ハンガリーの「丁寧さ」にみるボトムアップの学び方
前回から、海外の「プログラミング教育」事情(2018年版)と題して、各国のプログラミング教育について調べてます。
来たる2020年のプログラミング教育必修化に向け、各国の教育事情をもとに「どんな教育が必要になるか?」を現役エンジニア 兼 講師の目線で書きまとめています。
第1弾となる前回のnoteでは、香港を取り上げました。
香港の競争力の鍛え方は非常に参考になりますのでぜひご一読を👇
第2弾となる今回は、天才科学者を輩出する国としても有名なハンガリーのプログラミング教育について取り上げます。
ちなみに、ハンガリー発の発明品には、
・ルービックキューブ
・ボールペン
・ノイマン型コンピュータ(いわゆる僕たちが使ってるコンピュータ)
などがあります。
ちなみに、ノーベル賞受賞者もめちゃくちゃ多いです。
そんな発明の国「ハンガリー」のプログラミング教育を基に、日本に取り入れるならどんな教育が望ましいか?という点をまとめていこうと思います。
1.ぜひ参考にしたいハンガリーの「Informatika」
ハンガリーには「Informatika」という独立科目が存在します。
2003年から必修科目としてスタートし、6歳から学習しているんですね。
この「Informatika」ではどんなことを教えているのか?というと、
①ITツールの利用法
②アプリケーションの知識
③問題解決のツールとテクニックとしてのIT
④21世紀におけるインフォコミュニケーション
⑤情報社会
⑥図書館情報学
の6分野です。それぞれの詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
文科省のプログラミング教育の手引きを読むと、日本においては、特に独立教科を設けるわけではなく「算数」や「理科」の一環として教えることになっています。
また、教える内容はプログラミングそのものというよりも論理的思考の習得が中心になっています(と予定されています)。
論理的思考の習得を重視する日本とは違い、ハンガリーではリテラシー教育をまず行い、その延長としてアルゴリズムやプログラミングを学ぶというカリキュラムになっているんですね。
このカリキュラムであることで、ハンガリーの小学生はごく自然な流れでプログラミングを学ぶことができるように思います。
日本人のなかには「学校で学んだことが大人になって役立ってるかよくわからん」という意見を持つ人もいますが、ハンガリーでは連続性を意識した学びの土壌がすでにあるんですね。
要は、ボトムアップで着実にレベルアップする仕組みがあるということ。
この仕組みはぜひ参考にしたいところです。
2.僕が感じたハンガリーの丁寧さ
「Informatika」はとても丁寧に、しっかり計画されている印象を持ちました。なぜ、ここまで丁寧な教育を実践しているのか?
それは、ハンガリー政府の以下の言葉に詰まっているような気がします。
21世紀の課題の一つに、生活を意識的かつ慎重に計画することがあげられる。人生の問題の本質的な部分及び、現実の問題をベースにした役割への適切な対処が、生活の質に影響を与える。
情報化が進む世の中において、製品や文化のライフサイクルはとても高速に回転しており、いろんな価値観が出来上がっていますよね。
何を信じるか、何をするのか、それらは本人の自由であり、何が起きても自己責任な世の中。そして、何を信じるかは自分の人生に大きな影響を与えますよね。
例えば、仮想通貨とか。
どこぞの誰かが言う「このコインはくる!」を信じて、大量に購入し、結果的にそれが暴落(もしくは詐欺コイン)し、大きな損失を被ろうと、それは「その発言を信じた」自分の責任ですよね。
(もちろん、詐欺はよくないです。)
新しい価値観に出会ったときに、どんな視点でジャッジするのか?
知らない概念に出会ったときに、どうやって調べていくのか?
個人的に、そういう「新」を受け入れる姿勢やアプローチが、結果的に人生観の構築に大きく影響してくるんだと思います。
3.日本に取り入れるならどんな教育が望ましいか
では最後に、ハンガリーの事例を調べてみて、「これは日本の教育にも取り入れるといいな」と個人的に感じることをまとめて終わりたいと思います。
ハンガリーでは、まずリテラシー教育から入ることで、「新」をどう受け入れていくのか?をしっかり教育し、下地を作り、しっかり作った土台の上に応用的なテクニックを積み上げています。
これは前回の香港でもそうでしたが、裾野作りをしっかりすることが重要ということを意味しています。
ハンガリーではいきなりプログラミング言語を扱うことはしません。
まず「コンピュータに慣れる」ということに重きを置いています。
具体的には、
・インターネットで検索してみる
・ペイントツールでお絵かきしてみる
・フォルダやファイルを作ってみる
などです。
この部分は日本においてもすぐに取りかかれると思います。
そして、そこからお遊び感覚でプログラミングに触れるといいと思います。
ハンガリーでは最初の言語として「LOGO」を学んでいますが、日本人にはなかなか受けないかも(見た目的に)なので、前回も紹介した「Viscuit」や、お絵かき感覚でプログラミングができる「Springin」がいいんじゃないかと思います。
「LOGO」についてはこちらの記事が参考になると思います。
ちなみに、僕は子供ができたら「Springin」を触らせようと思ってますね。
そんな感じで「あそんで」「つくる」に慣れてきたら、アルゴリズムを教育するといいと思います。
アルゴリズムは解決までの手順だと思ってください。
プログラミング言語を通してでなくても、料理とかを通して問題解決を学ぶことも全然ありだと思います。段取りとかめちゃ学べますしね。
保護者も一緒に取り組みながら「これがアルゴリズムか」という体験を積んでいくことで、自然とプログラミング言語の習得に入っていけると思います。(アルゴリズムを教えるってのが一番地味で、一番重要ですから)
ハンガリーに見るキーワードは「丁寧さ」。
初歩的なことから丁寧に積み上げていく、これが僕の見解です。
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