『企業変革のジレンマーー「構造的無能化」はなぜ起きるのか』が出版されます
私の3冊目の著作である、
『企業変革のジレンマーー「構造的無能化」はなぜ起きるのか」』日本経済新聞出版
が、6月22日に発売されます。ここに皆様にお知らせ致します。
この本は、企業変革をテーマに、日本企業が抱えている企業変革上の課題は何かを徹底的に掘り下げ、問題の構造を考えつつ、打開の道を探る本です。
企業変革というと、三枝匡さんの『V字回復の経営』やジョン・コッターの『企業変革力』などの名著があります。しかし、これらの著作では捉えきれない問題が、成熟した、業績が足元ではそこまで悪くない企業で起きているのではないでしょうか。
この問題は過去においても2冊目に書いた『組織が変わる』でも、「組織の慢性疾患」として述べてきました。つまり、すぐに命に関わるものではないが、確実に、しかし緩やかに企業の衰退をもたらす、とらえどころのない問題だと言えます。
いうなれば、三枝やコッターが捉えた問題が、「有事の変革」であるならば、私の著作は「平時の変革」を扱ったものです。
つまり、ありふれた、しかし、不機嫌な日常をどう機嫌よく変革していくのか、ということであり、より多くの今日の企業で働く方々にご参考にしていただけることのように思います。
この本を出版するまでに3年半近くの時間を要してしまったのですが、それは、このような状況における企業の問題が一体なんであるのか、私自身がよく理解し、そのメカニズムを自分なりに整理していくことに時間が掛かったからです。
本書『企業変革のジレンマ』のサブタイトルに、「構造的無能化」という概念を示したのですが、ここに至るまでが特に大変でした。
これは、分業・ルーティン化が進むことで、気づかないうちにバラバラな状況になり(断片化)、狭い認知の範囲でそれぞれが問題を捉えようとするためにうまく問題が捉えられず、その結果、適切な戦略や変革施策を考えたり、実行したりすることができなくなり(不全化)、その状況を打開しようと表層的な問題解決が行われることが繰り返される(表層化)結果、変革の停滞、企業の衰退から抜け出せなくなっていくメカニズムがあることを示しています。
一人ひとりは決して無能ではないのに、どうして組織になるとその力が発揮できないのか。皆、必死に会社の未来を憂いて変えようと頑張っているのに、どうしてうまくいかないのだろうか。
それは、構造の問題があるのだと段々と分かってきました。
ここから抜け出し、変化を捉え、戦略を考え、よりよい未来を創っていくことができるか。
そして、何よりも、私達一人ひとりが、この時代、この世界で生きる人間として、社会における位置と役割を感じながら、意味があるものとして変革に取り組み続けることができるか。
私の25年間の研究の全てを、全身全霊をかけて企業変革という軸から書きました。
この本の評価のほどは皆様にお任せします。
しかし、私はこの本を書くことができて本当に良かったと思っております。
皆様、よろしければ是非お読みいただければ幸いです。
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この本の装丁デザインは、『他者と働くーー「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)のデザインを担当してくださった川添英昭さんによるものです。
実物はパール箔を用いたデザインになっています。
原稿を読んでデザインをしてくださった川添さんのご説明によると、
・複雑な問題を丁寧に紐解いている本
・見る角度によって色(問題)が違って見える
という意味合いを込めてくださっているそうです。
素晴らしいデザインに心から感謝します。