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わがままと言われたい


食物アレルギーが多いわたしは
食べられる食事の種類が人より少ない。

海鮮アレルギーなのに、うっかり寿司屋なんて
予約されてしまった日には卵巻きしか食べられないのだ。

そういうとき、ちょっとアレルギーがあってと
さらっと言えればいいのだけど、わたしは昔から言えない。

人に説明するにはアレルギーの種類が多すぎるし
生はダメだけど加熱すれば大丈夫なものや
体調によっても大丈夫な日とアレルギー反応が出やすい日がある。どれだけ忍耐強く優しい人でも途中で、それは良くてこれはダメなの?となる。わたしもなる。


なによりアレルギーが多過ぎて給食が食べられずに
お弁当を持たされていた子どものころ、
かわいそう、と気を遣った声で言われると
まわりと同じ食事が食べられないことより
みんなの視線が突き刺さっていたたまれない気持ちになった。

わたしは可哀想な子になるより
好き嫌いが多くてきらいな食べ物は平気で残しちゃうようなわがままな子の方がよっぽど健康的で憧れだった。


そういうわけで、わたしは
食事や友達との雰囲気に応じて
説明が面倒くさいと嫌いだから食べないの
と言うときもあるしアレルギーだから食べられないと
言うときもある。

周囲の反応は不思議で、
わたしがこの食べ物嫌いなのと言うと、
わがままだよ、残さないで食べないとというくせに
アレルギーなんだーと本当のことを言った時は
とても優しい口調でそうなんだ、可哀想ね
仕方ないよ気にしないでと言う。

仕方ないってなにに?とわたしは思う。

それでもわたしはやっぱり、お前はわがままだなと
呆れられたほうが嬉しい。
健康で贅沢な子ってことだから。

いまのところ、わたしは
友達からも今までの恋人からも
お前わがままなやつだなと言ってもらえているので
健康的だ。

好んで手に入れた、わがままは
たまにわたしを苦しめる。

相手を信じて自己開示をすることを怠った
罰なのかもしれない。

わがまま、はわたしの手に負えなくなって
膨らんでいく。

その下で、わがままじゃないわたしが
気がついてと小さく言う。

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