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「人材育成はカスタムメイド!」  専門家が語る人事評価と人材育成との関係性

エルアール人事労務研究所の吉川和利です。

エルアール人事労務研究所では、「モチベーションを育てませんか?」をキーメッセージとして、管理職やリーダー職向けの研修をはじめとした人材育成サービスや人事制度コンサルティングを行っています。

今回のコラムでは、「人事評価」と「人材育成」の関係性について解説させて頂こうと思います。
最後までよろしくお願いします。


EP1 人事評価と人材育成の関係性


|人事評価とは

人事評価とは、ある特定の期間における社員の仕事の成果・仕事の進め方・能力の向上の度合いなどを一定の基準に照らして確認する制度のことをいいます。

なお、人事評価とよく似た用語に“人事考課”がありますが、この二つの用語には“ここが明確に異なる”といったことがないので、このコラムでは人事評価という言葉で統一します。

さて、その人事評価の結果はどのように活用されているでしょうか。
このことは、後ほどゆっくり詳しく述べようと思いますが、

  • 人事評価をもとに昇格・昇進・任用を決めている。

  • 給与や賞与の査定に用いている。

という仕組みにしている企業や組織が多いのではないでしょうか。

ちなみに、民間企業ではかなり以前から評価という仕組みが導入されていますが、地方自治体においては人事評価の導入は遅れていました。

こういった状況に、(当時の)政府は「民間企業の多くは評価に基づいて給与や任用を決めている。それに倣うべきだ」という考えを示し、その結果、平成28年に地方公務員法が改正・施行されました。

そして、その改正地公法では、
①職員に対し人事評価を実施すること
②その人事評価の結果に基づいて給与や昇任等の人事管理を行うこと
が義務付けられました。

当時、私はこの「地公法改正特需」により多くの自治体に出向き、人事評価の目的や重視すべきポイントについて研修・講義を行う機会を頂きました。

色んなところに行けて、ご当地の美味しいものをたくさん食べることが出来て、フィーも頂戴できたので、あの一定期間は本当に楽しかったです(笑)

ちなみに、この時の特需を含めて、私の人事評価に関する研修登壇の回数はこれまでに優に200回を超えていると思います。


|人事評価を人材育成につなげる

前述の通り、平成28年(2016年)頃は、毎週どこかの自治体に出向き、場合によっては1日2回×5日間などの人事評価者向け研修を行ったものです。

この人事評価者向け研修の際に私が最も強調して申し上げたことは、このコラムのサブタイトルでもある「人事評価と人材育成との関係性」と、「人事評価なくして人材育成なし」ということでした。

一般には、人事評価は「給与や賞与の査定のため」あるいは「昇格や任用を決めるため」に行うものだという認識が浸透しているように思います。

確かにそれは間違った考えではありません。

人事評価の結果を給与や賞与の査定に用いることは、確かに合理的であり得性もあると思います。

一方、「昇格や任用を決めるため」ということになると、それに対しては、私は少し違った意見を持っています。このことは後述したいと思います。

ただ、給与・賞与の決定よりも、昇格や任用を決めるためよりも、もっともっと大切な役割が人事評価には与えられています。

それが「人事評価を人材育成に活用する」ということです。

活用するというよりも、人事評価なくして人材育成は成り立ちません。

人事評価をしないで人材育成に取り組むなど、ありえないし、出来ないことなのです。


出典:https://my-illust.com/freeimage/


|人材育成とは何か

さて、では人材育成とはどのようなことを指すのでしょうか。

人材育成とは「社員を組織の成長や事業の発展に貢献できる人材に育てること」を言います。

その為に、知識や技術を高めたり、思考や行動の改善を促したり、これにより長期的な組織のビジョンや短期的な組織の目標の達成に貢献させることが人材育成の狙いです。

成果が上がるようにきめ細やかに指導したり動機づけたりすることが人材育成ですが、人材育成こそが組織の成果を底上げさせる要因でもあるわけです。

つまり、人材育成は管理職の最重要のミッションともいうべき大切な役割であるわけですが、ある自治体で評価者研修を行った際、こんな声を多く聞きました。

  • 人事評価は大事だと思うが、余計な仕事が加わったという感想だ。

  • ただでさえ忙しいのに、人事評価をやっている暇がない。

これを聞いて、「ありえない」 「管理職のミッションが理解できていない」 と憤りに近い気持ちになったりもしましたが、これが管理職の本音なのかもしれません。

しかし、こういった方々にも、

「組織の目標を達成するためには人材育成が不可欠である」
「人材育成とは、指導や動機づけを通じて、不足している知識や技術を高めたり、思考や行動の改善を促すことである」
「そのためには、何が足りないかを明確に、かつ正確に把握する必要があり、それには人事評価という過程を飛ばすわけにはいかない」
「人事評価をやらないで、その人の課題や問題点が分析できるか」

という流れを丁寧に説明したところ、殆どの方は理解と納得をして頂きました。
このことは、この後の解説でじっくり説明させて頂こうと思います。



EP2 人材育成とはカスタムメイド


|一人ひとり個性は異なる

ここで質問です。
全員同じ育成プログラムをあてはめてみた場合、全員が同じように成長するでしょうか?
お分かりの通り、この答えは100%ノーです。

服のカスタムメイドを採り上げてみるとわかりやすいと思います。

人間の体形が全て同じなら、服のカスタムメイドというビジネスは成り立つでしょうか。
やはり答えはノーだと思います。

一人ひとりの体形が異なり、自分の体形に合った服が欲しいから、服のカスタムメイドというビジネスが成り立つわけですね。

人材育成においても同じことが言えます。

まず、大前提として、一人ひとりは個性を持っているということです。
性格、経験、役職、意欲、動機、他からの影響などにより個性が形成されます。

そして、その個性の元に一人ひとりに必ず存在する、得手・不得手に着目しなければなりません。

  • アイデアを出すのは得意だけど、具体化するのは苦手。

  • 企画業務では力を発揮するけど、ルーチンワークは苦手。

  • 資料作りは上手いけど、人前で話すのは苦手。

皆さんの部下の方々や、もしかすると皆さんご自身にもこんな風なことが当てはまるのではないでしょうか。

分業が明確な業務では得意な分野で力を発揮してくれればそれだけで十分だという考え方があります。
そもそも得手を伸ばすことは大切なことだと思います。

また、「高度な専門スキルだけがあればそれだけで仕事ができる。他は必要ない」というような場合もあるでしょう。

しかし、そのような職種は極めて限定的です。

得手ばかりに傾注して不得手を放置してしまったために、総合的な人材力としては不十分であったり、結局は成果に繋がらなかったりということはよくあることです。



|ケーススタディ

人事部課長のAさんは、係長のBさん(35歳)には、次期の人事部管理職候補として期待をしている。Bさんもその期待に応えたいと考えており、日々意欲的に業務に取り組んでいる。
A課長は、人事部の管理職へのステップとしては、まずは以下の4つのスキルを保有しておかなければならないと考え、Bさんと話し合いを重ねた結果、この4つをBさんの目標として設定し取り組んでもらうこととした。

【Bさんの目標】

  1. 労基法をはじめとした労働法の全体概要を理解すること(どのような法律があり、それはどのような主旨・目的で制定されているかを説明できること)

  2. 自社の就業規則および賃金規則など各種人事制度の内容を詳細に把握し、いつでも説明できること

  3. 人事や労務に関する世間の事例や潮流を研究し、当社の人事戦略会議で、具体的なプランを立案し提案すること

  4. 労働組合との協議の場で、労組の役員クラスとの交渉や折衝ができる胆力とコミュニケーション力を身に着けること(なお、労使協議会ではA課長は必ず出席する)

そして、半年が経過し、Bさんの人事評価を行うこととなった。
A課長は、Bさんはすでに1と2について問題ないレベルに達している。申し分ないと判断した。
3についても、まだ具体的なプランの提案にまでは至らないが、人事や労務に関する世間の事例や潮流については情報を収集しており、当社の課題は見えてきているようだと評価した。

しかし、問題は4だった。
労働組合との折衝内容をロジカルに組み立てることはできるが、実際の交渉の場面では相手の反論や質問に戸惑いを見せる姿が顕著だった。
A課長がその理由を確認していくと、Bさんは「折衝の場面では緊張してしまい、反論されると受け身になってしまう。受け身になることで、自分の頭の中の引き出しの奥にある知識にまで届かないのでこちらの説明が覚束ない」などと説明した。

そこで、A課長とBさんとが話し合った結果、
「まずは折衝の場に慣れることを当面の目標に掲げよう。発言は自分が出来ると思ったタイミングでしてくれればいい。」
「そして、徐々に折衝の場で論理を組み立て、徐々に率先して発言できるスキルを高めていくようにしよう」
という結論に至り、取り組んでこととした。

Bさんも、A課長の提案は自分にとっての恰好のOJTになると感じ、意欲的に取り組んでいこうと決意した。



上記は、多少脚色をしていますが、実際に私が経験した実例です。(A課長もBさんも私ではありません。念のため)

Bさんは、1と2は問題ないが、4が苦手ということでした。
これが別の人ならまた違った課題が浮かび上がったということもあり得ますよね。

ここで人材育成とはカスタムメイドだという話に戻りますが、一人ひとりの「何が出来て/何が出来ていないのか」をベースにして次の目標を設定しなければなりません。

上記のケースで、
目標設定>人事評価>目標と実態とのギャップの明確化>その理由と対策の明確化>以降の育成計画立案 
という流れをお分かり頂けたと思います。

人材育成がカスタムメイドだという理由はこういったことです。

このように一人ひとりの得手・不得手に対応したカスタムメイドの人材育成に取り組むためには、一人ひとりに対する分析が不可欠となります。

その分析は、人事評価という仕組みを通じて行うことが大切であり、単なるアイデアや思い付きで人材育成の方向性を決めるのはあってはならないことです。


EP3 コカ・コーラの事例


|成果が出ない人をどう育成するか

この項の最初に、あえて当たり前のことを申し上げます。「人材育成の対象は全員」です。

成果が出ない人のみを人材育成の対象とするとか、優秀な人は人材育成の対象から外れるということはありません。

ただ、話がややこしくなるといけないので、ここでは成果が出ない人を採り上げて解説します。
成果が出ない人をどのように育成するか、その際に人事評価をどう活用すべきかということについて説明したいと思います。

では、ここで
「なかなか成果を出せない」
「指示したことが出来ない」
という部下をお持ちの管理職の皆さんに質問です。

成果が出ない人は、何らかの理由や背景があってそうなるのですが、ではなぜ成果に繋がらないかということを考えたことはありますか?

「やる気がない」
「スキルが低い」
「仕事が遅い」
「何度説明しても理解できない」

というところから始まり、場合によっては、

「何度指導しても変わらない」
「あんなダメ人間はウチには要らない」

というパワハラの一歩手前のレベルにまで発展してしまうことがしばしばです。(実際にこの先に、暴言を吐いてパワハラだと訴えられるケースも多々あります)

人事評価を人材育成につなげるという認識の無い上司には、こういった発想しかできないひとが多いように思います。

しかし、成果を出せない理由を短絡的に見出すことはあってはなりません。

その部下の知識、技術、思考、意欲、行動に照らしてロジカルに紐解いた上で、その改善に向けて取り組むことが上司の本来業務だからです。


|コカ・コーラの営業職を例に

では、なぜ成果が出ないのかを考えて行く前に、ここでコカ・コーラのフィールド営業職を採り上げて例示し、これをもとに、成果が出ない理由を考えてみたいと思います。

皆さんも街中をコカ・コーラのロゴが入った軽自動車が走る姿をご覧になったことがあると思います。あれはフィールド営業の担当者たちです。
なお、“フィールド営業職”とは、本部営業職と対比させたここだけの造語ですので悪しからずご了承ください。

フィールド営業の担当者は、コカ・コーラ製品を取り扱って下さる販売店様(飲食店を含む)や自販機設置店様を訪問して、受注・提案・販促などの活動をしたり、新規にコカ・コーラ製品を取り扱って下さるお取引店様を開拓したりする仕事をしています。

フィールド営業職には、売上高をはじめ色々な目標指標がありますが、ここでは売上高を採り上げます。

売上高を伸ばすためには「新規の取引先を開拓する」ことと「既存取引先で売上を伸ばす」ことの2つしか方法はありません。

一般的な見方をすると、既存取引先での売上は様々なリスクに晒されています。
お店が廃業となったり、自販機設置場所を競合に奪取されたり、人の動線が変わったことで売上が激減することもあります。
したがって、既存店だけで売上を伸ばすことは難しいので、やはり新規の開拓に力を注ぐことになります。

しかし、営業で成果が出ない人は、既存店での売上減少を止められないことに加え、新規の獲得がうまくいかないという2重のジレンマに苦労しているという特徴があります。

地域性や担当している業種業態によっては、新規の獲得が困難なケースもあります。
そのような場合は既存取引店をしっかり守り、売上の減少を食い止めることが目標となるケースもありますが、成果が出ない人は、やはり新規の獲得を苦手としている人が多いように思います。

これは、私が人事部長としてだけではなく、コカ・コーラに入社してから退職するまでの全ての期間でこのことに触れ、感じてきたことです。

では、なぜ新規の獲得がうまくいかないのでしょうか。


|成果が出ない理由を紐解く

新規の獲得に、成功の方程式みたいなものは存在しません。

スキルが高い人は自分なりの成功体験をもとに成功する確率が高い方法を身に着けていますが、これがすべての人にとっての成功の方程式だと言えるものはありません。

ただ一つ言えることは、こちらから能動的に動かないと新規の獲得には至らないということです。

「自販機を置きたいので商談に来て欲しい」と相手先から新規取引をお願いされるケースは極めて稀であり、そんなタナボタ的な旨い話は無いに等しいのが実態です。

一方、新規に自販機を設置できるならどこでもいいということでもありません。

自動販売機を設置しても、売れなかったら「相手先は利益よりも電気代の負担の方が大きく赤字になる」「コカ・コーラ側も利益どころか自販機の投資回収もできない」ということになりかねません。

したがって、事前に、「調査」「分析」を行い、売上が見込めるという確信に至った段階で初めて取引の交渉に入ります。

しかし、実際の商談にまで話が進むまでは困難を極めます。
いくらコカ・コーラが世界的に著名なブランドでも、そのブランド力だけで商談にまで至ることができると思うとそれは大間違いです。

フィールド営業は、損得などのビジネスライクなところよりも、どちらかというと人と人との関係性で成り立つところが大きいと思います。
つまりフィールド営業の担当者の人的魅力がなければ、特に新規の獲得においては、商談に入ることは難しいといえます。

そして、商談に至ったとしても、そのあとの条件提示が相手にとって魅力的でなければそこで商談は終わるでしょう。

つまり新規の獲得では、分析力・調査力・判断力・提案書作成力・説明力・交渉力などが必要になり、加えて営業担当者の人的魅力も欠かすことが出来ない要件と言えます。


|抽象的な対策では解決しない

新規の獲得というテーマにおいて成果が上がる人は、これらの要素を習得し、また臨機応変に組み合わせて用いることが出来る人です。

逆に、成果が上がらない人は「いずれかの要素が欠けている」あるいは「組み合わせて用いることが苦手」など、何かしらの具体的な問題を抱えています。

したがって、その欠けている要素を身に着けることであったり、上手く組み合わせるスキルを身に着けることが成功への筋道だということになるわけですが、僕がいた時代では「スキルが足りないから成果が上がらないんだ」という抽象的な指摘で終わらせているケースが多々ありました。

スキルが足りないにしても、たとえば「分析力が足りない」とは、「説明がわかりにくい」など、具体的な課題を明確にしなければなりません。

ただ、このような抽象的な指摘でも「スキルが足りない」と言ってくれるのはまだマシな方で、「君にやる気がないから成果が出ないのだ」とか「君に気合が足りないから相手に通じないのだ」など、具体的な改善策には繋がらない根性論に終始する上司も多く存在していました。 

とはいえ、今はそんな管理職はいないと思います。
私が人事部長を務めていた時代以降、そんな人は管理職に任用していないはずなので。(笑)

ということで、コカ・コーラのフィールド営業職の話はこの辺で終わろうと思いますが、世間を見ても、成果が上がらないならその理由をとことん追求して改善に繋げていかなければならないところを「お前はスキルが低い」 「思慮が浅い」「やることが遅い」などと大雑把な指摘のみで終わらせている上司が多いように思います。

人事評価とは「できた/できていないを見極めること」でもありますが、もっと大切なことは「できた理由/出来なかった理由」を紐解き、解決策に繋げていくことです。

では、次の章(最終章)でその解決の方策を探ってみたいと思います。


EP4 評価なくして人材育成なし

|評価なくして課題は見えない

前述の通り、
「何が、どれくらい、もの足りないのか」
「それはなぜもの足りていないのか」
「その改善や克服のためには、何に、どのように取り組んでいくのか」
これらを明確にするには、評価というプロセスを踏む以外にありません。

言い換えると、評価を曖昧にしてしまうことで、この「何が足りない」「なぜ足りない」「ではどうやって補い改善する」ということの方向性が見出せないのです。

方向性が見えないと何をしていいのか分かりません。
結局は、出来ないまま放置されるという状態が続くだけです。


|だから目標を明確にする

ただ、人事評価だけをしっかりやれば解決できる問題でもありません。

当たり前の話ですが、人事評価を行うためには、あるべき姿=目標を明らかにしなければなりません。

あるべき姿と現状との間に生じているギャップを明確にすることが評価である以上、そのあるべき姿イコール目標を明確にしないことには始まらないわけです。

「知識をつけろ」
「技術を高めろ」
「行動は早め早めに」

このような抽象的な表現ではなく、目標はもっともっと具体化する必要があります。成果が出ない人の特徴の一つに、自分に与えられた課題を明確に理解できていないということもあるのです。

その具体化とは「自分は何をすべきか、その辺を歩いている人に説明して分かってもらえるレベルまで詳細化すること」を指します。

しかし、これまでにコカ・コーラ時代を含め、研修事業や評価制度コンサルティングを通じて「目標が曖昧で抽象的」な事例は数多見てきました。

「積極的に業務改善に取り組み、生産性を向上させる」などは、まだ具体的な方です。
ある自治体では「責任感を持って職務に精励する」なんていう文言が目標として定められていました。

こうなると、何をもって責任感なのか、何をもって精励なのかさっぱり分かりません。

しかし、目標がこんな風に曖昧で不明確なのに、「出来た/出来ていない」を評価し、出来ていない!と部下を非難する上司が多いのも事実なのです。


|目標が曖昧でいいケースもある

さて、適正な評価のためには、目標を明確にしなければならないと申し上げましたが、それは全ての部下に当てはめなければならないのかというと、そうでもないと思います。

例えば、「優秀な人」=「安定的に高いレベルの成果を上げる人」には、期待する成果を示すだけでいいと思います。

「この課題をやり切って欲しい」

こんな感じで言っておけば、あとは自分で考えてしっかりやってくれます。そして、そのために足りない部分は、本を読んだり、ネットで調べたり、他の詳しい人に聞いたりして、自分で補ってくれます。
もしかすると、成果につなげていく業務プロセスの設計は上司よりも上手いかもしれませんね(笑)

ただ、絶対に守って欲しいことは明確にしておく必要があります。
「ルールは逸脱しないこと」
「わがままは言わない」
「後輩の見本になる立ち居振る舞いをする」
などですね。


また、「標準的な人」=「やや足りたいところも散見されるが、概ね期待したレベルの仕事をしてくれる人」に対しても、細かいところまで目標化する必要は無いと思います。

その人の話をしっかりヒアリングし、概ね上司が納得するような仕事の進め方をしようと考えているのであれば、ある程度は任せても良いのではないでしょうか。

ただ、このクラスの人には、「上司はいつも君のことを気にかけているよ」という安心感を与えることが重要です。
その上で、
「分からないところがありそうだ」
「どうも少し困っているように見える」
「質問してきた」
こんな時は、「君に任せたんだから最後まで責任を持ってやりなさい」などと突き放したりせず、相手が納得するまでサポートしてあげて欲しいと思います。


|成果の出ない人にこそ、きめ細かなサポートを

成果の出ない人には、しっかりと話し合った上で、お互いの納得できる具体的な目標を定め、相互に確認することが必要です。
場合によっては、上司から具体的な指示をしてやることも必要になります。

その中で、必ず身に付けなければならないスキルや、絶対に疎かにしてはいけない取り組みなど最重要の事項は、具体的な方策を示してやることも大切です。

  • いつまでにどんなスキルを身に着けて欲しいのか。

  • 1週間の間で、どんなことをどれくらいやるのか。

そして、大切なことは、PDCAを着実に回していくことです。

例えば、
①1週間の目標を相互に確認する(P)
②部下はその内容に沿って取り組む(D)
③週末にその活動内容の結果を一緒に確認する(C)
④問題がなければ次週も同様に取り組む。問題や不足があれば、なぜそうなったかを確認・検証して新たな次週の目標を設定する(A)

という流れですが、ここでは特にC(チェック=検証)とA(アジャスト=修正)が重要です(※後述を参照してください)

大切なことは階段は一つひとつ登らせることです。
優秀な人なら、複数の課題でさえ3段飛びできたりしますがも、成果が出ない人は目の前の1段を登るのも容易ではないと考えるべきです。

そして、1段が登れたなら、なぜ登れたのか、なぜ今まで登れなかったかを考えてもらいましょう。

それが分かることで、自信に繋がります。
そして、「1段1段でも確実に階段を登っていることの満足感や達成感」を味わってもらうことで意欲を高めましょう。
さらに、そこに「褒める」という承認を与えることで、意欲はさらに高まります。
そうした繰り返しの中で、自然に上司の手を借りずとも自分で成長への糸口をつかめる人材に育っていきます。
地道で、時間のかかるマネジメントですが、ここが管理職としての腕の見せ所です。

(※)PDCAについて
私はPDCAとは、P(プラン=計画)、D(ドゥー=実行)、C(チェック=検証)、A(アジャスト=修正)と解釈しています。
Aはアクションでも構わないのですが、アジャストとする方が修正の意味合いに近くなりますよね。


まとめ

ここまで、「人材育成はカスタムメイド!」というテーマで、人事評価と人材育成の関係性について解説させて頂きました。

管理職の任にある方で、人材育成に興味がない人はいないと思いますし、そう信じています。
その一方で、人材育成は難しいと感じている管理職が多いのも事実です。

実際の場面では、人材育成の課題を設定するだけではなく、どんな手法を使って指導・育成していくのかということもしっかり考えなくてはなりません。

また、何をどのレベルまで目指すのかなど目標を適正化することも大切ですし、日々の取り組みの中で“承認”を上手く用いていかないとモチベーションが継続しないリスクが生じます。

そして、その背景(土台とでも言うべきでしょうか)では、上司と部下間の信頼関係の構築が不可欠です。
部下が信頼していない上司の元では、部下のモチベーションが高まりませんし、ひいては成長にもつながりません。


では、終わりに際し、最後にもう一度申し上げます。
人材育成においては、その一つひとつがカスタムメイドです。

評価を上手く生かし、一人ひとりを見て、具体的な人材育成プランを立ててください。
管理職の皆さんは、人材育成の総合プロデューサーなのです。

(おわり)

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は「吉川式100m走理論」というテーマで、目標の適正化について解説させて頂こうと思います。
次回もよろしくお願いいたします。


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