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【書評】会社は頭から腐る 冨山和彦著

こちら、2009年に書いたレビューの加筆・修正版となります。

この本に出会った当時、私は30代後半。それなりに社会人経験を積み、中堅と呼ばれる立場。血気盛んで、根拠のない自信に満ち溢れた時期でもありました(汗)。

それまで、モヤモヤと感じていた会社という組織の本質が、一点の曇りも無いほど鮮やかに言語化されていて、脳天をたたき割られたごとくの衝撃を受けたことを想い出します。

冨山氏は、旧産業再生機構の最高執行責任者(COO)としてカネボウ再生に辣腕を振るった方。大手企業の社外取締役や政府の各種委員会の委員としてもご活躍されています。

冨山氏の主張の原点は、1960年代に確立した日本型経営モデルは、既に時代遅れになっているにも関わらず、従来のモデルに固執し、現在の環境に相応しい形に対応できていないというところにあります。

1960年ごろ、私が生まれて以降ですね、そこからは大量生産・大量販売の時代、改善や改良が大事にされ、「欧米に追いつけ追いこせ」でキャッチアップするということでやってきました。それで、さあ「欧米に追いついた追いこした」、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言っていたら、結局、日本の成功モデルはすでに古びてしまっていた。

出典:会社はやっぱり、頭から腐る 社長人事を変えなければ生き残りはない(朝日新聞Globe+)

そもそも、日本式企業の仕組み、つまり終身雇用や年功序列といった高度経済成長期に作られた会社の仕組みは、ネットワーク化が始まった1990年代で終わっていなければいけないものでした。それが、30年も引きずって今日に至ってしまったのは、会社の仕組みに合わせて社会保障を含めた社会全体のシステムが作られていて、違うシステムに移行できなかったからです。

出典:“日本式企業”の仕組みは溶けてなくなる。問われるのは個人の武器
(VENTURE FOR JAPAN)

さて、話を「会社は頭から腐る」に戻します。鋭く言語化されたキレキレの記述に、ひたすら感化された書籍。

当時、本書を新幹線の中で読み、断片をひたすらtwitterに投稿。発信と言うより、自分へのメモとして投稿していた内容をnoteにてご紹介させて頂きます。

人はインセンティブと性格の奴隷である」。だから、小賢しい組織論やスキル論よりも「人間集団を正しく動機づける」ことの方がパワーを生み出す』

人間の価値観、行動洋式そのものを変えるのが真の経営者だ、という人もいるが、実態は、そこにいる個々人が本来持っていた個性ややる気に対して働きかけた結果、モチベーションと組織能力が飛躍的に高まった

経営者としての私のスタンスは、まずは人間を動機づけているものの本質を理解する努力を行う。そこに的確に働きかけ、勇気づける。本人が相互に矛盾するインセンティブの相克に苦しんでいるのなら、それを整理して、あるいは自分自身がその一部を引き受けて、その人を葛藤状態から解放すべくベ ストを尽くす。

部下は上司の「見たい現実」を報告するように動機づけられている。ミクロの次元では「理に適った」行動が、全体としての転落を加速していく。

『ホワイトカラーおやじ組織で、やたらと会議が大人数になるのは、意志決定に関する責任が自分ひとりにふりかかって来ないようリスクヘッジをするインセンティブが働くから。こうした「相互安全保障」を目的とした会議や根回しの業務量は、人と人の組み合わせの数に応じて増えていく

そもそも、経営が送り出すメッセージに対して、ただちに心から反応し、動機づけられて行動する人間は多くない。経営者がそのメッセージをどこまで本気で送っているのか、それに素直に乗っかることが自分にとって得か損か、自分にとって気分のよいことか悪いことか。まずは、値踏みモードに入る。

このような営業提案の話は、現場だけでなく、トップやミドルなど、同じ企業のさまざまな階層に話が来るものである。担当者としてみれば、自分が断ってすむのではなく、上司やトップから同じ案件が下りてくる可能性も予期しなければならない。仮にトップ営業を受けた企業の上層部が前向きに捉え、現場にこの案件を降ろしてきた場合、担当者が、以前に無碍に断ってでもいたら、上層部から叱責を受けることになる。このようなリスクを回避するために、担当者はアリバイづくりに励むのである。つまり未知な領域に積極的に足を踏み出そうとはせず、前向きに検討した「アリバイ」をつくり、無難に処理しようという本能が働くのだ

会社員として働いた経験のある方は、共感する点も多いのではないでしょうか?あるいは、苦い経験を想い出したり、「あの当時これを知っていれば」ということかも知れません。

10年以上も前の書籍ですが、現在でも十分通用する内容であること間違いなし。

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