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『何か“オモシロいコト”ないの?』の何かオモシロいその内容

『何か“オモシロいコト”ないの?』(フジテレビ系)もあと一クールで放送開始から一年が経とうとしている。挑発的なタイトルとエッジの効いたOPから、攻めたバラエティを予感させる割には、無難な内容だと開始当初こそ思っていたが、観続けているうちに、演者の魅力を引き出す企画の奥深さにハマってきた。今回はそんな『何かオモ』の魅力について、掘り下げてみたい。

シンプルだけど奥深い「ワンバンライス」

『何か“オモシロいコト”ないの?』のMCは菊池風磨と長谷川忍の二人。『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』でお馴染みのコンビだ。そこにバラエティタレントやお笑い芸人何名かで脇を固め、番宣で来た女優ゲストを一名中心に据える。

そしてこの座組で行われる、番組一番の人気企画が「おかずが出てこないグルメ企画 ワンバンライス専門店」だ。味だけで料理の正体を当てる企画で、そう聞くと『めちゃ×2イケてるッ!』の「シンクロナイズドテイスティング」を想起させるが、そのテイストは大きく異なる。

「シンクロ」がテイスティング中のトークや落下後のリアクションが中心だったのに対し、「ワンバンライス」は企画のゲーム性に主眼が置かれているのだ。

おかずをワンバウンドさせたご飯、そこに残った味と香りを頼りにその正体を当てる。ゲームとしては非常にシンプルだが、これが意外と難しく奥が深い。

例えば、水川あさみゲスト回では、ほぼ全員が漬物と回答。村重杏奈だけがポテトサラダと答え、散々バカにされることになるのだが、結果は唯一の正解。菊池風磨も誤りを認め謝罪することに。同様の展開は以前にもあった。松本若菜ゲスト回では、みんながエビチリと答える中、酢豚と回答し見事正解。こうした流れから村重はワンバンクイーンの称号を手にすることになった。

傍から見たらポテトサラダなんて簡単そうだが、マヨネーズの酸味から漬物と間違うなど、これが意外と難しい。食感が分からない分、表面的な味だけでなく、その奥にある食材の風味まで読み取れるかが、この企画の肝であり面白さだ。

逆に一人だけ不正解を出すこともある。松岡茉優がゲストで訪れた際には、かにみそをサザエ、アヒージョをペペロンチーノと、ただ一人間違い続けた。この回の彼女は結局一問も正解することなくゲームを終えたのだが、それゆえに言動の端々から滲み出る負けず嫌いな性格が見どころとなった。例えば、(正解したのにスカす菊池風磨に)「もっと喜びなよ」と食ってかかる、フライングで匂いを嗅ぐなど。

このように「ワンバンライス」企画は、そのゲーム性もさることながら、女優の素が見える部分も面白い。フジテレビで言うと『VS嵐』など、かつては普段見せない俳優の素顔が見られるバラエティ番組がたくさんあったが、現在は少なくなっている。

『あなたはこの衝撃に耐えられる?ワールドドキドキビデオ』(日テレ系)はややそうした要素があるが、どちらかと言えば、いかに素のリアクションを出さず耐えるかのせめぎ合いを楽しむもの。近い番組は現状『オールスター感謝祭』(TBS系)ぐらいだ。そんな中、ゲームに女優を熱中させ、素を引き出すこの番組は、貴重な存在と言えよう。

女優ゲストの活躍

女優の意外な姿と言えば、「100回ツッコミを受けるまで終わらないゲーム」も面白い。ダイバーシティ東京プラザ、ららぽーと豊洲、銀座ロフトなどの商業施設を舞台に、長谷川が100回ツッコむまで、ゲスト女優が全力でボケ続けるという『有吉の壁』(日本テレビ系)と『佐久間宣行のNOBUROCK TV』(YouTube)の「100回ボケてツッコむタイムレース」が合体したような企画だ。

今までこれに挑戦したのは、吉岡里帆、有村架純、西野七瀬の三人。初回の吉岡里帆はボケながら自分で笑っちゃったり、ぎこちない動きを「陰キャが初めてハシャいだ日」とツッコまれて耳を真っ赤にしたりと、慣れないながらも、必死にボケる可愛さが魅力的。対して有村架純は、たくさんの買い物客がいる中、大声でラララライ体操を踊ったり、インテリア店でお店のカゴを被ったりと、ほとんど照れずに全力でボケる。最も意外だったのが西野七瀬で、登場からジョイマンの「ナナナナ~」を結構な声量で披露。かねてよりお笑い好きとは公言していたが、クールなイメージだったので、意外な振り切りに驚かされた。

ロケ企画なら「死語45ゲーム」も忘れられない。最新スポットを巡りながら、番組が選んだ45の死語の中から、より多くの死語を使ったチームが勝利となる企画で、必死に古臭い流行語を連発しているのがシンプルに面白い。「ごちそうサマンサ」や「チョベリグ」はまだしも、「てへぺろ」や「やばたにえん」ですら死語扱いなところに言葉の消費サイクルの速さを感じさせられたが、そうした発見も込みで楽しめる。

言葉遊びと言えば「しーすーゲーム」もある。「し」を「す」に変えるだけのシンプルなゲームだが、「新聞紙」→「すんぶんす」と答えるところを「すんぶんし」と言ってしまうなど、意外なところに引っかかるポイントが秘められていてこれも面白い。

いい意味での平成バラエティ感

ここまで女優ゲストや企画のゲーム性にばかり言及してきたが、最後に番組MCでありながらイジられ役でもある菊池風磨の魅力にも触れておきたい。

まず最も印象的なのが「1泊2日菊池風磨バースデー旅 in沖縄」だ。女優と二人旅と聞かされて現場に着いてみると、相手役はADミヤハラだったという『ドッキリGP』のような導入で始まるこの企画。巨漢で癖の強いキャラクターのミヤハラとの掛け合いが面白く、ウェットスーツを着てすぐにトイレに行きたくなる場面は、この番組で一番笑った。

つい先日の「風磨VS狩野英孝“真のイケメン”3番勝負!」も良かった。お題の動きを取り入れながら歌って踊る「かっこ悪いカラオケ」では、菊池風磨のチンポジを直す動きがさりげなく、流石はアイドルと思わされた。また同企画内の「突然キスする空気の顔」は『キスマイBUSAIKU!?』(フジテレビ系)を、新婦を抱えて足つぼマットの上を歩く「激イタバージンロード」は『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)の「Mr.MJ」を思い出させた。

冒頭で「ワンバンライス」が「シンクロナイズドテイスティング」に似ていると指摘したが、「しりとり×連想×キレるゲーム」も『めちゃイケ』の「色とり忍者」を彷彿とさせるし、いい意味で平成のバラエティを彷彿とさせることが多い。テレビの裏側やメタを語る番組が多い中、企画力とタレントの魅力で純粋に勝負するこの番組は長く続いて欲しい。

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