亜 矢

日々のつれづれ、思いの言の葉、 ときどき"モノがたり"ーあるべきところへ届きますように

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日々のつれづれ、思いの言の葉、 ときどき"モノがたり"ーあるべきところへ届きますように

最近の記事

求めるモノ

最近、自分の身体の調整のために、とある施術院に通うようになった。 コーヒー好きな私は、新しい街へ行くことになるといつも、その街の美味しいコーヒー専門店を探して行くことを楽しみにしている。 その施術院がある街はかなりの都会だったので、方向音痴な私は、あまり目的地から遠くないところにあるチェーン展開のコーヒー店をネットで調べておいた。 が、実際に行ってみると、ナビゲーションマップ上ではあるはずのところにお店がない。 施術院を紹介してくれた方が、よくそのコーヒー店で予約時間までの

    • 【ものがたり】Normal

       若い頃は、絵と珈琲と煙草さえあれば生きていけると思っていた。小さなスケッチブックと鉛筆を持って町中を歩きまわり、気に入った風景を見つけるとラフスケッチを描き、家に帰ってからそれを元にイメージを脳みそから引っぱりだして仕上げる。  その引っぱりだすときのお供というかカンフル剤が、珈琲と煙草だった。  不思議と空腹を感じず、むしろ感覚が研ぎ澄まされるようで心地よかった。  もちろん、普通に飯を食わなければ死ぬ。  実際に一度貧血でぶっ倒れて病院に担ぎ込まれ、親父が大学から呼び出

      • 『我が輩は猫である』

        《ブックカバーチャレンジ(「読書文化普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」)という、Facebookで行われているリレー投稿の続き》 【7日目】 神経質ゆえにその文章は繊細で、何の気なしに書いているように見えて、おそらく考え抜いた末の言葉の選択をしているのだろう。文章のリズムやその世界を構成する空気感、登場人物の醸し出す雰囲気、そういったものが渾然一体となって声を出して読んでいるととても心地が良いのだ。すべてに深みがある。 それに比

        • 『遠野物語』たち

          《ブックカバーチャレンジ(「読書文化普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」)という、Facebookで行われているリレー投稿の続き》 【6日目】 初めて遠野を訪れたのはもう20年ほど前。それから、何度か定期的に遠野を訪れていたが、自然あふれるところに居住の地を移すことになってから行かなくなってしまった。単に、森と山と目に見えない存在たちとのふれあいに飢えていただけだったのだろう。 その初めての遠野旅行で泊まったのは、東北地方特有の『

        求めるモノ

          『モモ』

          《ブックカバーチャレンジ(「読書文化普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」)という、Facebookで行われているリレー投稿の続き》 【5日目】 中学2年生のとき、私はちょっとだけいじめられっ子だった。 ちょっとだけ。今思うと、自分で勝手に壁を作って周りを拒絶していたようなところもあったので、いじめられてもしかたないのかもなあと自省するのだが、事実として、クラスで浮いた存在であったことは確かだった。 学校に行きたくない。この世にいた

          『モモ』

          『ダークグリーン』

          《ブックカバーチャレンジ(「読書文化普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」)という、Facebookで行われているリレー投稿の続き》 【4日目】 もともと父は割と頭が良かったらしく、本好きで、なかでもSFが好きだった。姉が生まれたとき、結構な蔵書もあったらしいが、姉が生まれたときに「女の子だからSFなんて読まないしね」といってそれらを整理して処分してしまったと母から聞いた。 ところが、ほんの数冊家に残っていたSFをめざとく見つけた姉

          『ダークグリーン』

          『グイン・サーガ』

          《ブックカバーチャレンジ(「読書文化普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」)という、Facebookで行われているリレー投稿の続き》 【3日目】 グイン・サーガとの出会いは、かれこれ30年ほど前になる。学校の図書館にシリーズがすべて揃っていた。何を思ってそれに手を伸ばしたのか、今では記憶にないが、とにかくはまった。そしてそれを機に、この作者の著作を読みあさるようになる。 小説のみならず、別の名義で評論家としても活動しており、さらに音

          『グイン・サーガ』

          『ぴっぴら帳』

          《ブックカバーチャレンジ(「読書文化普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」)という、Facebookで行われているリレー投稿の続き》 【2日目】 子どもの頃から、ずっとセキセイインコを飼っていた。子どもの頃は、不注意やら子どもの無邪気にも残酷な性格ゆえに寿命が短かったが、近所にたくさんのセキセイインコを飼っているお宅があって、そこからすぐにヒナをお迎えすることができたので、比較的途切れることなく飼い続けることが可能だった。 小鳥がい

          『ぴっぴら帳』

          『ヴィジョン』

          《ブックカバーチャレンジ(「読書文化普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」)という、Facebookで行われているリレー投稿の続き》 【1日目】 そもそも、この本の存在を知ったのは、とある神秘学者のブログから。その方は、シュタイナー教育で知られるルドルフ・シュタイナーを主とするキリスト教系神秘学の修行をされており、私はそこからシュタイナーが単なる教育者でないことを知った。 「スピリチュアル」というとなんとなく、地に足がついていない浮

          『ヴィジョン』

          手を放す

          しがみついているものから。 怖くて、不安で。 でも、もう、そのしがみついているモノは崩壊している。 しがみついていたら、一緒に堕ちてゆくだけ。 飛べる。 背には羽根がある。 何度もひろげてもらった羽根。 飛ぶ。 思いのままに。 それが本当の願いであることすら多くの人間は忘れている。 飛べ。 羽根を信じて。 新しい世界へ。

          手を放す

          人のために生きるのはやめよう

          昔、「『この人のためになら命を捨てられる』という人と結婚したいと思っている」と、友人に言ったことがあった。 例えば映画ならば、飛んでくる銃弾をその身に受けて愛する人を守ったりするようなイメージ。 あるいは、夢に向かって無我夢中で突き進む人をサポートするため、身を粉にして働いてお金を稼いだりできる限りのさまざまな支援をしたりするのが自分の役目、使命だと思ったり。 今思うと、ほんとーに、自分の人生を放棄するに等しい考えだ。 自分の夢を考えるのを放棄、そして自分自身の役目を放棄、

          人のために生きるのはやめよう

          幸せオーラ

          電車の中で、すごく幸せそうにおにぎりを食べているおばちゃんがいた。時々、同行している30代くらいの女性に「もういっこたべちゃおうかな〜」「お腹いっぱいになっちゃった」などと、ふんわりした口調で話しかけている。 そのおにぎりはコンビニおにぎりで、そのおばちゃんはちょっとだけ認知症状が出ているような感じで、ごはんつぶを口の端につけながら一心におにぎりをほおばっていた。 その姿に、とても惹かれた。 大きな窓から降り注ぐ暖かな日射しのなか、ちょっと身体を傾げて半分目をつむりながら、ゆ

          幸せオーラ

          移住記念日

          11月14日は移住記念日だ。東日本大震災が起こった年に、いま住んでいる家を建てて、いま住んでいる町に移り住んだ。 震災による影響で、トイレの在庫がないとか薪ストーブの工場が流されたとか、引っ越し準備が終わらなくて夜中にめそめそないたりだとか(これは震災とは関係ない・・・)いろいろ滞りがあったものの、無事に引っ越すことができた。引っ越し業者が「荷物多いですよね」とぼやくほどモノが多かった我が家。人間、やればなんでもできるんだなあと思った日々を思い出す。 移住のきっかけは、「山

          移住記念日

          【ものがたり】桃のショートケーキ

           桃の節句が近づくと、子どもの頃を思い出す。  私の誕生日はちょうど3月3日。桃の節句である。大人になった今では、節句の由来も桃の意味も知っているが、子どもの頃の認識はひな祭りの日で「女の子の日」だった。男の自分が女の子の日に生まれたなんて、とてもはずかしくて学校のクラスメイトには絶対に言えなかった。幸いにも、「お誕生会」を開こうという友人もおらず、また、女子たちが良くやるような誕生日プレゼントを贈り合う習慣も男子にはなかったので、私の秘密が知られることはしばらくなかった。

          【ものがたり】桃のショートケーキ

          味わう

          朝は、大体スムージーを飲む。すべてが粉砕されているのでほとんど噛まずに食べられるので消化はいい。 いい、はずなのだが、あまり胃が丈夫でない人にとっては、実は負担が掛かるものらしい。 実際、まさしく胃が丈夫でない私は朝9時頃にスムージーを摂ると、お昼過ぎまで満腹感が続く(まあ、一度に500㎖以上食べているので当たり前と言えば当たり前かも知れないが・・・)。 だが、しかし。 それでも、なぜか、満たされた感じがしないのだ。 素材によっては甘味があまりなく、甘い物好きの私にとってはそ