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オフィシャル髭男dismのUniverseが韻踏んでアニメの世界観まで踏襲して欲張りセット

ドラえもんのび太の小宇宙戦争の主題歌、オフィシャル髭男dismのUniverse、いいですよねぇ。

オフィシャル髭男dismといえば、ブラックミュージックなノリを軽やか音楽に乗せてて最高ですけど、僕としてはさらっと韻を踏んでるところがまた素晴らしいと思うんです。

※ていうか前にも書いてる

ガッチガチに踏むのでなくあくまでグルーブとして踏んでるところが実に気持ちいい。J-POPの韻のお手本のような使い方だと思ってます。

それで、オフィシャル髭男dismのUniverseがこれまた踏んでるわけですよ。

ところで、最近のアニメソングってアニメの世界観を踏まえた歌詞でさらにJ-POPとしても聴けてしまうのでかなりレベル高いと思うんです。

所謂、昭和はもうアニメのタイトルがそのまま使われているような歌詞でした。

平成になり、るろ剣やスラムダンクに代表されるように、もはやアニメと関係ないタイアップ曲の時代もありました(ここらへんはカラオケ全盛ということもあるかもしれません。)。

そして今、例えば鬼滅の刃主題歌の紅蓮華もそうですし、呪術廻戦もしかり。曲などアニメを抜きにしても歌詞が成り立ち、尚且つアニメを軸にするとより一層深みがます曲が多くなっております。

※二番は善逸イメージだとか


さて、そんなハイレベルになっているアニソンの状況で、映画ドラえもんの主題歌といえば、今や本家の主題歌にもなった星野源ドラえもんが記憶に新しいでしょう。

ドラえもんを歌詞に使いつつも、さらに登場キャラクターのイメージを散りばめてかつ過去曲のサンプリングまでして、POPな名曲にするという半端じゃないクオリティでした。

さらには昨年のMr.ChildrenのBirthdayとハードルが爆上がりです。

※勿論映画のイメージにもあってかつ名曲

そもそもドラえもん好き芸人である麒麟の川島氏も、初代のび太の小宇宙戦争の主題歌、「少年期」も名曲で、違う人が歌う曲はどんなもんじゃい、というようなことをおっしゃってました。

これほどのプレッシャーで、オフィシャル髭男dism大丈夫なのかと心配しましつつ、聴いたUniverse。

心配無用の名曲でした。

麒麟の川島氏も「ええやんけ。」とにんまりしてましたね。

その素晴らしさは他のメディアにお任せするとして、やっとタイトルの内容に戻ってきました。その歌詞です。再度書きますが、ラップとしての韻というよりJ-POPとしての韻についてなので、二文字で韻を踏むのは韻ではないとかそういうのは別とします。

未来がどうと理想がどうと
ブランコに揺られふと考えてた
瞼の浮かんだはてな
僕は僕をどう思ってるんだろう

歌詞の内容としてはまずドラえもんの世界観を映してますね。ドラえもんといえば未来なので頭に「未来」をもってきて印象付けてます。二小節目の頭の「瞼の裏」というのもよく寝てるのび太を連想させますね。

韻としては、「ア」音で落としていきます。特に「考えてた」と「はてな」は脚韻といっていいでしょう。

しい悲しい どっち 正しい違い どっち
夕日に急かされ 伸びた影を見つめ
公園で一人ひとりぼっち 砂場の解答用紙
しゃがんで分かるはずなくても探した

どっちで印象づけてますが、「嬉しい」「悲しい」「正しい」「間違い」と踏んで行ってます。特に「嬉しい」の対義語「かなしい」を出して同じ対義語で「ただしい」を完全に「aaii」で踏んでからの同じ対義語「まちがい」の「aiai」で繋げるのは匠の業です。

「悲しい嬉しいどっち」だとこの連続性は成り立ちませんからね。

「一人ぼっち」「解答用紙」も脚韻。特に「かいとうよぉーし」と歌うことで文字よりもフローで韻を踏ませています。

勿論、伸びた影は「のーびた影」と印象的に歌っているのでのび太をイメージしてのことでしょう。公園も解答用紙ものび太を連想させます。ここでこの曲は、ドラえもんの中でものび太にフォーカスを当てた曲だとわかります。

零点のままの心で暮らして
っていて答えを知って
満天の星の中 僕の惑
彷徨っていでこっちへおいで
涙とMistake 積み重ね野に咲くUniverse
Ah,一つだ

零点」と「満天」で踏みつつ満天と満点のダブルミーニングが最高です。

宿命の「切れないバッテリー」もそうでしたが、韻を踏みつつダブルミーニングにするテクニックが本当に上手いです。ここぞってサビで持ってくるのが必殺技感あっていいですね。

で、全体的に「e」音で落としてるんですよね。最初は「a」で次は「i」、サビは「e」とくどさが出ないようにしているところも心憎い。さらに「心で」「答えを」「僕の」「こっちへ」と頭韻を「o」音にしてる芸の細かさ。

がっつり踏みすぎるとJ-POPだと野暮ったくなったりもするので、ここら辺のバランス感覚が本当に凄いです。

それと「野に咲く」が何気に「のび太」で韻を踏んでるのでのび太の小宇宙戦争をさらに連想させます。

続いて2番。

未来はこうとか理想はこうとか
心に土足で来た侵略者は
正義だとか君のためだとか
銃を片手に身勝手な愛を叫ん

ヒゲダンの歌詞は、良く聴かれる1番に韻を意識つつ世界観をぶち上げて印象付けして、2番で結構内面的なネガティブあるあるを書くことが多い気がするんですよね。

他人が言う「あなたのため」って自分のためよね?っていうあるあるです。これを小宇宙戦争の世界観とマッチさせる手腕、流石です。

Pretenderであれば「誰かが偉そうに語る恋愛の論理 何一つとしてピンと来なくて 飛行機の窓から見下ろした 知らない街の夜景 みたいだ」がそうですよね。(ちなみに知らない街の夜景があるようにピンと来ないとピントが合わないを含ませてると思います。)

宿命だと「沈黙が続いたイヤフォン 自分の弱さに遠ざかってく未来 大丈夫や頑張れって歌詞に苛立ってしまったそんな夜もあった。」も実に内面的です。

しいしいどっち 正しい違いどっち
主役を奪われ 途切れた劇のよう
立ち向かう逃げ出すどっち 答えを決めるのはどっち
ほんとは分かってるんだけどね不安で

「i」音は勿論なのですが、1番の「夕日に急かされ 伸びた影を見つめ」と「主役を奪われ 途切れた劇のように」で踏んでますね。

歌詞としても「砂場の解答用紙」に対しての「答えを決める」、「しゃがんで分かるはずもなくても探した」に対して「ほんとは分かってるんだけどね不安で」と対にしてますね。

零点のままの心を覗い
悩んで泣いて 時間になって
暗転した舞台 灯は灯もって
がってたって 傷ついてたって
世界は回っていく拍手も声もなく未来は
Ooh,流れてく

「零点」と「暗転」さらに1番の「満天」とも踏んでますね。あとは1番の「徨ってないで」と「がってたって」もセットです。

「声もなく未来は」が「野に咲くUniverse」で語感で踏ませてるのも一番の盛り上がりのとこだけに高度だと思います。

それでここまでで分かるんですけど、歌詞の展開が完全に大長編ドラえもんなんですよね。

最初に日常があって、ジャイアンなりなんなりで馬鹿にされる。ドラえもんの道具で皆なんやかんや別次元(映画の舞台)でテンション上がる。何らかの不穏な影が出て、迷いや葛藤があり少年たちは成長し、道具の伏線回収して解決→大団円って流れ。

2番は完全にその迷い葛藤の場面なんですよ。

さていよいよ曲もラストスパートです。

星空を見ていた 茶色くなる手のひら
ブランコに揺られ はしゃいでる姿
面倒と幸せを 行ったり来たりして
ジグザグに散らばる僕の星座
重ねた日々は遠くの惑星だ
思い出し忘れて巡る過去の向こうから
君は

「見ていた」、「手のひら」で丁寧に脚韻。盛り上げどころの「僕の星座」、「惑星だ」も踏む仕事ぶり。

そして一番の最初の小節でもあった「ブランコ」を再びだしてからの未来に対して「思い出し忘れて巡る過去の向こうから君は」が完全に大人にぶっ刺さる。

これをCメロ最後に持ってくるセンスよ!!

星野源のドラえもんの「いつか時が流れて必ずたどり着くから 君を作るよ」に対するアンサーにも感じました。

暗い心にやってきた流星
笑って泣いて答えを知って
満天の星の中 僕の惑星
彷徨ってないでこっちへおいで
今日は帰ろう いつの日も野に咲くUniverse
Ooh,woah
一つだけYeah

暗転したまま暗い心に流星がやってくるわけですよ!!

ここまで来たら細かい韻の話は終わり!!!

この曲って改めてドラえもんだなぁと。それ抜きにしても素晴らしいのですがドラえもんを思うとより一層名曲になる。

ドラえもんの映画は流星の様にそれこそ大逆転して、少年たちは成長して日常に帰っていく。そしてその日常に帰りながらも冒険の残滓のような最後の1コマがたまらないんです。

そんな少し切なさの残る心地よさがUniverseにはあります。

曲自体は宇宙というマクロから自分の内面のミクロに繋げててこれもタイトルの小宇宙とかかってる気がして、相当愛に溢れてますよ。

マクロからミクロの視点はオザケンなんかも良く歌詞に出てくるのですが、これをJ-POPに昇華させるとなると相当なセンスが問われる。

それをオフィシャル髭男dismはドラえもんの主題歌でやってのけたのですがこれはもう天才的です。

歌詞はドラえもんの映画の流れに即しつつ、その映画をみた幼き頃の輝かしい思い出が、大人になり迷いながらも明日を頑張る気力の源になるという風に僕は受け取れました。

何て優しい歌なんだろう。折角なのでもう一回最後の歌詞を載せてしまおう。

暗い心にやってきた流星
笑って泣いて答えを知って
満天の星の中 僕の惑星
彷徨ってないでこっちへおいで
今日は帰ろう いつの日も野に咲くUniverse
Ooh,woah
一つだけYeah

素晴らしい自己肯定感の歌だ・・・!

のび太の小宇宙戦争はコロナで公開延期ですが、息子と観たらまたじっくり聴こうと思います。息子の年齢的に最後になりそうですが、その主題歌がヒゲダンで良かった!!

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