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宇田川元一 メディア掲載・論文等の一覧

企業変革やイノベーション推進に関連する内容を中心に、主なメディア掲載記事をご紹介しています。

取材をご希望の方はホームページよりお問い合わせください。



思索の重要な基盤に関連する対談・インタビュー記事

企業変革の思想と考察

宇田川准教授が語る、会社を本来あるべき場所に戻す経営変革論──鍵となる多義性・複雑性・自発性とは?

宇田川准教授が示す、新たな経営変革論──他者を媒介にして自らを問い直し、組織が生きる物語が変わる

企業変革について、現在書籍を執筆しているのですが、そのアイデアも含めて、企業変革の考え方について語っています。
私が考えている企業変革は、旧来のV字回復を目指す企業変革とは視点が違います。V字回復は、短期的な経営の立て直しを主眼としていますが、私が論じようとしているのは、企業がどのように変化する環境に対する適応力を構築していくか、それを長期に渡って持続的に行っていくか、という問題です。
このインタビューでは、企業がどうしてそうした長期的な変革をしなければならなくなるのか、そのメカニズムについて述べつつ、変革の中心に対話がある、ということを述べています。
前後編と長い内容ですが、私が考えていることをかなり詳しくお話出来たと思い

Biz/Zine | ロナルド・ハイフェッツ氏に訊く、企業文化の延長上にある適応型変革──破壊的変革の誤解と依存のジレンマ(2022/7/5)

私にとってロナルド・ハイフェッツ氏の一連の著作は思索の重要な基盤のひとつです。
彼は数年前に新訳が出版された『最前線のリーダーシップ』の前書きで、今まで変革(transformation)という言葉をよく使ってきたけれども、この言葉は注意が必要である、という事を振り返って記述しています。なぜならば、変革という言葉には、リーダーが自分の理想を人々に実現させるために、過去のものを全て否定し、人々を従わせるという色彩が漂うからだと言います。
私は全くその考え方に同感で、大切なことは人々がどのように今から未来にかけて適応をしていくかを支えていくことこそ、本来必要な変革であろうと思います。その点について、クリステンセン氏の話なども含め、さまざまに語っていただきました。


Biz/Zine | モーセに学ぶ、適応型リーダーシップ──ケアにより「依存」ではなく「能力」を生み出す役割とは?(2022/7/6)

「引退できないカリスマ経営者問題」についての投げかけをきっかけに、「適応型リーダーシップadaptive leadership」とは何かについて、極めて深くお話いただきました。
リーダーの役割について、ハイフェッツ氏は「リーダーとは依存ではなく(人々に)能力を構築すること」だと語ってくれました。短期的に高いパフォーマンスを出すことは確かに大事ですが、人々が権限のある人に依存するようになることはリーダーシップではないのだと。
確かに、長い期間にわたって、イノベーティブネスを保つ企業は、人々に考える力を身に付けさせ、自己決定できるようになっていますね。だから、トップも引退できるし、会社も長く適応力を持ち続けられます。
このことについて、最後の質問で、ユダヤ人としての強いアイデンティティを持つハイフェッツ氏に、聖書のモーセについて語ってもらいました。この話は、本当に今まで人から教えられた話の中でも屈指の示唆に富む、素晴らしい話でした。


Biz/Zine | 宇田川准教授が語る「センスメイキング」と「ケア」の経営──コロナ禍の“中断”をどう意味づけるのか?(2021/1/20)

ワイクの「センスメイキング」の議論をベースにしつつ、ケアやナラティヴの思想を交えて企業変革について語りました。
センスメイキングとは、小さな手がかりをきっかけに、意味が新たに生成されるプロセスのことで、この理論と企業変革との間を架橋し、かつ、実践可能なものにしていくことを考えています。
私は元々、『組織化の社会心理学 第2版』を手にとったことがきっかけで、研究の道を志した経緯があります。ワイクの語ることはとてつもなく革新的で生々しく、大いに魅了されましたが、どう実践と結びつけていくのかについては、かなり距離があると感じていました。これがある意味で、大学生の頃からの一貫した自分の研究テーマのように思っています。
ワイクのセンスメイキング論とは(理論系譜上)遠い親戚関係にあるナラティヴの思想を上記の問題意識もあって学んできましたが、ナラティヴは実践をベースにしたものであり、この中には「ケア」が大きな意味を持っています。ケアとは、誰かを癒やしたり、世話をすることというよりも、必要なことをする、というものではないかと思いますが、この実践とセンスメイキング論の実践というテーマが少しずつ結びついてきた頃のインタビューです。


企業変革の思想と実践論に関する講演録・インタビュー記事

なぜDXや新規事業は頓挫するのか──宇田川准教授が語る組織のサイロ化、他者との対話による自社の再定義

企業変革について、私の考え方をBiz/Zine Dayにて講演を行い、その講演録の記事です。
私が考えている環境変化への適応力(組織能力)の構築としての企業変革とは何か、なぜ組織能力が企業は衰えるのか、どこを変革していくべきか、ということについて述べています。
コンパクトに自分が考えていることをがまとまっていると思います。


JDIR | 「「組織の慢性疾患」を患っている日本企業に今、必要なこと  社員一人ひとりの自発性が生み出すイノベーション」(2021.10.8)

JBpress主催「ワークスタイル改革フォーラム」での講演録です。企業変革をテーマに、ドラッカーからセンスメイキング、ケアの話まで色々と今考えていることをまとめて話をした内容になっています。


GLOBIS | 「これからの企業変革のあり方」(2022/6/1)

2022年の3月に開催されたHRエグゼクティブコンソーシアム/グロービス共催セミナーでの講演録です。前編(基調講演)では、ドラッカーの保守思想をベースに、今企業で求められている企業変革のあり方について語りました。後編では、グロービス コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクターの西 恵一郎さんとの対談を通して、実際に変革を着実に一歩ずつ進める上で、どこからどのように手を付けていくのか、ということについてお話しています。


Biz/Zine | 宇田川准教授が語る、「保守思想家としてのドラッカー」──連続的に穏やかに悪化する時代の経営変革とは(2021/7/19)

『組織が変わる』の中でも書きましたが、今日の企業社会は、企業の成熟に伴って組織の慢性疾患になっています。これに対して、急性疾患的な変革論はたくさんありますが、慢性疾患状態を少しずつ変えていくという方法がまだ見えていないように思います。『組織が変わる』では、組織の中でそれをどう行っていくか、ということについて書きましたが、企業変革を成し遂げるためには、もう一つマクロ組織的な変革のための戦略も必要になります。結構前から、変革を考える上で不可欠なのは保守的な思想であると思うに至りました。ただし、ここで言う保守とは、旧態然としたことをやっていくという意味ではなく、足元から自発性を持って変革をしていく、という意味です。この保守思想はドラッカーから大いに学びました。保守的な地に足のついた変革をどうやっていくか、ご参考になれば幸いです。


Biz/Zine | 宇田川准教授が語る、新規事業創出に必要な「成功体験の丁寧な棚卸し」と「支援者の育成」とは?(2022/3/23)

私がアドバイザーとして関わっている東洋製罐グループホールディングス・イノベーション推進室での取り組みを中心に、イノベーションの推進と企業変革のためにどのような支援をしていくか、ということについて語っています。
「過去の成功体験を捨てられない」という言葉を、企業変革周りでよく見聞きします。構造的にはそうなのでしょうが、この言葉には前々から違和感を持っていました。なぜならば、その構造自体も、実際には日々の実践の積み重ねから出来ているし、日常的な実践においては、何かをする上でのリソースでもあるからです。
制約要因として構造を捉えるだけで、実践のための道具として考えるという視点が無いために、結局空理空論だけで変革の議論が終わり、それに基づいた強引な構造改革が頓挫するのをいくつも目にしてきました。
ではどうやって、過去に紡ぎあげてきた成功を、これからの変革のためのリソースへと転化できるか、それこそ変革を考える上での大事な論点であろうと思います。抽象的な議論ではなく、実際に企業を変革していくために、どのような支援をコーポレート機能が行うか、という、思想を持った具体的な実践論こそが大事であると思っています。


Biz/Zine | 企業変革は「戦略」が起点ではない──宇田川准教授が描く、創る人と支援する人による変革のプロセスとは?(2021/3/24)

変革への取り組みにおいて、大きな問題だと感じていることは、それぞれの部門や階層において、企業変革への取り組みや事業開発などを行っているにも関わらず、それらがバラバラになったまま連動していないために、結局頓挫してしまう、という問題です。それにより、社内は「改革疲れ」を起こして白けてしまう、という結果になっています。
その状態では変革が進んでいる実感がないので、経営層は焦ってまた変革しようとし頓挫する、ということが繰り返されているのではないでしょうか。意識に訴えても、荒れ地を気合いで乗り越えろと行っているのと変わりませんし、日々の実践の結果であり、抽象概念である組織文化を変えようとしても、具体性に欠けるので現場の人々にとっては実感が持てず、行き詰まります。
このような状態から抜け出し、着実に変革を進めていくためには、社内を繋ぐ役割が必要になります。イノベーション推進室やそれ以外のコーポレート部門や役員の方々ができることは、そうした繋ぐ機能を充実させることにあろうかと思います。
記事の最後の方で紹介している変革のプロセスの図では、戦略が一番最初ではなく一番最後に来ます。どういうことなのか、ご一読いただいて、お考えいただければ幸いです。


企業変革に取り組む方々との対談

経営層の意識改革も実現。「保有技術の見える化」が必要なワケ

荏原製作所マーケティング統括部長の須田和憲さんと対談をしました。

荏原製作所では「技術人材マップ・技術元素表」という、保有する技術の棚卸しをした一覧表を公開しています。
こうした取り組み自体は、それほど珍しいことではなく、いくつかの製造業ではすでに見られることです。しかし、荏原製作所の興味深いところは、この作成は企業変革の一つの入口になっているという点です。

「煙突文化」と記事中に出てきますが、これまでの荏原製作所の高収益を支えてきたのは、事業部でサイロ化した組織でした。しかし、今後イノベーションを生み出してさらなる高収益化を図ろうとすると、内側・外側と有機的に連携して、新規事業や新製品・サービスの開発を進める必要があります。
その点を見据えた取り組みの全体像の現れのひとつとして、同社の「技術人材マップ・技術元素表」の取り組みがあるとお聞きし、なるほどと思いました。

個人的には、荏原製作所は今でも十分高収益企業であると認識をしていましたが、さらなる高収益化とイノベーションの推進を図ろうとされていることに驚いたこと、須田さんがマーケティング統括部という一見すると技術系とはあまり関係がなさそうな部署の方でありながら、実は、マーケティングという市場(組織の外部環境)との接点から組織を統合するための取り組みをされている中にこの活動があることがわかり、とても興味深かったです。

宇田川准教授と語る、組織の“慢性疾患”への処方箋「2onN」とは──他者との関係性で解消する適応課題

不動産管理大手の大和ライフネクストにおける対話に基づく変革への取り組みについてインタビューをしました。
同社では、2冊目の『組織が変わる』で書いた対話の方法「2on2」を発展させ、「2onN」(二人対多数)での対話を行っています。
不動産管理の業界大手の同社は、現状では事業基盤はしっかりしているのですが、長期的に見れば変革が必要であり、新規事業開発や事業ドメインの拡張が必要です。しかし、ではどこから手を付けていくべきか、現場も何を変革していくべきか、ということはなかなかもやもやしていてはっきりしません。
このもやもやしている課題が何なのかを身近な困り事を掘り下げることで、正体を突き止めていき、現場の変革につながった事例や、役員・部長クラスの方々の2onNの実施を通じて、身近な課題が掘り下げられて、経営課題へと繋がり、変革へと繋がっていく事例が紹介されています。
対話と企業変革というと、一見すると距離があるのですが、こういうことろで繋がっているということを実感いただける内容かと思います。短期的なターンアラウンドは外科手術的な取り組みが不可欠ですが、長期的な適応力の向上には飛び道具での変革よりも、セルフケアをする能力を高めることが大切だと実感しました。


Biz/Zine | 顧客の課題を“仕入れ”、企業変革に活かす──トライアルHD亀田社長と宇田川准教授が語る、思想と実装(2022/5/11)
Biz/Zine | 社会的正義を意思決定の軸にする変革リーダーの役割──失敗を許容し挑戦を生むトライアルの組織文化とは(2022/5/12)

九州を中心に小売りチェーン領域で先進的な取り組みで注目されているトライアルホールディングス社長の亀田晃一さんにインタビューをしました。
私は以前福岡で生活していた時に、毎日のようにトライアルを使っていました。安いけれど、品質も悪くないスーパーだったからです。でも、良くも悪くもそのイメージであったのも事実です。しかし、その後トライウェルというドラッグストアも展開し、最近は店内飲食やIT、IoTを駆使したデジタルトランスフォーメーションの先進的な取り組みで知られています。
20年で30倍に成長した同社は、積極的にイノベーションに取り組み続け、全く違う業態とクオリティへと変貌していますが、その背景にはどんな戦略や思想があるのか、今回じっくりお聞きすることができました。
トライアルの弛まぬ地道な変革への取り組みの基軸には、「社会正義」の実現があります。例えば、ショッピングカートで決済できるレジなしのシステムなども、アイデアをコスト安く具現化し、UIを改善し続ける努力を積み重ねた結果だったというお話も記事に出てきます。社会正義という観点からは、たしかに、レジで行列することは全く良いことではありません。高齢者にとっても負担が大きいですし。
こうした様々なトライ(社名のとおりですね)を社内からどんどん出てくるような仕掛けがあるというわけです。これらだけでも素晴らしいのですが、最終的に目指すところが「サプライチェーンの最適化」という地球環境のサステナビリティも含めた取り組みにあるという点にいたり、目が開かれる思いがしました。


Biz/Zine | 一休・榊社長の企業変革の10年──脱アンチ・ユーザーファースト行動、データサイエンスと経営者の両利き(2022/6/23)
Biz/Zine | 一休・榊社長と語る「支援者」としての社長の役割──課題を仕入れる触覚、方向づけ、非・選択と集中とは?(2022/6/24)

榊さんは、プロ経営者として一休に携わって10年になります。元々はボストン・コンサルティング・グループでコンサルタントのキャリアを積まれて、その後、アリックスパートナーズで企業再生のお仕事をされている中で、一休の変革に携わられたのですが、このコロナ禍においても、その見事な手腕で業績を伸ばすという普通では考えられない成果を生み出しています。
では、どうしてそうした成果を生み出すほどまでに一休を変革することができたのか、その戦略と思考と実践についてお聞きしました。
私は、『組織が変わる』の中で、今日の企業組織の問題を考えるために「組織の慢性疾患」という概念から考えてみました。まさに榊さんが日々取り組んでいるのは、組織の慢性疾患が悪化しないようにする、日々の生活習慣を健全に保つセルフケアの連続であるように思いました。同時に、それを適切に行い続ければ、コロナ禍という荒波にあっても業績を向上させることも不可能ではない、ということなのだと大変勉強になりました。
日々の実践はもちろん大切なのですが、単に日々改善しているだけでなく、同時に、目指すべきゴールをちゃんと見据えてそれが日々の中で共有されるように実践に作り込まれていることだと思います。


Biz/Zine | NEC北瀬氏と宇田川准教授が語る、経営変革の思想と実装──なぜ有望事業をカーブアウトしたのか?(2022/01/25)
Biz/Zine | NECでの二階建ての経営変革──既存と新規の架け橋になる変革リーダーが持つ“ゴーギャン的流儀”とは?(2022/1/26)

『一橋ビジネスレビュー』に執筆したケーススタディでもあるNECの企業変革の中心人物である北瀬 聖光さんにインタビューを行いました。
新規事業開発は、マクロ的に見れば、企業の事業ポートフォリオをどう変革するか、という問題であり、企業変革の本丸と言っても良い大きな問題です。でも、なかなかそこに踏み込めない企業が多くあります。それを危機感が足りないからだ、と言ったとて、なんの意味があるでしょうか。それよりも、どうやって一歩踏み込めるか、といったことのほうが遥かに大切ではないでしょうか。
NECの取り組みは、新しい事業をどう作るか、ということにとどまらず、新しい事業を作れる環境整備を丁寧に積み重ねていくことによって、大きな企業変革の動きを構築していった大変優れた事例です。まさに「面の経営」を通じて企業変革に取り組まれているのですが、その背後にある二階建ての経営変革の中身と、その中で重要な視点である「繋ぐ役割」について、踏み込んでお話を伺っています。
北瀬さんのお話から、誰か優れたリーダーがいれば企業が変革されるわけではなくて、様々な役割の方々が連携を構築しながら、面で押し上げながら変革をしてくというのが重要で、そのためには丁寧に、面倒くさいことに取り組み続けることが大事なのだと改めて思いました。そこに取り組むと、巨大なリソースを用いて新しいことができるのが、大手企業の良いところです。NECはまさにそれを成し遂げたし、これからも取り組まれるのでしょう。一冊目に書いた『他者と働く』でも、対話の重要性について述べましたが、まさに対話的に取り組むことが大きな変革につながったということでもあると思います。


Biz/Zine | 木村屋總本店社長に聞く「組織の慢性疾患」──外科手術後に気づいた、成功体験を捨てずに紐解くことの意味(2021/12/9)
Biz/Zine | 企業の物語を再構築する「慢性疾患期の企業変革」──組織の主人公が位置と役割を取り戻すための経営とは?(2021/12/10)

日本を代表する老舗企業のひとつでもある木村屋が、経営再建を果たした今、どう次の時代を築こうとされているのか、企業変革という観点から木村屋總本店社長の木村光伯さんへお話を伺いました。
インタビューを通して外科的な手術が必要な経営再建フェーズと、その後の組織の様々な課題に皆がチャレンジしていく慢性疾患的状況へのセルフケアのフェーズでは企業変革のフェーズは異なるということがよく分かりました。
今、木村屋總本店は新規事業の開発や、業務改革に取り組みながら、伝統を堅持しようとされています。変革とは新しいことを行うためのものではありません。その企業(広くは共同体)が守るべきものを守るために、変える必要があるものを変えていく、というものです。
守るべきものがない変革は機能しないし、人々にドラッカーが言うように「位置と役割を提供する」ために変革が行われるのだと改めて思います。
苦しい状況を乗り越えたからこそ、新たな未来を着実に切り開こうとされるリーダーの言葉を是非皆様ご一読ください。


Biz/Zine | 宇田川准教授がライオン松本氏と藤村氏と語る、インサイドアウトの経営変革に不可欠な両利きの支援者とは?(2021/7/13)
Biz/Zine | なぜライオンは「習慣づくり」というパーパスの明確化を行ったのか──新規事業と既存事業に与えた効果(2021/7/14)

ライオンにおける新規事業開発を通じた企業変革の取り組みについて松本道夫さんと藤村昌平さんにお話を伺いました。
今回はライオンのビジネス開発センターの極めてユニークな仕組みについてお話を伺っています。イノベーティヴな新規事業開発のためには「出島」が必要だ、という話は、もともとはクリステンセンの議論から始まって、日本でもこの5年ほどオープンイノベーションへの取り組みが盛り上がったこともあり、盛んに各企業取り入れてきました。
しかし近年はあまり成果が実感できないことで、「出島」という言葉自体は下火になりつつあります。ライオンの取り組みのユニークさは、既存事業の改革も含む、全社的な変革への取り組みとして、新規事業開発部門を位置づけている点にあります。
このようなインサイドアウト型の取り組みは、極めてユニークであると同時に、自社のこれまでの原風景とケイパビリティを活用する極めて理に適ったアプローチであるとも言えます。


Biz/Zine | 宇田川元一准教授と日置圭介氏が語る「Xゼロの変革論」──コーポレート部門の「ケア」のロジックとは?(2021/10/12)

昨今は、DXやCXなど「Xトランスフォーメーション」が流行りです。無論、これは今に始まったことでもなくて、1990年代のリエンジニアリングから、もっと前にはチャンドラー以降のM型組織への変革ブームなど、歴史的に抜本的変革への要求は繰り返されてきました。
その中で使われる言葉の一つは「危機感」ですが、果たして危機感が組織を変えるかと言えば、そんな単純なものではありません。抜本的変革論(トランスフォーメーション型変革論)には、扱える問題と扱えない問題が有り、後者の変革は、いわゆるトランスフォーメーション型の変革論では扱えないタイプの問題なのではないか、という疑問が出てきて、そのことについて、コーポレートの変革について見識が深いボストン コンサルティング グループの日置さんとディスカッションしています。
日置さんのお話の中では、Internal Care Unitとしてのコーポレート部門の重要性というご指摘が有り、まさにそれこそが大事だと感じています。
ケアという考え方はおよそ経営にはあまり馴染みがありませんが、ケアとは、相手のニーズを対話的に汲み取り、必要なことを行う、ということを続けるものです。お話の中で盛り上がってふと思い出して言及したのは人類学者アネマリー・モルの『ケアのロジック』です。同書にて、モルは、「選択のロジック」と「ケアのロジック」を対比させ、選択のロジックは外側から正しさを論理的に説明し、選択を迫るロジック(ある種の思考の伝統)であるのに対し、「ケアのロジック」とは常に実践である、と述べています。彼女は慢性疾患ケアの中で、何か失敗があったり、うまく行かないことがあった時に、ケアのロジックが必要とするのは、「ではどうするか」「どうしてこうなったのか、どうやったらできるのか」といった実践の繰り返しなのだと述べています。
変革に必要なことは、選択のロジックに加えて、ケアのロジックなのではないか、とお話をしながら強く思うようになりました。


WIRED | イノヴェイションが生まれる組織とは:花王が見出した組織構造の最適解(2021/12/24)

花王の研究開発部門 研究戦略・企画部部長の前田晃嗣さんと同部門主席研究員の福田和之さんとの対談記事です。研究開発から技術ドリブンでものづくりを主導し、新規事業を生み出している花王が、技術開発や組織運営において、時間をかけて一歩一歩何をやりつづけてきたのか、ということについて詳しくお話を伺いました。
そして、花王は今、自社のコア技術では解決できない環境問題などの課題に対して、業界全体を巻き込んで、花王がやってきたことを外に広げる形でのイノベーションを目指しています。イノベーションや変革とは単に新しいことをやるためではなくて、守るべき価値を守るために、変えるべきを変えるものである、ということを改めて感じさせられるお話でした。


対話的アプローチに関連する記事

BNL | 対話に関する、大きな誤解とは? ━━真の組織改革は「わかりあえないこと」からはじまる(2020/5/18)

グロービス コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクターの西 恵一郎さんと「対話」について対談しました。
「対話」とは、よく言われるような「わかりあうためのもの」ではなく、わかりあえなさがある中でどう改革していくか、変革していくか、という「改革の思想」であるというお話をしています。

劇作家平田オリザさんとの対談

『他者と働く』の出版に合わせて、かつてCakesに掲載された平田オリザさんとの対談をCakesの閉鎖に伴い、noteに許可を得て転載しました。以下4つが一連のシリーズです。
長らく著作を通じて敬意を持ってきた平田オリザさんにインタビューをする機会をいただき、話もとても盛り上がりました。
インタビューが終わったあと、編集者・ライターの方たちと、「今日は本当にすごい時間でしたね」と盛り上がり、ちょっといいランチを食べに行ったのが良い思い出です。

本当に人が困るのは「わかりあえない」問題である
「自分で決める」と自己責任論に回収されてしまうのか
上司がわからず屋なら「退職ブログ」を書いて辞めるしかないのか
理想論で終わらせないために「結果ごとき出せ」

“センスのなさ”から始める「発注力」の重要性

コロナ禍で行われたオンラインでの対談で、平田オリザさんと再会を果たしたNewsPicks掲載の対談です。
世の中不確実な変化とか、VUCAとかを理由に変革を迫る議論が跋扈していますが、むしろ日々の変化は小さいけれど確実な変化に対応する方が厄介だったりします。この日々の変革論と対話の問題をじっくりお話する機会になりました。

その他、対話的アプローチに関するBiz/Zineの連載も合わせてご覧ください。

『他者と働く』対談
人事と経営のジレンマ

雑誌等掲載記事

2024年1月号『Voice』pp.118-123
「組織悪の生成と対話的変革への考察」

2023年11月号『地上』pp.38-40
「停滞感の打破も次なるアイデアも「対話」から」
(特集 組織力強化の教科書に掲載)

2023年9月号『CEL』pp.32-37
「組織の慢性疾患を対話でセルフケアー「生きている物語」をつなぎ直す」
(大阪ガスネットワーク㈱エネルギー・文化研究所研究員 鈴木隆氏との対談)

2023年7月号『旬刊 経理情報』p.1
「経営変革と対話」
(巻頭「談・論」に掲載)

私自身に関するインタビュー記事

Fabric Tokyo「はたら区」| 「働く」意味は、他者と関わり自分を知ることにある。 新時代の経営学者が考える、これからの生き方(2022/4/2)

幼い頃に見た原風景とその頃に得た視点が、現在の研究領域へとどのように繋がってきたのか、ということについてお話しています。

研究の執筆物

大学院で研究指導を希望される方などは御覧ください。

宇田川元一(2022)「組織化と創造性」pp.45-68『創造する経営学(経営学史学会叢書 第Ⅱ期 第7巻)』文眞堂 

宇田川元一(2022)「企業組織とメンバーをどう支援し、変革するか」『
産業精神保健』30(3&4)、pp.246-250

宇田川元一(2022)「保守的で適応的な企業変革の思想についての初期的な考察」『経営組織論のフロンティア』pp.19-28

宇田川元一(2022)「3つのパズル解きとしての研究ー素人的研究の方法ー」『経済科学論究』第19巻、pp.3-9

所属先の大学院の社会人院生向けに、研究の方法について書くよう依頼されて書きました。私なりに取り組んできた研究の方法について、「素人的研究の方法」としてつらつらと書いています。

お問い合わせ

宇田川元一への取材・講演依頼はホームページよりお問い合わせください


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