「年収」という単語の不思議
「フリーランスで年収一千万!」という言葉はよく聞きますよね?
ところで、みなさん
「年収」
ってなんだと思いますか?
結論から言うと、私はいまだにわかりません。
なぜなら年収について語ってる人に細かく聞いてまわると、人によってまるで違う意味で解釈しているからです。
それでは、巷でささやかれる「年収」の不思議な世界を紐解いてみましょう。
例によって実にアレな記述があるので、申し訳ありませんが今回も有料記事とさせていただきました。ごめんして!
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辞書的な意味での年収
まずはお手持ちのMacで年収の文字を選択して、長押ししてみてください。辞書を引くことができます。そうすると次のように表示されますね。
年収
一年間の収入のこと。
なるほど、毎月の収入を一年分積算すると年収になるようです。
では、収入とはなんでしょうか?Wikipediaで見てみます。
収入(しゅうにゅう、英: income)とは、ある期間に得た現金あるいはその等価物。
...
税法上は経済単位(個人または法人)が、経済活動や既存の権利の対価として、ある期間に新たに得た金銭、あるいは、動産、不動産、権利などの金銭価値換算可能な物件の総称である。税法上に定める所得とは異なる。本節では所得についても述べる。
「Wikipedia - 収入」より引用
Wikipediaの補足にずばり書いてあるのですが
給与所得者にとっては「一年間の給与収入の総額」
事業所得者にとっては「一年間の事業収入の総額(売上)」
と、書いてあるんですね。
まとめると、個人の収入の種類によって変わるというというのを覚えておいてください。
法律上の年収
あまり知られてない事ですが、法律には「年収」という単語は存在しません。
具体的に言えば、六法全書のどこを見渡しても、その単語は一度も登場しないのです。
ただし、社会的通念として国税庁は頻繁に使用しており、同庁のサイトにはたくさんの記述があります
Google検索 - site:nta.go.jp "年収"
かなりの数があるため、全ては追っかけていませんが、見る限りに置いて「給与所得者の年間収入」に限定した場合のみ「年収」という単語を使っているように思えます。
以上を鑑みるに、給与所得者同士の年収を比較することは可能だと思われます。ほぼ実態としての可処分所得(経済力)と、概ね比例しているからです。
このように、年収という単語は、法律上は存在しないのに、通念上では、誰もが理解できる当たり前の尺度として使用されているようです。
しかしながら、「事業所得者の年収」という単語は、実態としては何の意味も持ちません。それがなぜなのか、次章以降で説明していきます。
給与所得者と事業所得者の比較は意味がない
よくサラリーマンとフリーランスについて、どっちが税金が高いとか安いとか、使えるお金が多い少ないなどと比較して話している人がいますが、そんなことには意味がないので止めましょう。
この比較がなぜ不毛なのかというと、給与収入と給与所得、事業収入と事業所得、それぞれの関係性がまるで違うからです(ベクトルが違うと言っても良い)
一見すると同じ「円」の単位で語られるので、単純に比較可能に思えてしまいますが、実際のところ意味しているものが違うのです。
なぜ無意味なのかを次章から解説していきます。
収入の比較
まず誰でも思いつくことですが、収入(Wikipedia的な意味での)を比較してみるのはどうでしょうか?
まず、給与収入とは、通称「額面」と呼ばれる、年間の総給与支給額の事を意味します。いわゆる「年収」です。
(給与所得同士の比較は問題ありません)
対して、事業収入とは、年間の総売上のことです。この金額は、しばしば「年商」と言われる事があります。
一見比較可能に思えるかもしれませんが、売上は実際のところ操作可能です。再委託する受託請負などの場合、建付けとして自分の口座を通せば事業収入は上昇します。したがって、実態としては自分の会社の口座を通過した金額にすぎません。逆に言うと、たとえば純SESフリーランスでは、実際に売上げた金額に等しくなります。
このように、給与収入と事業収入は、上限を細かく限定しない限り、単純比較しても意味がないのです。
コラム:婚活サイトでの年収の扱い
筆者は、数年前に婚活サイトに登録してみました。そこはプロフィール欄の信憑性を担保するために、運転免許証から確定申告書までチェックされるという、なかなか本格的なところでした。
筆者は業態として課税事業者のSESフリーランスですので、年収欄には素直に年商、すなわち事業収入を記入しました。
しかしながら、婚活サイトの審査員はそれが正しい金額ではないと連絡してきました。
なんと、彼らは事業所得を年収欄に書けと言ってきたのです。
少なくとも事業所得者が事業所得を書くなら、給与所得者は給与収入ではなく、給与所得を書くのが道理だと思うのですが、給与所得者は給与収入を書くのだそうです。ぜったいにゆるさない。
婚活女子こそ、事業所得者の本質的な経済力を見抜けるようになるべきなのではないでしょうか(公憤
所得の比較
「収入がダメなら所得で比較すればいい」
この発言も非常によく聞きますね。
その根拠を聞いてみると、「事業所得者の利益」は、売上から経費を抜いた額なのだから「給与所得控除後の給与所得と、事業所得を比較すれば比較可能である」と言う方がいらっしゃいます。
残念ながら、決算を行ったことがない方には理解しがたい点が多々あるのですが、事業所得という数字は、実際の経済力を示す金額としては随分とブレてしまうのです。
事業所得の実態は下記の通りだからです。
まず青色申告控除の存在があります。青色申告控除を選択している事業所得者の場合、事業所得から65万円が控除されます。いうなれば見かけ上、事業所得が65万円減ります。
次に専従者給与です。青色申告の事業主の配偶者などが仕事を手伝う場合などに、専従者給与という形で経費として計上が可能です。まぁこの制度にもいろいろ問題があるのですが、実態としては見かけの事業所得を低下させているのです。
そして年次償却があります。これは固定資産を購入した場合など、その年に一括で経費計上することはできず、償却年数に応じて毎年一部を経費として計上(償却処理)していきます。したがって、この分も実態より事業所得を低下させます。
また、小売業態に特有のものですが、在庫仕入れというものがあります。これは、仕入れというのは即座に経費にならないため、逆にお金を使っているにもかかわらず、事業所得に影響がない(経費にならない)のです。実際には資産が増えているのですが、不良在庫になった場合などは、在庫処理が終わるまでは含み損を抱えてる事にもなりますので、実態とは逆に事業所得を増大させていることになります。
ここに上げたのは事業所得を左右する要素の一部にすぎません。
いうなれば、事業所得は、給与所得ほど単純な数字ではないということなのです。
経費計上がすべてを狂わせる
そして、最大の問題は経費です。
およそ給与所得の世界しかご存じない方には、とても信じがたい(あるいは許しがたい)不都合な真実があります。
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