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「男の生きづらさ」とマンガ『男との付き合い方がわからない』について

元イさんなのだ。ほとんど無料でおまけだけ有料なのだ。


本を読み過ぎたのだ

ここしばらくは本を読んでいて、頭に入る情報の量が急に増えすぎてしまい知恵熱を出していたのだ。インプットとアウトプットはバランスよくした方がいいのだな。もう少し若い頃は消化も早かったように思うのだが、もう少しゆっくり嚙むように読めばよかったと思っているのだ。

その頭がパンクした原因の本がこれ『心を病んだらいけないの?』なのだ。



その直前に読んだ『男との付き合い方がわからない』で、「男の生きづらさ」についてこれまでもやもやしていたものに視界が晴れるような気持ちになったのだ。

↑ 読後すぐ書いた衝動的な感想文なのだ。


視界が晴れるような気持ちなったのだが、その次に読んだ『心を病んだらいけないの?』はそれ以上に「今の日本に住む人の生きづらさ」について重いボディブローを何発も喰らった気がしたのだ。文字通り腹と脳と心をえぐられたのだ。

「この本読んで心を病んじゃうよ」と思うくらいには暗い気持ちになる一冊で、Twitterでたくさん放流したのだが、ちょっとnoteにはまだまとまらないのだ。


なので今回は手前に戻って『男との付き合い方がわからない』の「男の生きづらさについて」をまとめようと思うのだ。『心を病んだらいけないの?』の内容も適宜差し込んでいくのだ。


『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』は執筆中なのだ!もうしばらくお待ちくださいなのだ。



女には見えない、男にも見えない「男の生きづらさ」について


『男との付き合い方がわからない』この作品では序盤、女の生きづらさについて語られているのだ。まさにタイトルの通り、男にどう接されてきたのか、その抑圧や、心無い言葉、扱い、どう対応していいかわからないし、自分の尊厳も失ってきてしまってまさに「男とどう付き合っていったらいいのかわからない」のだ。


しかしこの作品の特殊なところは、そういった「女の生きづらさ」を知ってほしいという形でとどまらず、この「付き合い方がわからない男について」も書かれているのだ。


この作者の水谷緑さんは「もしかしたら男も生きづらいんじゃないか」「男が何を考えているのか知りたい」と思うようになり、「男の生きづらさ」について取材をすることになるのだ。すごい、ここがすごいのだ。敵を知り己を知れば百戦危うからずなのだな。


元イさんも非モテをこじらせていた時にやった事の一つに「女を知る事」を実践していたのだ。といっても最初はオタク仕草として「女性向けの漫画」を読み漁り、アラサーにして風俗通い、それと並行してTwitterで友達を増やしてオフ会をしまくり、普通の友達付き合いや最終的にお付き合いをした方を通して女性の事を知っていったのだ。

そして今は男の生きづらさについても興味があって調べているところなのだ。


「男の生きづらさ」は男にも見えない

この本の序盤は作者さんの「婚活地獄」。男性との付き合い方がわからない、噛み合わない、上手くいかないなかで、「たぶん東大卒の大手企業勤務の高田さん」と出会い、お付き合いするのだ。

「絵にかいたような女らしさ」を自分に押し付けてくる高田さん、という表現で本文中で活躍する高田さんなのだが、デート中に不穏な発言をするのだ。


「緑は将来、家が欲しいとか考える?」
「ぼく一流企業に勤めているけどさ…会社がつぶれないとは言い切れないから」
「クビもありえないわけじゃないし」


これを聞いて水谷さんは「経済的に依存されるのを警戒してる?」とその時は思ったようなのだ。漫画家の仕事は続けると伝えたら

「そのうち、ぼくの年収も越されちゃうかもね…」

と物寂しそうな顔をして答えられたようなのだ。

またその高田さん35歳、高田さん35歳は

・シャンディガフを知らない
・休日はいつも空いてる、友達と遊んだりはしない
・休日は寝るか、図書館で本読むか、区の無料のジムに行く
・「幸せを感じる時」は新しいiPhoneが出たとき
・6歳の頃が一番幸せだった。ドッジボールが楽しくて、給食がおいしかった。
・今も当時のドラクエの動画を見て泣く事がある。

などというエピソードが本文中で語られているのだ。

通りすがりに撮影した犬の写真を「見て、かわいいの」と見せたら「飼い主に撮影の許可は取ったの?」と一言目に返すような会話スタイルの人なのだそうなのだ。

水谷さんはこの時「ことごとくかみあわない…」という者だったのだが…

元イさんの印象はもう「つらそう」の一言なのだ。応対する水谷さんがではなく高田さんが。高田さんが生きづらそうなのだ。

「ぼく一流企業に勤めているけどさ…会社がつぶれないとは言い切れないから」
「クビもありえないわけじゃないし」

このセリフ、水谷さんは「経済的に依存しないでほしい」というとらえ方をしていたのだが、元イさんは違ったとらえ方をしたのだ。「自分は万全にあなたを養い切れると保証できない」という高田さんの弱音に見えたのだ。このセリフは元イさんも奥さんに言った事がある!と思い出してしまったのだ。


元イさんは別の男が同じことを感じて、考えている人がいるなんて思いもしなかったのだ。



弱さを晒せない、悩みを相談できない男

その後、水谷さんは婚活地獄に疲れ果て、マンガ執筆のための取材を通して男の生きづらさについても興味をもち始めるのだな。

孤独死の男女比は8:2

ひきこもりの男女比は8:2


自殺の男女比は7:3


これらの比率を知って「男性の方が病みやすいのは何故!?」となったのだ。

しょっぱなから仕事のストレスからうつで休職中の人に取材をしているのが、双極性障害の元イさんにもぶっささったのだ。

・親に反抗したことが無い、上司にも反抗できない、奨学金の返済あり。
・自分が何でも我慢。自分が謝れば場が全て丸く収まる。
・誰かに相談したりしたことがない。心療内科にかかって初めて人に相談した。


「親に反抗したことが無い、自分が何でも我慢、心療内科にかかって初めて人に相談した」ここら辺は自分も刺さるのだ。

次の人は婚活で出会った人、「困ったときに相談できない人」なのだ。

・デートに何を着ていくか、何を話せばいいかわからない。
・自分でネットで調べた、それを男友達に相談できない。

と語るのだ。また

・「こんなことも知らないのか」と思われそう。
・相談したら「負け」
・友だちであっても「競争相手」という面があるかもしれない

とも。


「相談ができない」元イさんの実体験でも、Twitterで十年、アライさん界隈で一年いて見てきたことを通しても、「男は相談できない」「したら負けだと思う」という感覚はよくわかる、わかってしまうのだ。

ひとまず話を先に進めるのが。


「男だからがんばらないと」ふんわりかけられる呪い

9歳の息子に「男の子だから大学に行かせてあげないと、夏から塾にいれるつもり」と語る筆者のママ友。にこやかな笑顔なのだ。娘は塾が遠いから、塾に行きたいと言っても通信講座かな、と語るのだ。「女の子だからそこまでがんばらなくてもいいよね」

どっかで見た話なのだ。Twitterで軽く燃えてた気がするのだ。

「男の子なんだから転んでもないちゃだめ」
「男は強くあれ」
「女の子は弱いから守れ」
「稼げ、泣くな」
「責任をとれ、迷惑をかけるな」

全てふんわりと自然に男にかけられる呪いなのだ。

また、息子と二人暮らしで会話が無いと言う中高年の男性が困りごとを話し合うワークショップにて「自分には困ったことがない」と言うエピソードも本文には出てくるのだ。

「息子と二人暮らしで会話が無い」事は困った事ではないの!?と水谷さんはたいそう驚かれたそうなのだ。元イさんもびっくりなのだ。

しかし、困りごとではないらしいのだな。


「男にかけられた呪い」は男が自分の弱さを認識すること、男が自分の弱さを認める事をきっと妨げるのだ。感情を押し殺し、感情を麻痺させないと「呪い」のもとでは生きていかれないと思うのだ。

元イさんも「呪い」で追い詰められて、無理をして、いろんなものを失い、病気になって自分の弱さを受け止めて、吐き出すことになったのだ。だからよくわかる、元イさんが壊れる直前にはすべての感情を殺すようにして生きていたのだ。ぶっこわれていたのだな。


「男らしさは幻想」

薬物依存症の民間リハビリ施設の施設長に水谷さんは取材に行った時に聞いた言葉なのだ。運営側も薬物依存症の回復者から構成されているそうなのだ。

施設長は中学生のころに人とうまくなじめない、バカにされる、軽く扱われるといった境遇で不良の先輩に受け入れられて薬物にハマってしまったのだ。薬物で気が強くなり不良として荒れて、薬物欲しさに犯罪に走り、逮捕されてリハビリ施設に入ったそうなのだ。

リハビリ施設での同じ治療者との出会いから薬を使った自分の弱さを正直に告白できるようになり、その弱さを受けてとめてもらい立ち直ることができたそうなのだ。

若くして薬物依存症となった施設長は、暴走族の元総長だったそうなのだ。その施設長は語るのだ。

「自分が信じるものをみつけていくんだ」
「男らしさ」は幻想。回復の妨げになる。
「男は細かいことは気にしない」
「しゃべらない方がかっこいい」
「男はマッチョになりたがる」
「男は一家の大黒柱」

そんな「男らしさ」がある回復はありえない、

そう語るのだ。


暴走族の元総長という立場の人が、病まないためには「男はマッチョであれ」という事を否定するのだな。




「理想の男」自分は“こう”でないといけない


「男は女より理想の自分と本来の自分とのギャップが激しいのかもしれない」「ギャップを埋めるために病む」そう水谷さんは取材を通して思ったそうなのだ。

ここで『心を病んだらいけないの?』に話題をうつすのだ。

この本でめちゃくちゃ出てくるキーワード「条件なしの承認」にいついて、なのだ。

条件なしの承認とは、「いい成績をとったから、子供を褒めてあげる」「一流企業で高い給料をもらってくるから、夫を愛する」という「条件付きの承認」とは違ったものなのだ。


もともとはカウンセリング、依存症治療、引きこもり問題についてその「条件付きの愛情」の条件を外さないと治療が始まらない、というような話の流れで出てきたのだが、この本はそこでとどまらず話が展開されるのだな。


おそらく、男が生きづらさを感じ、なぜ心を病むのかというのは「条件付きの承認」の「条件」が非常に高くなってきているのではないか、という事なのだ。(ちなみにこの本では女性も含めて、社会全体が人に対して求めるものが高く、達成するのが難しくなってきているとあるのだ)


そして「条件なしの承認」を、愛情よりももっと緩い「友情」なのではないかと定義してるのだな。「愛情」には相手を所有することや、相手と一体化を望む感情でもあるので、治療上では手放しで歓迎できないそうなのだ。

非モテが、この「条件なしの承認」を求めて恋愛をしようとしてメンヘラ化とか相互依存に陥ることは割とあるあるな気もするのだな。


承認は、「独立した個人として尊重し、肯定する事」。それを条件抜きで、「条件なしの承認」という事なのだな。

「君がどんな人間だろうと、君は君のままでいいし、俺たちは友だち、仲間だ」

というやつなのだな。


しかし、ここまでで、なんとなく連想できると思うのだが、男が自分を承認する事に対して課した「条件」は、どれくらいのものなのか?なのだ。自分自身に課した「条件付きの自己承認」なのだ。


自分に対して課した条件こそ、呪いではないかと思うのだ。他人が、親が、社会が課した呪いなのだ。理想の強い男にならないと、自分は承認されないという気持ちなのだな。誰にも相手にされない、落ちこぼれてしまう恐怖なのだ。

しかもこの本にはさらに恐ろしいことが書いてあるのだな。ここまででページが1割も進んでいないのだ。


空気が支配する国

『心を病んだらいけないの?』にはさらに恐ろしいことが書いてあるのだ。

↑ この本の著者、山本七平の思想に触れているのだな。

この著者の思想をざっくりいうと日本の最終的決定者は「空気」である、というものなのだ。まだ読んでいないのでこんど読んでみるのだ。

『心を病んだらいけないの?』の対談2名のうちの歴史学者の興那霸さんは、山本七平の思想を解釈して日本を「ちゃんと機能している人間」以外を非常に酷に扱う面がある、と語っているのだ。

「空気」が支配し、「ちゃんと機能している人間集団」を信仰する国において「条件なしの承認を与える場」が非常に乏しくなっている、と。


ざっくりまとめると、「理想の男」「男らしさ」を獲得して「ちゃんと機能している人間」にならないと、自分は集団からハブかれて誰にも相手にされなくなる、孤立してしまうのでは、という恐怖が日本人には共通してあるんだと思うのだ。

つまり村八分なのだな。ここまで読んでどうしても、村八分と思わざるを得なかったのだ。いじめについてもそうなのだ。おそろしい。


男が怖がっているのは村で役立たずになって、誰からも相手にされずに村八分になる事の恐怖を、リアルタイムで味わっているんじゃないかと思ったのだ。

津山事件をご存じだろうか。

これは村八分の末に村人を惨殺して自決した事件なのだ。

↓ 山岸涼子さんのマンガ作品『負の暗示』は、この事件をマンガ化したもので非常に読みごたえがあっておすすめなのだ。


また秋葉原の通り魔事件や、近年の引きこもりによる通り魔事件などもあって、津山事件ほどの身近なところでの疎外はないものの、どこにも属せない、つながれないという事と、社会から見えないところに追いやられていたり、だれにも顧みられていないという感覚は強まっているように感じるのだ。

ネットで見ても「ちゃんと機能している人間」になれなかった人には叱責、誹謗中傷が飛んでいくのだな。ここらへんはもう、いやになるほどに『心を病んだらいけないの?』で解説してあるし、それを見ない日はないというほどにSNSは荒んでいるのだ。

誰が誰を火あぶりにするかで闘争する場にもなっているのだな。おそろしい。



病まないために、自分を守るために

生きづらすぎる世の中なのだ。男にも、女にも。

「ちゃんと機能している人間」じゃないと非難される、疎外されるというのはつまり「理想の国民としてのモデルケース」にそってないとダメだという抑圧なのだな。つまりそうなれなければ下等国民というわけなのだ。いつのまにやら「上級国民」という単語が出てきてしまった今ならよくわかる概念なのだ。

そんな「理想の国民」になって承認されなければいけないという、「条件つきの承認」を求めるのはやめて「条件なしの承認」を得よう、というのが「男の生きづらさ」に対する答えの一つだと思うのだ。


「人とつながろう」「友人をつくろう」と重ね重ねTwitterでもnoteでも書いてきたのだが、『男との付き合い方がわからない』『心を病んだらいけないの?』の2冊を読んで、ますますその思いが強まったのだ。条件なしの承認関係を作るのだ。


どうしたら「人とつながろう」というのが簡単に実現可能になるのかはわからないのだ。わからないのだが、まず自分が誰かにとっても「条件なしの承認」をしてくれる人になるのがスタートなんじゃないかと思うのだ。

自分が誰でも承認できるかというとそれは難しいのだが、Twitterでなら遠く離れた年の離れた人とでも、誰とでもつながれる時代なのだ。

尊敬できるところがある、楽しいと思える、好きだとえるというような「緩い条件」で相手を承認していって、それをきちんと相手に伝えていけば、気の合う人が見つかるんじゃないかと思うのだ。


そうやって自分を中心とした気の合う人たちとのコミュニティを獲得することが「男の生きづらさ」も「女の生きづらさ」も軽減する助けになるんじゃないかと思うのだ。小さな小さなコミュニティでかまわないので、そこで弱い自分も全て認めて受け入れあって、悩みを語り合ったり一緒に過ごすことを楽しむのだ。


日本社会というでっかい村で、だれを村八分にするかの魔女裁判が毎日開催されてるのだ。そういう今だからこそ「あなたにここにいてほしい」と言い合える人たちとつながっていければ、と思うのだ。



ラストに宣伝なのだ。人とつながるための心構えとしての『人を動かす』と人とつながる直接のツールとしての会話指南『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』なのだ。そしておまけの有料投げ銭コーナーなのだ。



ここからはおまけの有料投げ銭コーナーなのだ。元イさんが「条件付きの承認」を求めて「理想の男」になるべく無理をしていって壊れた話でも書くのだ。落ち着いてはいるものの現役の双極性障害持ちなのだ。壊れていく過程を書くのだ。



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