B2Bマーケターは「いなくていい」から始めよう
この記事は「B2Bマーケティング Advent Calendar 2023」6日目の記事です。
B2Bマーケのアドカレでありながらいきなり不穏なタイトルですね。
The Modelが普及し、B2B事業においてマーケティング組織が置かれることは当たり前になってきました。でも、B2Bマーケターはそれを当たり前と思っちゃダメだよねというお話です。
ちなみに私は實川と申しまして、現在はプレックスという会社でSaaS事業の1人目マーケ & 全社広報をやっています。その前はReproという会社で10名規模のマーケ組織の責任者を務めました。B2Bマーケには5年ほど関わっており、様々なフェーズを経験する中での雑感を綴ります。先にまとめを書いちゃおう。
究極、マーケティング部がなくても商品は売れる
マーケティングは販売の拡大・効率化という機能であり、マーケティング施策の実施が目的ではない
一方「マーケティング部」はその性質上、かなり頑張って意識しないとコスパが悪化する落とし穴がたくさんある
よくある「営業との対立」だけでなく、「人を増やすことやマーケ施策そのものが持つ慣性」「事業フェーズの移り変わり」といった避けられないポイントで投資対効果が悪化しうる
データ分析はめちゃくちゃ重要だが、意思決定に足るデータが出るのは結構時間がかかり、かつ母数が少なくて判断しづらいという罠もある
マーケが最大限その価値を発揮するためには、経営者・事業責任者・営業とマーケが定量・定性両面のファクトによって目線をあわせ、腹を割って対話しつつ、マーケティング機能の存在意義を、都度事業のフェーズごとに問い直すことが必要
「マーケティング部がいま全くなくなったらどうなるのか」「ゼロベースでいま必要なマーケ施策とは何なのか」を思考実験してみると良さそう
「思い切りアクセルを踏む」タイミングはあってよいが、それが当たり前にならないようにしよう
マーケティング部のミッションとは人件費も含めたマーケティング投資に対するリターンの最大化であり、究極お金を使わないことももっと考えるべき
はい、まとめたのであとは自由に書きます。
究極、マーケティング部がなくても商品は売れる
マーケ・セールスという販売組織の目的はサービスを販売すること。リードがいくら取れたかではなく、いくら売れたの? が一番大事です。
営業より先にマーケティング部ができることはありません。営業だけで売ることはできるがマーケだけで売ることは(だいたいの場合)できない。
営業だけでもサービスは売れるが、営業だけではカバーできないリード獲得や認知獲得・関係維持の施策が必要となり、マーケティング施策が実施される。そして、それをより効率的に行うために「マーケティング部」という組織ができます。
はじめは効率的にマーケティングを行い、事業を加速するために作られたマーケティング部ですが、実はその構造上、油断するとパフォーマンスが落ちていく落とし穴がたくさんあります。
組織は自分を守ろうとする(よくある営業部との対立の話)
The Modelを意識して組織を作った結果、営業とマーケが対立してうまくいかない、、、というのはよくある話ですが、これは組織の自己防衛本能によるものだと考えています。
部として成立した以上、その組織はチームメンバーを守り、予算を確保しなければなりません。計測可能・コントロール可能な指標をKPIに設定し、それを達成することをひたすら目指した結果、隣接事業部との分断が生まれ、全体最適が図れなくなる。
この話は語り尽くされている気もするので、ここでは深く語りません。
マーケティング部の「慣性の法則」:効率化のための採用によって、逆に小回りが効かなくなる
マーケティング部には「慣性の法則」が働きます。
成果を出したマーケティング部は、よりリード提供数を増やすため、人材を採用して施策規模を増やしていきます。例えばセミナーで一定の成果がでたら、セミナーの専任担当を雇い、月間のセミナー本数を増やせるようにしますよね。
こうして組織化していくことで特定の業務は効率化するわけですが、反面、戦略の転換や新たなチャレンジに対しては動きが取りにくくなっていきます。一つの業務に特化した人が器用に別の業務に対応していくのは結構難しい。極端な話ですが「この人を採用したのだからこういう業務は一定量回さなければいけない」みたいな事情も、一部発生するかもしれません。
マーケティング施策そのものにも慣性が存在する
大規模イベントなどは準備に半年〜1年かかるのはザラですし、オウンドメディアやYouTubeなどは一度始めたらすぐにやめることは困難です。
このようにB2Bマーケティングは施策そのものも小回りが効きづらい側面があり、慣性を強固なものにしています。
事業フェーズの移り変わりによって、やるべき施策は変わってくる
一方、マーケティングでとるべき戦略・戦術は一定ではありません。市場の成熟度や競合の状況、自社の状況によって常にベストの施策は揺れ動いており、マーケ組織はそれに機動的に対応すべきです。
マーケティングフェーズについてはグロースXの山口さんの『マーケティング思考』にてわかりやすく解説されています。
この事業フェーズの変化は短期的には気が付きにくいだけでなく、「ひたすら施策を回すモード」に入り慣性の働いたマーケティング部では、この変化への対応がしづらくなっていきます。
データは超大事だが、意思決定に足るだけのデータは遅れてやってくる & 母数が少ない
じゃあその市場把握はどうするの? というところについて。マーケットへのアンケートやらシンクタンクの調査やら色々あるでしょうが、一番解像度が高いのはやはり自社のマーケティングデータ。
DIGGLEのYoshiさんのように仔細にデータを可視化できると最高ですね。各種施策の数値の反応や投資対効果を見て、過去との変化を見ていけば色々と想像することができます……ね。理論上は。
でもですよ。結構な割合のB2B SaaSは基本的に足が長く、ファーストタッチ→商談→成約までに1~2年かかるなんてことも珍しくないわけです。そうすると確定的なデータが得られるまで待っているうちに競合に先を越された、ということもあり得る。
しかもターゲットの母数も少ない領域で戦っていたりすることも多く、このデータは統計的に信頼できるの? という疑問がのこり、現場営業の感覚との合わせ技で意思決定せざるを得ないということがままあります。
データがないと本当に勘だけの意思決定になるので絶対必要なのですが、データだけで決めきれないというジレンマも抱えているわけです。
敢えて方策を述べるなら、ちゃんと可視化されたデータを経営者・事業責任者・営業と一緒に眺めることで「同じファクトを見ている」ことで目線を合わせつつも、定量データだけでなく定性的な面も合わせて忌憚なく議論し、意思決定できる状況を維持することが非常に重要だと考えます。
そのうえで、状況の変化し機動的に対応できるマーケ組織であるためには、マーケティング部およびマーケターのスタンスとして
マーケターは「いなくていい」から始めよう
というのはどうかな、と考えています。
冒頭で伝えた通り、究極「マーケはいなくてもモノは売れる」わけです。マーケ組織が大きくなるほど売上が立っているサービスならなおのこと、逆説的にマーケがいなくても指名検索や既存顧客からの紹介とかで結構売上いけちゃう、、という会社も少なくないはず。
だから敢えて考えてみましょう。「いまマーケがいないと本当にできないことは何か?」
マーケティング目標があり、予算が組まれた状況では、予算を使ってひたすら施策を回すことが当たり前のように感じるかもしれません。しかしそれは今までの積み重ねの結果であり、実は当たり前ではないのです。
所与の施策を当たり前と思わず、常にゼロベースで戦略と施策を考え続けられる。こういうマーケメンバーが揃っている事業はめちゃくちゃ強いでしょう。結局最後、精神論みたいになっちゃいましたが。
LayerXの伊藤さんが言っている「越境が必要」というのは、こういうゼロベース思考をするための前提条件として、越境的な素養が必要であると私は解釈しています。
アクセルを踏むときはあって良いが、大きな慣性が働くので要注意
winner takes allのマーケットではときにアクセルを踏むことも重要です。一時的に思い切り広告予算をかけてシェアを伸ばさなければ、勝ち目がなくなるシーンもあります。
一方で強くアクセルを踏むと大きな慣性が働きます。施策の検証方法を決めずに突っ走ってしまうと手痛い損失を生みかねませんし、マーケ部のなかに「お金はバンバン使って良い」という雰囲気が流れてしまう危険性もあります。
アクセルを踏むのは良いが、「いつまでにどう検証するのか」を短く切り、こまめに振り返りつつ、部内には「この投資は当たり前ではない」と伝え続けることも重要でしょう。
予算を極力使わない仕掛けをもっと考えてもいいよね
マーケティング部のミッションを適切に考えるならば、「リード数の最大化」ではなく「(人件費も含む)マーケティング投資へのリターンの最大化」でしょう。
であれば、コストを掛けてリードを生むのを当たり前と思うのではなく、コストを極力かけない売上アップの方策をどんどん考えるべき。いわゆる「マーケティング施策」の枠に収まらないかもしれないですが、それでよいのです。
プレックスで最強のマーケチームを作りませんか?
私はいまプレックスという会社のサクミルという建設DXサービスの1人目マーケター(& 全社広報)を担っています。プロダクトがまだ若い今のフェーズはまさにゼロベース思考がひたすら必要な環境。2人目・3人目としてジョインし、最強に柔軟で機動的なマーケチームを作りませんか? 興味のある方は實川までDMください。
これが採用ピッチです
B2Bマーケアドカレ、明日は才流の小島さんによる「新規サービスを営業組織に売ってもらう方法」です!お楽しみに!