フワちゃんの炎上について思ったこと

事の発端はやす子の「やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので 皆優勝でーす😄😄😄😄👏👏👏👏✨✨✨」というポスト。これにフワちゃんが「おまえは偉くないので、死んでくださーい😅😅😅😅😅予選敗退でーす👏👏」と引用で返信。この投稿自体はすぐに削除されたものの、スクリーンショットを晒されて炎上。ほどなくしてやす子も認知し、「とっても悲しい」と反応。これを受けフワちゃんは自身の投稿を認めて即座に謝罪。しかし火は収まらず、ラジオが休止になるほどの騒ぎに発展している。

件の投稿

この件に関して、Xでは様々な憶測が飛び交っている。その中には、性格分析や人間関係にまで及ぶものもあるが、そんなものメディアでの姿しか見ていない外野が分かるはずもなく、考えるだけ無駄だと思うのでスルーしたい。

話を件の投稿に戻そう。そもそもこれは裏垢の誤爆などではないと思う。かといってそこまで明確な意図があったとは思えないが、何気なく呟いたブラックジョークにしてはよくできている。

まずやす子の元のポスト「生きてるだけで偉い」。引っかかるのは「偉い」という言葉。これによって、全ての生物に「偉い」という尺度が適用され、その枠外に優劣が出来ることは否定できない。だからこれを肯定的な意味合いで使われると、偽善的な感じがして気持ち悪さを覚える(その点で言うと「生きてるだけで丸儲け」は筋が通っていて、明石家さんまの言葉選びは巧みである)

フワちゃんの引用は元のポストに真逆のことを言うもので、そうした発言をした背景には、先に述べた気持ち悪さに対する、直感的なムカつきがあったのではないかと思う。すぐに削除したのはおそらく後になって炎上しそうと思ったからで、その勘は正しく「死んでくださーい」は平成中期までならまだしも、今のご時世マズかった。ただ、これはブラックジョークとして十分成立するものだと思う。ゆるい絵文字と内容の辛辣さのギャップ、文章のリズムが生む勢いと「予選敗退でーす」という言葉選びで冗談だと言うことは分かるし、相手も芸人だから大丈夫と思ったのだろう。

やす子のポストでもう一点気になったのが、「オリンピック」と「皆優勝」。こうしたワードを入れた背景には、パリオリンピックに関して、誤審や差別でナショナリズムが剥き出しになり、ギスギスしている世の中の空気があると思う。「生きてるだけで偉い」という全肯定的な内容をオリンピックに絡ませたのは、そうした空気を読んでのことだろう。

また、オリンピックで気になる点としては、アスリートへの誹謗中傷に対する議論もある。この問題に関しては、政治家も厳罰化に賛意を表明していたりするが、こういうのを見るにつれ、道徳的に否定し難いところを取っ掛りとして、ゆくゆくは体制への批判も誹謗中傷に含めたい思惑を感じる。やす子のポストにそこまでの背景はないと思うが、世の中の空気を傷つかない笑いに落とし込む感じに、糸井重里の「責めるな。じぶんのことをしろ」に近い胡散臭さを覚えたのは確かで、フワちゃんの引用は意図せず、そこへの冷やかしとしても機能していたと思う(フワちゃんが誹謗中傷の厳罰化に賛成していたのは皮肉なことだが)

この一件で、フワちゃんは大炎上している。これに関しては、元々彼女のキャラクターが嫌われていたことに加え、やす子という高好感度の人物を傷つけたという構図により、安全に叩ける状況が出来たことが大きい。フワちゃんのキャラクターは目上にも臆することなく、自由奔放に振る舞う若者のカリカチュアとして受け入れられていたが、裏を返せば失礼のチキンレースをするようなもので、諸刃の剣でもあった。今回の炎上は、いつか起きることが起きるべくして起きたとは思うが、ラジオやCMをキャンセルされるほど悪いこととは思えない。これに関しては不憫に思う。

やす子がフワちゃんに更なるブラックジョークで返したり、「絶対に許さない」と反抗する態度を取れば、まだ笑いに発展したものの、そうはならず、現実は「とっても悲しい」と暗に傷つきを表明する投稿をした。やす子のキャラクター的にその対応は間違ってないが、それをやられてはおしまいである。フワちゃんは即座に非を認めて謝罪するしかない。

思ったのが、向上委員会での永野と陣内の髪掴みあいの喧嘩のような、ガチとネタの境界を行く絡みは、その場の空気感が伝わるテレビでするものであって(それでも陣内をガチで糾弾し、永野可哀想と言うような声はあったが)、よりガチに受け取られやすい、SNSの文面上のやり取りでやるべきではなかった。それも関係性の薄い相手に。今回の騒動には、SNSがメタ視点のない空間になってきているということと、テレビのノリをそこに持ち込むことの危うさや難しさを改めて考えさせられた。

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