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「合理的配慮」と「対話」について

「合理的配慮」が令和6年4月から義務化されました。今回はそれについて、障害を持っている立場から少し考えてみたいと思います。

「合理的配慮」とは

「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」において、行政機関や事業者は「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。」と記載されています。
この法令の最後の部分を切り取って、世間一般的には「合理的配慮」と呼ばれています。法令の文面ってわかりにくいですよね。
具体的に考えてみましょう。私は車椅子を使用しているので、それを例に考えてみます。
例えば、スーパーで買い物をしていて高い位置のものが届かないときどうするでしょうか。
私は、「あの棚の上にあるものを買いたいので取ってもらえますか?」ということをお店の方に言います。
これが「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合」です。するとお店の人は棚から商品を取ってくれます。これが「社会的障壁の除去の実施」です。
この際の「社会的障壁」とは、商品が高いところをあるということです。
除去の実施」はお店の人が、商品を取るという行為です。
しかし、ここで注意すべきなのは、「必要かつ合理的な配慮」という点です。例えば、商品が高いところにあるという「社会的障壁」を除去するために、「すべての商品の1m以下のところに置いてもらいたい」と言った場合、それは「必要かつ合理的」な範囲に含まれるでしょうか?
私は「No」であると思います。それは「わがまま」だと思います。なぜならば、店舗の面積等を考えると、「合理的」ではないからです。
昨今、この「合理的配慮」という言葉がひとり歩きして、いろいろな場面で「わがまま」と混合されてしまいがちなので、今回、考えてみたいと思います。

「合理的配慮」と「わがまま」の境界線

先ほどの例のように、「合理的配慮」と「わがまま」は一歩間違うと混合されてしまいます。
では、その境界線は何でしょうか?
私は、「リソース(人・物・金)を含めて現実的に可能か?」という点であると思います。
例えば、階段しかない雑居ビルに「車椅子では、4階の店舗に入れないので今からエレベーターをつけてください」と言っても現実的ではありませんよね。それであれば、「4階の店舗の商品を購入したいんですが、商品の写真やサンプルを下に持っていただくことは可能ですか?」と店舗の方に居たいするのが適切ではないでしょうか。

ビジネスの現場では?

私は、企業に勤務しています。勤務するということは、「労働力を提供する」ということです。なので、「合理的配慮」についても、その観点を忘れてはならないと考えます。その勤務する場所で「労働力を提供する」上で、配慮が必要なことを考えることが必要です。
その配慮を受けると、どのように労働力(パフォーマンス)が向上するか?」を考えることが必要だと思います。
例えば、「事務所に段差があるので入れないから、スロープを付けるか、別の部屋で仕事をさせてもらいたい。そうすれば、コミュニケーションが取れてパフォーマンスが向上する」というのは「合理的配慮」の範囲内であると思います。一方で、「あの人とは、生理的に合わないので、一緒に仕事をしたくない」というのは「わがまま」です。

お互いを知ることが大切

ここまで色々と書いてきましたが、「合理的配慮」を受ける側としても、常に建設的な姿勢が必要だと思います。
初対面の人に「○○ができない」ということばかり言われても、困ってしまいますよね。
○○はできないんですけど、××はできるんです。なので、△△という方法はどうでしょうか?」というように、現実的な方法を提案すること、そのことが「合理的配慮」を受ける側にとっても必要なのではないかと思うのです。
そして、その前提としては、お互いの信頼関係であったりするので、一方通行ではない双方向のコミュニケーションで「お互いを知ること」から始めてみませんか。

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