インスマスの影/H・P・ラヴクラフト

https://www.shinchosha.co.jp/book/240141/

読了日2019/11/11

かねてより手を出そうとしつつも、
どこから読めばいいのかわからずに後回しにしてきた。
本屋さんでたまたま見かけた本書を手に取り、
「ああ、今か」
と思って購入した。

クトゥルー神話でも(多分)有名な、
7作品が収録されている。

「異次元の色彩」
新たな貯水池を造るべくその土地へ足を踏み入れた男は、
その土地に伝わる奇妙な話を老人から聞く。

化物はいる。
だが目に見えない。
少なくとも読者には、
その姿の輪郭だけはつかめるものの、
正体を見極めることを許してはもらえない。

ただ、そこには「何か」がいた。

それによって一家は崩壊し、
その土地は貯水池に沈むことを近隣住民は喜ばしく思うだろう。

「ダンウィッチの怪」
ダンウィッチで子どもが生まれた。
異様なスピードで成長を遂げる男、ウィルバー。
彼は祖父とともに、
家で「何か」を育てていた。
その奇異な様子に、
近くの住人は恐怖を覚える。
だがウィルバーは突如謎の死を遂げる。

「いつはお前たちはラヴィニーの子が父親の名前を呼野を聞く!」

ラヴィニーはウィルバーの母親の名前。
父親は不在というより不明。
しかしこの一言がかなり重要になってくる。
というか騙される。

そういう意味でも、
化物との対決シーンでも、
いちばん面白かった。

「クトゥルーの呼び声」
伯父の遺産整理で見つけた謎の石像。
それは漂流船の生き残りが、
ある不思議な場所から持ち帰ったものだった。

異教徒の伝承と、
不思議な場所。
そこにつながる謎の石像。
多くの人を巻き込み、
命を奪いながらも、
ストーリー中の人々が感じる恐怖までは伝わってこなかった。

「ニャルラトホテプ」
唐突に街に現れる博識の男。
人々は彼に魅了され、
そして悲鳴をあげる。

うーん。
よくわからなかった←
いきなり街に現れて、
住人を恐怖に陥れる。
それはわかる。
でも方法は?
現代ホラーと街の灯に慣れすぎた身としては、
混沌と闇が忍び寄って来る恐怖が理解できないみたい。

いってもど田舎の人間だから、
夜は怖い。
トイレやお風呂が家の外にあった頃もあったから、
その時は一人で行かなきゃならなくて、
一度だけ、
自分よりワンテンポ遅い足音がついてきたことがあった。
あれはなんだったんだろうな。
怖いってよりは、
なんだ?という疑問が勝っていた。
今思うと怖いな。

……そういうのがニャルラトホテプ?

無神論者の前には来ないよね。
(両親の実家それぞれが仏教と神道なのでハーフ)

「闇にささやくもの」
洪水の折に発見された謎の生物の死骸。
その正体をめぐり友人となったとある田舎の男性と手紙をやり取りすることになった「私」。
やがて男性の身に恐怖が迫る。
その恐怖の夜が手紙となって「私」のもとへ届く。

いつもは最後までほのめかされる程度の化物が、
最初から姿を表している。
死骸だけど。
その正体を追いつめようとすると、
周囲で奇怪な現象が起きる。

ホラーだわ。
人知を越えた「何か」が迫ってくる恐怖。
ただ、なぜか怖くはない。
ジャパニーズホラーとは趣が違い過ぎるのだろうね。
どんどんこちらに近づいてくる化物との距離感には、
恐怖とは別の、
胸踊る感覚があった。
「あえるの!?」みたいな。
バチ当たりだわ。

「暗闇の出没者」
古びた教会は誰も立ち入らない。
そこに好奇心だけを抱いた若者が足を踏み入れる。
何もいないはずのそこで、
彼は恐怖に出会う。

教会で死んでいた元新聞記者とか、
細工はおもしろみがあった。

「インスマスの影」
人々から嫌われる土地インスマス。
興味本位でそこを訪れた男が知るのは、
インスマスの住人の異様な姿。
インスマスの歴史。
その夜、男を襲う恐怖の本当の正体。

インスマスからの脱出から、
出自について男が知るラスト。
本当の恐怖は我が身のうちにあり、
ってところ。
周囲ではなく自分自身が信じられなくなるのが日本風ホラーなら、
自分自身の内なる呼び声を信じて周囲を信じなくなるのが外国風(ラブクラフト風)ホラー、
という感じがした。

読みたいと思っていた気持ちが期待を高めすぎたのと、
日本でさんざん可愛がられてきたクトゥルー神話を知っているせいか(他人のせいにする)、
あんまり怖くはなかった。
怖いもの嫌いな私にはぴったり!←

あと全体的に基本的に「夜」なのね。
暗闇がもたらす恐怖を背景に描こうとしているのはわかるんだけど、
バックがいつも同じなのは興ざめしちゃう。
だから「ダンウィッチの怪」は、
真っ昼間にもかかわらず化物と対決するシーンがあって興奮したのかもしれない。

何はともあれ、
初めてのクトゥルー神話との接触は楽しかった。
全集も読んでみたい。
お気に入りの邪神とか見つけてみたい。

八百万の神を受け入れる日本なら、
邪神の一柱やら二柱くらい平気でしょ。

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