「普通」と「憧れ」のギャップに苦しむ:マンガ「普通の人でいいのに!」
元イさんなのだ。
普通の人とは!?
Twitterで拡散され物議を醸したマンガ「普通の人でいいのに!」感想が多々出ていて、それも含めて大変面白かったのだ。
以前↑のような「普通のハードルが高すぎる人々」について記事を書いたのだが、このマンガではまた「別の普通」の話なのだ。
元イさんも楽しく読んだのだが、一部キレ散らかしてる人がいて、なんならこの漫画は作者の実体験と思って読んだ人がいて、主人公=作者の人格批判をするみたいな形になっていたのはとても気になったのだ。
まあ、それは置いといて
このマンガ、ヒロインは一部からサブカルクソ女というひどい呼称で呼ばれてるのだが、実在するのに多くの人の目につかない、見えざる人たちを可視化することに成功してるように思うのだ。
作者さんのコメントなのだ。
ここでは本当に詰んでる情けない女の詰みっぷりについて自分なりの解説や思ったことを書きつつ…
このnoteは非モテ男性に向けて書いているものなので、非モテ男性や同じくこじれた女性が少しでも恋愛や人付き合いがしやすくなるようなことを書いていこうと思うのだ。
この漫画は33歳、「経理で働いてそう」な女性が主人公なのだ。
趣味はこんな感じなのだ。サブカルです!という押し出しの強い感じなのだ。
そんなヒロインが、前の職場の先輩男性社員から食事を誘われるという「自然な出会い」から、このお話は始まるのだ。
ヒロくんなのだ。「普通」の男性35歳なのだ。
このふたりの不協和音…というかヒロインの空回りと葛藤と暴走がこのお話なのだ。
Twitterでも物議を醸した、初回のデートでいきなり炸裂させてしまったサブカル・こじれ仕草が下の2つなのだ。
映画詳しくない人にいきなりノア・バームバックという映画好きでもあんまり覚えてない名前を出すやつ、なのだ。
「イカとクジラ」「フランシス・ハ」「マイヤーウィッツ家の家族(仮)」「マリッジストーリー」などの監督なのだ。「マリッジストーリー」は昨年のアカデミー賞で話題になったのだな。
会話のキャッチボールでこんなすごく早くて曲がる変化球を明後日の方向に投げたら、相手がキャッチできるわけがないのだ。
会話は相手の守備範囲にボールを投げつつ、少しそこから外れるところも取れるか試しに投げてみて、守備範囲を探るとキャッチボールは楽しく捗るのだ。
参考ポイント:会話の受け答えは、相手と楽しい時間を過ごすためにするのが人と距離を縮めるためには正解で、なんでもバカ正直に答えるのはやめましょう、なのだ。
ここでも「そりゃ知らないか」というボールを投げてしまってるのだが…
Twitterで感想を漁っていて面白かったのが「どんな人がタイプ?」と聞かれて「こういう人がだめ」というダメなものをあげたのが良くないという意見があったのだ。おそらく本人のなかで「こういう人がいい」というイメージを持てていないんだと思うのだ。
恋愛をする上で自分の好きなタイプをある程度は想定しておくことは大事だと思うのだ。このヒロインの好きなタイプというのは、タイトルの通り「普通の人でいい」のだ。その普通の一つがホモソーシャルじゃない人なのだな。
参考ポイント:恋愛対象として好ましいタイプをある程度はっきりさせておくと、そういう人とどう巡り合うかなどもはっきりするのでおすすめなのだ。漠然としているとこのヒロインのように流されて自分を見失って暴走することになるのだ。
普通じゃない要素が無い人が普通の人、ということになるのだが、その自分の「普通の人でいい」という気持ちがただの自己欺瞞ということは読んでいくとわかるのだ。
自己欺瞞、自分にうそをついて誤魔化してるのだ。
アプリでの出会いは嫌だ…普通の人に普通の出会いが良かった…ところが
そう、これが普通に出会った普通の人、ヒロくんなのだ。こちらの画像も物議を醸したのだ。ちなみにヒロくんは5年付き合った同棲もした彼女と3年付き合った彼女と半年付き合った彼女がいたのだ。3人も…!!いったいどんな手を使ったのだ!?
参考ポイント:余談なのだがぶっちゃけた話、普通に彼女作れて同棲もできている時点で彼は「普通」なのだ。少なくともヒロインにとっては、良かれ悪かれ。そしておそらく彼こそ非モテでこじれてしまった人々の知らない恋愛メソッドを持っているのだ。
「普通に恋愛してきているヒロくん」を普通の相手と認識して、おそらく「普通の恋愛、普通の結婚ルートに行くのかな」と葛藤したんだと思うのだ。
ちなみに作者、冬野梅子さんの前作はこちら。
リンク先のさらにリンク先から読めるのだが、タイトルは「マッチングアプリで会った人だろ!」なのだ。普通の出会いが良かったのに、出会いが無いからマッチングアプリで会ってみるという内容で「普通の人でいいのに!」よりももっと荒削りで初期衝動爆発!という濃い内容なのだ。
「普通の人でいいのに!」のヒロインは、「普通の人」でいいといいつつ、他に好きな男がいたのだ。
大好きなラジオ番組の放送作家、伊藤さん。伊藤さんに対する好意は唐突に判明するのだ。予備動作なしにいきなり告白するという形で。
参考ポイント:イキ告はダメゼッタイ!なのだ。告白は関係性の確認作業。関係性が築けていない、進んでいない状態での告白は「深いつながりが両者にない」という事を確認するだけで終わってしまうのだ。
大好きなラジオの放送作家・伊藤さんは、同じくヒロインの大好きな新宿三丁目のスナック「タヒチ」の常連で友人なのだ。
「放送作家の伊藤さん」「スナック・タヒチとその常連たち」がヒロインにとっての素敵で魅力的な世界なのだが、それと比べて自分の世界を「退屈な普通の世界」と断じてしまっているのだな。もちろん「普通の人」のヒロくんも、彼女の「退屈な普通の世界」の一部なのだ。
「放送作家の伊藤さん」と「タヒチの常連の一人」が結婚したのにショックをうけた彼女は、「普通の人」ヒロくんと交際することを決めたのだ。
ところが「退屈な普通の世界」の一部になったヒロインは、事あるごとにモヤモヤを溜め込み、「サードプレイス」なんて呼んだ「素敵な世界」スナック・タヒチの友人や、他の友人の全てに見下されていると感じてしまうのだ。
参考ポイント:劣等感はつらいのだな、あんまり他人を上とか下とか決め付けると「自分は下よりは上だけど、上よりは下」という謎の心理に陥ってしまうのだ。この心理だと、下さえ見続ければ万能感に浸れるのだが、上を見たら最後、卑屈でしかいられないのだ。ヒロくんを見て優越感にひたっていても、その分だけ自己卑下する事になるのだ。
友人たちに当たり散らしたヒロインに、最終的にとどめをさしたのはヒロくんとのやり取りだったのだ。
対バンという単語に笑うヒロくん(どういう心理かは不明)
ラジオに投稿したハガキが採用された際に送られるシールを見たときにヒロくんが一言。
この2つはネットでの反応もでかかったのだ。
「いい趣味じゃん」に関して、自分の感想としては「普通・退屈な世界」の象徴のヒロくんが「魅力的な世界」の伊藤くんとラジオをたかが趣味と見下すな!という気持ちがあったんじゃないかと思うのだ。
参考ポイント:正直に言うと、考え方や価値観が違いすぎるヒロくんと「(自分の思う)スペックが釣り合うから」とか、「好かれたから、口説かれたから」で流れで付き合ったことがそもそもの失敗なように思うのだ。相手の「外側」を見て「内面」を見ずに付き合ってしまうのは、人間関係がこじれるもとだと思うのだ。
最終的に、ヒロインは「魅力的な世界の友人」がしそうな「ウラジオストクへ突発旅行」を敢行するのだが、準備不足で失敗し「クソださい」と自嘲するのだったのだ。
ダサいはダサいのだが、それでも脳内口だけ番長だったヒロインが「魅力的な世界」の住人になろうと暴走とはいえ動けたことは良かったんじゃないかとは、ここまで書いて思えたのだ。
ポイントおさらいなのだ
はい、ポイントおさらいなのだ。ヒロインを反面教師にした非モテ克服ポイントなのだ。
・会話はキャッチボール。相手との会話を楽しいものにするためには、ヲタ知識を披露して会話を詰まらせたりしてはいけない。
・好みのタイプはある程度自分の中ではっきりさせておいて、狙いを絞るのだ。美人・イケメンならだれでもとか、相手をしてくれたら好いてくれたら誰でもいいなどと思っていると、いざ付き合ってもうまくいかないのだ。
・あんなヒロくんでも彼女が三人もいたのだ。そのヒロくんが意識していた何か、習得していた何かを探し当てるのだ!
・いきなり告白(イキ告)はダメ絶対!なのだ。もう事実上付き合ってるんじゃないかというくらい仲が良くなった時の、最後の確認が告白と心得たほうが良いのだ。
・他人と自分を比べすぎて上と下を作らないと安心できないような強いコンプレックスを抱いていると、そもそも人付き合いに支障が出るのだ。なんとか折り合いを自分の中でつけようなのだ。
・相手の考え方や価値観にきちんと向き合わず、上辺だけで相手を見て、なんとなく流されて付き合うと関係性はそのうち破綻するのだ。
以上なのだ。書いていて、これってなんとかできるの?という気持ちがするポイントも何個かあるのだが、一個ずつ各個撃破していこうなのだ。元イさんも一つずつ紐解いていきたいのだ。
ヒロインについての軽い雑文をここから少し書くのだ。
このヒロインは他人の内面に向き合ってない
とにかく気になったのは、このヒロインが友人知人たちの浅い所しか見てないんじゃないか?という印象なのだ。たまに出てきた相手の内面といえば「自分を見下している」という感想なのだ。
他人に対しての感想は「うわーすごいな憧れる」「素敵」と思うようなタヒチの面々と、一言二言で「ムカつく!」「嫌なやつ!」と下げるホモソーシャル男や、チャラ男、そして「普通」のヒロくんなのだ。
とにかく客観的、俯瞰的であろうとするヒロインは他人を「イケてる、素敵」か「ダサい、嫌だ」と評価を下すのだ。「イケてる」と「ダサい」のどちらでもない「普通」に自分を置いているつもりなのだが、ヒロくんを通して「(自分目線で見ると)ダサい自分」を突きつけられたんじゃないかと思うのだ。
本人の気の持ちようだと思うのだが、うまくいかないのだな。憧れが強いと。
ヒロくんとは趣味や価値観が違いすぎてうまくいくはずはなかったと思うのだが、その価値観の部分をヒロインは見なさすぎて、その内面のギャップはたいしたことではないと思っているのが悲劇だと思ったのだ。
今回の「会話のキャッチボール」に関しては、かなり長文の有料記事の第2弾を執筆中なので、それを読むか、記事で紹介した本を読めばお役に立てると思うのだ。少々お待ち下さいなのだ。
第1弾はこちらなのだ。
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