日本人英語学習者の壁: 英語力の差を生む衝撃の事実、あなたは知ってた?

仰々しいタイトルですいません。では、まずはちょっとクイズからです。

次の日本語を英語にしてみてください。いちおうヒントは出しましたが、無視してかまいません。まずは難しく考えず、すっと頭に浮かんだ英語でOK。

① 乗車口には立たないでください!


ヒント:とある乗り物内で見つけた掲示。たしかオーストラリアはメルボルンだったかな。Don'tは使ってませんでした。Pleaseで始まります。

② この先関係者以外立ち入り禁止!


ヒント:これもオーストラリアのワイン工場の試飲先の奥のドアに貼ってありました。5文字です。beyond this point「この先」を使います。

③ (ホームパーティーの誘い)

   何も持ってこなくていいよ。


ヒント:なしで。実際に私がアメリカ留学中にクラスメートからかけられた言葉。

言い方はいろいろありますが、おそらく多くの人は、

① Don't stand the entrance, please. 

② You can't go in beyond this point.

③ You don't have to bring anything.

のような文を作るのではないでしょうか。もちろんこれでも間違いではありませんし、ちゃんと通じます。ただもっと適切な言い方があります。次が実際に使われていた英語です。比べてみてください。

① Please keep entrance clear.

② Staff only beyond this point.

③ Just bring yourself.

こういう英文がすんなり頭に浮かんだ人は、英語らしい物の見方、つまり英語文化圏で生活している人の対象世界の事態把握ができている人です。

この違いが、独学で日本だけで英語を勉強してきた人と、英語圏で英語を身につけた人の差が出てくるところでもあり、日本人英語学習者がぶつかる壁でもあります。

ある英語検定試験の面接官を長く勤めていますが、こういう英語がすんなりと口をついて出てくる人はほぼ例外なく、英語圏で生まれ育ったか、英語圏での生活が長い人でした。もちろん日本だけで勉強した人の中にもいないわけではありませんが、数は少ないと言えます。

では、解説です。

例えば③は、

             You don't have to bring anything.    vs   Just bring yourself.

同じ行動を表している表現ですが捉え方が違います。日本語では、「何も持ってこない」という「もの」を持ってくるのか持ってこないのかという「もの」にプロファイルしていますが、英語ではbring yourself「あなた自身を持ってくる」という、「あなた」という「人」そのものにプロファイルしています。

これは、ルビンの盃として知られている事態のどこの部分に焦点をあてるかで見えるものが異なって見えるという現象の一つです。

黒い部分に焦点を当てると向き合っている2つの顔が見え、真ん中の白い部分に焦点を当てると盃に見えますね。焦点の当て方で同じものが異なって見えるという現象です。

①なら「立つ」という動作をする「人」に意識が向くのが日本語。一方、英語は「入口」にフォーカスしています。「そこをモノを置かずクリアーな状態にしろ」と。しかもお客に対しては、Don'tで始めることはまずありません。上から目線の指示・命令の聞こえるからです。

②なら「関係者以外は入ってはいけない」という「関係者以外の人」に焦点が当たり、一方、英語では逆に「関係者」に焦点が向き「関係者だけ入ってよい」と。

③は先ほど述べたように「もの」ではなく「人」にフォーカスしています。

このようにどこに焦点をあてるかで、違った言語表現になるというわけです。またもう一つポイントがあります。単に対象世界の把握の違いだけではなく、事例からもわかるように日本語話者が作る直訳された英文には、そのすべてにnotという否定語が入っている点です。notが入ると強く、きつく響きます。

一方、英語には、notが一切含まれておらず、否定的な内容を肯定文を使って表しています。言われた方も角が立ちません。ここに気づくかどうかです。

発想的になじまない英語に出くわしたとき、こういった「事態把握の違い」と「否定vs肯定」という視点で見てみるのも「気づき」が得られてお勧めです。壁を越える一助になるんじゃないかと。

さらにつけ加えるなら、日本的直訳の英文は語数が多く長いです。人間は元来怠け者。言葉の経済性が働いて、同じことを表現するのに少ない言葉で言えるのならそちらを選ぶという習性がある点も見逃せません。長いと対話の”間”が乱れるからです。卓球のように短い言葉をポンポンと軽快にターンテイキングをするのが英語の流儀です。

というわけで、こういう見方で英語と接するとまた新たな発見があるんじゃないでしょうか。


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