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あごしゃくれ犬との闘いin中国

中国の杭州には孔明の子孫が住んでいると言われている、諸葛村という村がある
そこは八卦思想から、村の中心に陰陽を表した大きな池があり、明朝の建物が残っているという風光明媚な場所だ
学生時代の2010年代にゼミ旅行として
ゼミの選抜メンバーと共にわたしは初めて中国へと行った

まず、諸葛村の入り口近くには牛久大仏ばりの
孔明像があり
杭州の駅から、乗ってきたてんとう虫みたいな形をした緑色の中国バスの中から見上げていた

バスの中では、当時反日運動真っ盛りなこともあり
第二次世界大戦の日本兵が、抗日運動家(なぜかちょいカンフー使い)に爆殺されるドラマがやっていて
日本人としてはなんとも言えない気持ちだったけれども
物語のとっぴおしのなさや、妙に爆発に気合の入った映像に、ドラマを作るにも抑圧されているであろう中で、クリエイティブを発揮できるのが抗日ドラマなんだろうなと思うながらも
結構アクションシーンが良くって、なかなか面白く、中国語はよくわからないのにも関わらず
その中国旅行中はよく抗日ドラマを見ていた

バス停から皆んなで歩くと、よく文革で残っていたなと思うような建物が並び
道が大きく広がる場所で、地球の歩き方にも出てきたあの池が村の中心に見えてきた!

さっき風光明媚とは言ったけれども
前言撤回
やはり中国、期待を裏切らない

村の中心にある池では、おばさんはちょっとした洗い物をしたり、子供は池で泳ぎ
おっさんは痰を吐いていた

ここはガンジス川か....?

私は目を疑った
ちょっとしたカオスな風景を目にした瞬間に
けたたましいクラクションと共にNHKの昭和をモチーフにした朝ドラに出てくるような、3輪トラクターが村の細い石畳の道をガタガタ言いながら走ってくるのだから
なんだか頭がくらくらするような場所だった

その上、そこら中に顎のしゃくれた中型犬のがうろちょろしていたのだから
ますますカオスさをました

私達は空腹だったので、
丸太みたいな巨大なまな板で料理屋の店主が何か野菜をぶった斬って
横ではおばさんが、異様に火力の強いガスコンロで中華鍋を振っている
そんな池の辺りの料理屋で腹ごしらえをしようとした

私達は片言の中国語や身振り手振りで
料理屋の中にある冷蔵庫を見て、「これが食べたい!」だの「これって何?」とお店のおばさんに聞く
おばさんは嫌な顔せず意味不明なことをいう我々を見てニッコリと笑いかけ
孫を見るような表情で食べ物をチョイスして、先ほどの火力MAXコンロで料理を作り出す

店の軒前で物をきる店主と炒めるおおばちゃん
そこら中に美味しい香りが漂うと先ほどのしゃくれ犬が匂いに釣られてよってくる
すると、先ほどまでニッコリと笑っていたおばさんが鬼の形相で犬にお玉を振り上げた

犬、恐怖の表情で引く
おばさん威嚇する
お玉はしゃくれ犬の頭スレスレを料理の汁と共に舞う
これを延々と繰り返し続ける

この攻防戦が繰り広げられ、もしかしたらあの犬お玉でぶん殴られたのかも..
ていうか衛生的に大丈夫そ...?と思いながら
恐怖で震えていた我々だった

震えているうちに、美味しい空芯菜の炒め物などが完成し、はらぺこの私達はモリモリと犬との闘に勝ったオバさんの料理を平らげた

犬はウロチョロとおこぼれに預かろうとテーブル近くにいたが
あげたら最後だと思い、心を鬼にして料理をかっくらった

その日からしばらく宿泊したお宿は明朝時代の建物で、泊まる部屋は普通のちょっと良い田舎の中国の家って感じだったが

その道中、またあのしゃくれ犬が道の側から出てきたのだ!!
「あれ?!さっきの犬?」「やっぱ食べ物の恨みか?」とか言っていたら
なんと、数匹いるじゃないか!

数匹でスクラムを組んで、けたたましく吠えてくる
しゃくれているだけあって、牙がよく見える.…

皆足がすくんで動けない中、
「おい!お前犬飼ってんだろ!犬の扱いは慣れているはずだから先人切って行け!!」とゼミの先生から言われ
私は一向の先頭というか犬との壁となり
道を歩いた

犬は勢いだけはすごいものの、日々お玉でぶん殴られているからか人間と一定の距離を保ち威嚇してくるだけだった

意外と気高いじゃん?と思いながら
顎のしゃくれもよく見たら、ハプスブルク家ってかんじぃ?と思いながら
私を先頭として、そろりそろりと道を歩きお宿に到着した

ミステリアスな未亡人(先生が言っているだけ)の
明朝時代のお宿は、その日中国アシダカクモが風呂場に出てパニックにを起こしたりしたが

数日いると村を彷徨いていても、しゃくれ犬も
「あ、お前らね」という顔をするだけで
特に恐怖体験をすることは無くなった

犬とも和解し
何とか数日諸葛村での、まったりとした時間を過ごしせたのは、今でもいい思い出なので
時々心がふと、あの日に戻る時がある

タイミングが合えば、出張の時でも自費で少し滞在延長して、また行きたいな

もしかしたら、シャクレ犬は代を更新して
さらにしゃくれているかもしれない
ハプスブルク家犬と我々が言っていたように

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