
頭部外傷 22%
脳梗塞 27%
脳内出血 36%
精神変容 37%
けいれん重責後 48%

治療について

無難なのはレベチラセタムという薬です。
理由は、
バイタル変化が少ないから。
点滴があるから(意識悪い患者は錠剤の内服は困難です)

けいれん重積が起こった時、初めは血圧が上がり、脈も早くなります。採血では白血球の上昇、アシドーシスが起こることも有名。筋損傷の指標になるCKは、けいれんがそこそこ長い時間が起こったとき、翌日の採血で確認しやすいです。

話が少しそれました。

けいれん重積は、治療されず放置されると血圧が下がり、脈も下がります。
その時、ジアゼパムやフェニトイン(今はホスフェニトインが多い)を投与して発作を止めていましたが、これらは呼吸抑制や心抑制でバイタルサインがますます悪化しやすいのです。
それでも昇圧剤も併用して、治療していましたが(発作が止まれば血圧や脈も回復してきます)、ちょっと気持ち悪い…経験が少ないと勇気が必要…ですよね。

レベチラセタムは、こういったバイタルの変化を気にせず使用できるのでとても助かります。

ちなみにレベチラセタムの点滴が出る前は、胃管を患者さんに入れて、レベチラセタム錠を粉砕懸濁して投与してました。


レベチラセタムの注意点は腎代謝であること。

腎臓の機能が明らかに悪い人は使用を気をつけてください。その場合はジアゼパムやミダゾラム、プロポフォールを使いましょう。


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