記事一覧
【ものがたり】Normal
若い頃は、絵と珈琲と煙草さえあれば生きていけると思っていた。小さなスケッチブックと鉛筆を持って町中を歩きまわり、気に入った風景を見つけるとラフスケッチを描き、家に帰ってからそれを元にイメージを脳みそから引っぱりだして仕上げる。
その引っぱりだすときのお供というかカンフル剤が、珈琲と煙草だった。
不思議と空腹を感じず、むしろ感覚が研ぎ澄まされるようで心地よかった。
もちろん、普通に飯を食わな
『我が輩は猫である』
《ブックカバーチャレンジ(「読書文化普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」)という、Facebookで行われているリレー投稿の続き》
【7日目】
神経質ゆえにその文章は繊細で、何の気なしに書いているように見えて、おそらく考え抜いた末の言葉の選択をしているのだろう。文章のリズムやその世界を構成する空気感、登場人物の醸し出す雰囲気、そういったものが渾然一体と
人のために生きるのはやめよう
昔、「『この人のためになら命を捨てられる』という人と結婚したいと思っている」と、友人に言ったことがあった。
例えば映画ならば、飛んでくる銃弾をその身に受けて愛する人を守ったりするようなイメージ。
あるいは、夢に向かって無我夢中で突き進む人をサポートするため、身を粉にして働いてお金を稼いだりできる限りのさまざまな支援をしたりするのが自分の役目、使命だと思ったり。
今思うと、ほんとーに、自分の人生を
【ものがたり】桃のショートケーキ
桃の節句が近づくと、子どもの頃を思い出す。
私の誕生日はちょうど3月3日。桃の節句である。大人になった今では、節句の由来も桃の意味も知っているが、子どもの頃の認識はひな祭りの日で「女の子の日」だった。男の自分が女の子の日に生まれたなんて、とてもはずかしくて学校のクラスメイトには絶対に言えなかった。幸いにも、「お誕生会」を開こうという友人もおらず、また、女子たちが良くやるような誕生日プレゼントを