見出し画像

ある夜の話

“幸せは探すものではなく感じるもの”

そうは分かっていてもうまくいかない日は苛立つこともあるし、やるせない気持ちにで布団をかぶる日もある。


金木犀が香り始めた季節、小説やドラマのようにエモーショナルな夜が欲しくなった。

財布と携帯だけ持ってひんやりしたシートに座った。一週間前までエアコンが効いていない場所はいるだけで湿度が体に纏わり付いてきたのに一気あの季節はにどこかへ行ってしまった。
今ではまた終わってしまったなんて思いながら思い出を作れたか思い返す。

コンビニに寄る。これから長い夜を堪能するためにカップラーメンを買ってお湯を入れる。
コンビニは好きだ。
幼い時のおばあちゃんの家への旅行を思い出す。車で2時間は子どもには立派な旅行で途中親に買ってもらうツナのおにぎりと紙パックのコーヒーが思い出に蘇る。

“エモい夜”は想像に難くなかった。でもやはり現実は現実で公園で月明かりに照らされ揺れるブランコが理想だったがそんなにちょうどいい公園はないし車を停めようにも誰の文句も出ないような駐車場は寺の駐車場くらいのものだ。

広い田んぼ道に出た。
街灯がある。田舎にしては珍しい光景で道も路肩も広いのでここで車を停めた。

ロケーション探しのおかげで伸び切った“チリトマトヌードル”
トランクに腰掛け割り箸を割る。
このチリトマトもまた記憶を呼び出す。
高校生の頃深夜に友達とゲーム三昧。くだらない話をしたり息ができなくなるくらい笑ったりした日々を思い出す。専門学校で友達を巻き込んで深夜まで残り文化祭の準備をした時もチリトマトを食べたっけ。


この季節の夜はずっと歩いていたい。Tシャツでも平気か少し肌寒い、歩いて少しあたたまる体に涼しい風があたる。誰かと歩けばどんな話でも現在進行形で思い出補正がかかる。


田舎の夜は山の夜と似た香りがする。
静かですーっと透き通っていて1人である事がとても強調される。


1人になりたくて、考え事をしたくて、そんな気持ちでいたが1時間もすれば話相手が欲しくなる。




こんな夜は最高だとかこれが幸せなんだなんて言いながらゆっくり歩きたい。


この記事が参加している募集

サポートするとあなたは幸せになります。ほんとだよ??人間とはそうできてるんんだから!!