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【学生・研修医・専門研修医向け勉強メモ】バルビツレート大量療法について

今回は重症頭部外傷時に使用することがあるバルビツレート大量療法について簡単にNOTEを作成いたします。

本治療はそんなに現行のガイドライン上のエビデンスが高くないため、さほど行う機会はありませんが、脳神経外科医や急性期、神経救急診療を行う医師として「知りません」とは言い難く、昔の先生は割と経験のある治療です。

せっかちさんのために先に結論から


頭部外傷におけるバルビツレート療法>


・奥の手(他に方法がなかったら考慮)
・神経保護・頭蓋内圧を下げる効果あり。でも予後は改善しない。
・チオペンタール(ラボナール)をローディングしてから持続投与
  2-10mg/kg → 1-6mg/kg/hr(4-6mg/kg/hrでburst suppression)
  burst suppressionが出たらそれ以上増量しない
  頭蓋内圧を指標にする、血中濃度や脳波は参考にしない



まず、論文からそのまま引用。(日医大医会誌 2019; 15(2)より)

ICP:頭蓋内圧、EEG:脳波、CPP:脳灌流圧、BTF Brain Trauma Foundation

バルビツレート療法は神経保護作用と ICP 低下作用を併せ持つ治療法として普及している.しかし、重症頭部外傷患者におけるRCTでは,神経保護作用を目標とした予防的バルビツレート治療の有効性は示されなかった。
一方、ICPコントロール不応の患者に対する多施設研究では、対照群に比して ICPコントロールし得た症例がおよそ2 倍になったとの報告がある。以上から、ICP コントロールを目的としたバルビツレート治療は ICPコントロールのための強力な手段であるといえる.これを踏まえ,BTF のガイ ドラインでは,EEG によるburst supressionを指標とした予防的バルビツレート療法は推奨されていない (Level IIB)しかし,他の内科的・外科的治療法に反応しない ICP コントロール困難例に対しては大量 バルビツレート療法が推奨されている(Level IIB). バルビツレート大量療法の合併症は全身血管抵抗の低 下および心筋抑制に伴う低血圧,肺炎などであるが, 特に,低血圧に伴う CPP 低下に注意を払うべきである.


上記の図を御覧ください。
バルビツレートの前にやること6つです。

(とはいえ、実際に脳が腫れてる時の脳室ドレナージって、脳質が狭くなってるんで、水頭症に比べて結構難しいんですよね。場合によってはナビゲーション使うこともあります。)

びまん性脳腫脹のように、手術してもう脳の圧を減らすような方法がありません!・・・のときに行う治療です。

脳波モニタリングをしながらやります。
ベッドサイドで24時間モニタリングしましょう。

上の図は若手は丸暗記でよいとも思います。

さて、頭部外傷で使用する場合の上記のことを踏まえつつノートはこちら


バルビツレート大量療法

適応


 マンニトールが効かない
 術中急性脳腫脹
 主要血管閉塞による脳虚血の高危険群

作用


 脳血流減少をともなう脳酸素代謝率の減少
 血管緊張性上昇の直接作用
 フリーラジカル消去薬の作用による脳保護効果また脂質過酸化の抑制

容量


 ペントバルビタール:
 10mg/kgを30分以上かけて投与し、その後維持量として5mg/kg/hを3時間、さらに1-3mg/kg/hへ漸減する

 チオペンタール:
  4mg/kgを1時間以上かけて投与し、その後維持量として2-12mg/kg/hとする
※頭蓋内圧が24−36時間安定するまで投与を続け、一日50%ずつ緩徐に減量していく

合併症


全身血管抵抗の低下および心筋抑制による低血圧:昇圧が必要になる場合が多い
感染症:肺炎など
低体温
胃運動低下
褥瘡、DVT
中止後48時間は神経学的診察が困難(脳死判定もバルビツレートの効果が消失してから)



今回はちょっとマニアックな内容でした。
参考になれば幸いです。





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