企業変革やイノベーション推進に関連する内容を中心に、主なメディア掲載記事をご紹介しています。 取材をご希望の方はホームページよりお問い合わせください。 思索の重要な基盤に関連する対談・インタビュー記事 Biz/Zine | ロナルド・ハイフェッツ氏に訊く、企業文化の延長上にある適応型変革──破壊的変革の誤解と依存のジレンマ(2022/7/5) Biz/Zine | モーセに学ぶ、適応型リーダーシップ──ケアにより「依存」ではなく「能力」を生み出す役割とは?(2022/
"武器"で問題は解消できない あるMBAの受講生に、宇田川元一は「なんでMBAを学ぶことにしたの?」と聞いてみた。 すると、「いまの上司に任せていたら会社はうまくいかない。MBAを取ったんだから、わたしの方が正しいことを証明したいんです」と返されて、とてもショックを受けたという。その学生は自分の会社を変えるための「武器(=正解)」を求めていた。それでは問題の核心には触れられないと、宇田川は指摘する。 「本当の問題は上司と自分との間でうまく接点が見つけられないこと。いろんな武
幽霊という幻影と苦しみ クリスマスキャロルは、チャールズ・ディケンズの原作であり、この作品についてあえて詳しく述べる必要はないだろう。金貸しの業突く張りのスクルージが、過去・現在・未来の自分の人生を精霊に導かれて見ることを通じて、善良な人間へと改心をするというストーリーである。 例年は、精霊による改心の意味とか、他者との対話の意味についての視点が浮かび上がってきていた。例えばこんな具合に。 しかし、今年はスクルージにとって、彼の苦しみとは何だったのだろうかと真剣に考えな
「対話勢」の底力が問われている ――対話を通して、じっくりと根本から問題に向き合うことが大事である一方で、ビジネスの現場では「短期的に結果を出せ」というプレッシャーは根強くあると思います。その対立に関して、お二人はどのように考えますか? 宇田川 私の仕事に当てはめて言えば、対話を促したほうが、ビジネスにおけるパフォーマンスが向上するということを結果で証明していかないといけないと思っています。 ピーター・ドラッカーの著書で『産業人の未来』(1942年)というものがあります
対話を遮断する「身体的文化資本」の問題 宇田川 私が企業の中で、対話を促す仕組みの開発を行うにあたって、しばしば直面する問題がありまして。 外から見ると、問題だらけで困ってそうに見える組織の現場の人から、なぜか「私たちは特に困ってない」という言葉がよく出てくるんです。それでこれに対して、余計なお節介になってしまっては元も子もない。どうアプローチすればいいものか、と。 平田 いくつかの段階があると思うんですが、1つは問題を意識化できていないということですよね。なかったことに
自己責任論の罠 宇田川 平田さんの著書『下り坂をそろそろと下る』では、「文化の自己決定能力」ということが書かれていますね。これは一つ大きなテーマになってくるのかなと感じています。つまり「自分なりに頑張ってみる」という意味だと私は解釈しているんですが。 以前、私は地方の大学に勤務していたことがありました。そこは典型的な地方都市で、得体の知れない「権威」に対していかに取り入るかということが発想のベースになっていた。自分たちがどうしたいかという考えがないので、結果としてものすごく
「上司がバカだからMBAを取りに来た」という社会人たち 宇田川元一(以下、宇田川) 平田さんは私にとって、いつかはお話をしたい方だったので、今日は夢が叶いました。平田さんが書かれた『わかりあえないことから』は、私にとって宝物のような本なんです。 平田オリザ(以下、平田) いやそんな、適当に書いているので(笑)。 宇田川 とんでもないです。『わかりあえないことから』は「対話」について掘り下げた本ですが、私自身も今、ビジネスの中で対話が必要だと思っているんです。 私はMB
北の大地を電車の車窓から眺めながら、今回の札幌なかまの杜クリニックでのフィールドワークを振り返っている。 例えば地方創生ということを考えたときに、既存の成功の変数に我々はどうギャップを埋めていくかを考えてしまう。インバウンドを増やすには?とか。 きっとそうでは無いのだろう。 そうではなくて、その地域にとって最もユニークなものは何かといえば、その地域の抱える苦労である。 これに、べてるの家は40年以上取り組んできたのだろう。だからこそ、極めてユニークな実践が生まれたし、僕も
所属先の大学院生向けに、研究の方法を書いて欲しいと依頼を受け、私なりに研究というものにどう取り組んでいるか、どうしてそう考えるに至ったのかなどについて、つらつらと書いた文章が、オンラインで読めるようになっていました。 宇田川元一(2022)「3つのパズル解きとしての研究ー素人的研究の方法ー」『経済科学論究』第19巻、pp.3-9. 大した文章ではないと思っていたのですが、Twitterで共有したら研究者の方を中心に、それなりに関心をもってくださって嬉しかったです。そんな長
昨日は新学期の最初の講義の日だったのですが、久しぶりに対面で学生たちとゼミをしました。ひとつは、1年生向けのプレゼミ(導入ゼミ)、もうひとつは、2年生からのゼミ(演習)。 1年生にとっては大学の講義としては2日目だということであり、また、コロナ禍を乗り越えてきた2年生以上のゼミ生たちにとっても久々に一堂に会する機会を得て、僕としてもなにか思いが溢れるものがありました。 だから、大学で学ぶことの面白さとか、それが一体なんの意味があるのか、ということについて知ってほしいと語り
(この文章は、2021年度埼玉大学経済学部宇田川ゼミナール卒業論文集の巻頭言として作成された、卒業生へのメッセージです。) 卒業おめでとう。みなさんの卒業を心からお祝いします。 皆さんのこれからの歩みが、多くの人の愛情を受ける、素晴らしいものとなりますように。心からそうであることを願っています。 3年間共に過ごした大学でのゼミ生活を振り返ると、どうしても、新型コロナウイルスのパンデミックの問題を避けて語ることが難しいものがあります。丸2年間に渡って、私達の生活を一変させて
今年もアドベントにチャールズ・ディケンズ原作の映画「Disneyクリスマスキャロル」を観た。毎年同じ作品を観ることで、自分の変化に目を向けることにしているからだ。 このパンデミックが始まった昨年は、なんだかよくわからないうちに終わっていった。 今年も緊急事態宣言に始まり、とにかく苦しい時間が続いた。年明けもひたすらに執筆をし、本を出すことができたのは良かったけれど、疲れもあった。感染が拡大する中で、どんどんと心が凍っていくような感覚を覚える時間だった。あらゆるものに痛みを覚
(この文章は、2020年度埼玉大学経済学部宇田川ゼミナール卒業論文集の巻頭言として作成された、卒業生へのメッセージです。) 卒業おめでとう。心から皆の卒業をお祝いします。 そして、3年間皆と共にゼミを作ってくることが出来たことに感謝しています。自分も含め、ひとりひとりがゼミを作るメンバーとして、素晴らしい時間を過ごすことが出来ました。その時間が今はとても良い思い出です。ありがとう。 新型コロナウイルスの蔓延で、この1年間皆と会うことが出来ませんでした。最後に会ったのはいつ
2020年のクリスマスはいつもの年とは大きく異なるものになった。 自分においては、しかし、また今年も「クリスマス・キャロル」の映画を観ながら、色々なことを考えているという点においては同じ時間も過ごしている。 今年は大学院の博士後期課程でケネス・J・ガーゲンの『関係からはじまる』(原著:Relational Being)を読んでいる。この本は、これまでのガーゲンの思索の集大成とも言えるもので、今までの彼の研究に立脚しながら、あえて自分の考えを前面に押し出して書かれている、非常
2019年12月4日に心から尊敬する中村哲さんがアフガニスタンで銃撃され命を落とされてから、1年が経過しました。 かつて、西南学院大学の教員であった頃、私は中村哲さんと幸運にも1時間以上じっくりと話をする機会がありました。 世界には、中村哲さんや、マーティン・ルーサー・キング牧師、マハトマ・ガンジー師のように、自分と同じ人間とはとても思えないような偉大な働きを世界になさる方がいます。 僕はそのことがどうしても不思議でならなかったので、今のような活動をされるに至ったのはどうし
『他者と働くー「わかりあえなさ」から始める組織論ー』(NewsPicksパブリッシング)が、HRアワード2020にて書籍部門最優秀賞を受賞しました。 (HRアワード2020についてはこちらを御覧ください。) 変革的な取り組みをどう実践していくのかという企業社会の課題と、大学生の頃に出会って二十余年研究を重ねてきたナラティヴの思想から、どのように社会に貢献するかという問題意識を持って昨年、初めて本を書きました。 出版から1年が経過し大変多くの方に手にとっていただき、さらに