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2018.04.04 勇気を出してクラスの打ち上げに行く・後編

女子と交流を深めたいなぁと思って、気持ちが焦るあまり予定よりもそこそこ早く家を出て(駅で30分ぐらい待つことになった)、意気揚々&ド緊張で会場に向かったものの、結果的に言うと、女子と全く喋れなかった。

どうして俺はこうも大事な場面でうまくいかない人生なんだ。近年は「そういう人生なんじゃなくて1つ1つの事例が上手くいかなかっただけであって、人生丸ごと悲観してんじゃねぇよこの感傷的ナルシスト野郎」と思っていたけど、ここまで上手くいかないとさすがに落ち込むよね。

自分をナルシストと罵ることで「そうなってたまるか」と自分を励ましていたけど、今回はナルシストなんて関係なくさすがに落ち込んだ。

まず会場に向かうまでだが、そこで女子に「案内してよ!」とか言って交流を深めようと思っていた。しかし1人も出会わなかった。1人でフラフラ歩いて向かい、あらかじめスクショした地図を使い自力で発見した。

客間に入ると、それまで数人いた男子が部屋から出ていった。後から聞くと、会場に来れてない人を迎えに行ったらしい。男子は俺1人、20人くらいの女子 ※1。その空気の中で自分は圧倒され、床に座り、誰とも目を合わさず、ひたすら黙っていた。

全て結果論なんだけど、そのタイミングで喋らなかったのが悔やまれる。後々みんな揃って机を囲んで座ることになるんだけど、男子グループと女子グループに分かれて座ったんだよなぁ。

最初を逃してはいけなかったんだよ。そこをがっつりスルー。そこで服を褒めるなり、何の話してるの?と聞いてみるなり、卓球で遊んでいた女子に「勝ってる?」と聞くなり…。終わってから思いつくんだよいつもいつも。

そして戻ってきた男子と固まって座る。隣の机に赴いて女子に話しかけるのも難しい。途中、女子に「アルフォートどう?」と声をかけに行った。しかしそれだけでそのターンは終了。「アルフォートどう?」からどう話をつなげればいいのかさすがに分からん。ちょっと不自然でしょ?

そして宴も後半に差し掛かったあたりで、Kくんが人生ゲームをしようと言い出した。自分は「人生ゲームじゃなぁ…」と思って参加しなかったが、なんとそれがおもいっきり裏目に出て、人生ゲームに沢山の女子が集まってすごく盛り上がっていた。その様子をはたから見ていて「俺も参加すりゃよかったなぁ…」と思った。

もうここまでくるとどうしようもないから、後は座って卓球してる人とか、人生ゲームで盛り上がってる人とか、「文化祭で一緒のチーム ※2 だったから写真撮ろうよ!」って盛り上がるグループとか、そういう人達を羨ましそうに見るだけで、電車があったから誰よりも早く帰った。

帰ってる時には疲労感と眠気がズッシリとしていた。なんか、ダメだなぁ。


※1 文系のクラスだったから男女比が極端に女子に偏っていた。男子12人、女子28人くらいだった記憶がある。

※2 文化祭で縁日をやって、クラスメイトが射的班・ヨーヨー釣り班などに分かれていた。その班ごとに写真を撮ろうと言っていたのだろう。ちなみに自分は数少ない男子のみで構成された班だったから、写真を撮ろうという話にもならなかった。


なんとか6年前の自分のケツを叩くようなことを言えないだろうかと頭を巡らせては見たものの、いかんせんこの6年で見聞きしてきた女性の怖さというのが頭をよぎって「そうなるのもしゃーない」としか浮かばない。

高2の時のクラスの女子とは全く喋ってなかったわけではないが、それでも男子の中ではあまり女子と仲良くできていなかった方だった。

女子と距離を詰めることがどうしてもできなくて、たまに俺なんかに話しかけてくれる女神のような女子に対して、スイッチを入れて明るくユーモラスに振る舞って、少なくとも「話しかけたことを後悔させないようにする」「お喋りで不快な気持ちにさせないようにする」ので精一杯だった。ただそれもちゃんとできているかどうかは分かんないけど。

Xを見てみろ、毎日のように女性がモテない男を叩いてるわ。親しげに話しかければ「こっちの『情け』につけ上がってくる」と一蹴し、逆に距離を取れば存在感が無さすぎて本当に忘れ去られてしまう。

非モテ男を叩くポストもそうだし、それをリポストする女性も同罪なんだよ。同性として恥ずかしくないのかよ、悪口でバズを稼いでる女性を助長して、野放しにしていることに。

そして逆のケースはまぁ見ない、モテない女性を叩いてバズを稼ぐ男なんて見たことない。異性叩きが容認されているのは女性ばっかりだ。それはやっぱり、性別が逆になる「だけ」であまりにも見てくれが悪くなるからだ。

未だに男尊女卑の残る社会で、日頃から男であること、もっと言うとヘテロセクシャルでシスジェンダー(異性愛者で体と心の性が一致している人)のマジョリティ男は、あまりにも特権を享受し続けている。

声がデカいことや出世していること、ないしはクラスの1軍の顔をしていること、モテるし女性に事欠かない生活を送ることで、自分の立ち振る舞いに一切疑問を抱かずに生活することができる。

ジェンダー論の新書を読むと「マジョリティ」という単語を、多数派という言葉以外にも「知らなくて済む人」「疑わずにいられる人」という訳し方をして、そういう意味合いを持たせる動きが見られる。

マジョリティは自分と同じ生活をしている人と毎日のように触れ合っているから、自分と違う人と接する機会が無いし、自分と他人の違いから言動を照らし合わせてみて、自分を省みる習慣がない。

だから苦しんでいる人間のバックグラウンドを「知らなくて済む」し、自分の言動が無意識のうちに誰か傷つけていないかを「疑わずにいられる」。

無意識のうちに特権にまみれている男がまだまだ性差別に苦しんでいる女性を叩くなんて、確かに知らなくて済んでるし疑わずにいられてる。

別に性差別をしたくはないのだが、やっぱり男は女性よりも発言内容に暴力性がにじみ出てしまう。たとえ字面であろうともその発言が男であるのならば、字面の奥に屈強な肉体やドスの効いた声が見え隠れして怖くなってしまう。

だから男の女性蔑視ポストは正当性をもって非難されるし、女性の男性蔑視ポストはある程度野放しにされているところがある。やっぱり女性蔑視というのは普通によくない。

まぁ男性蔑視の野放しといっても、マジョリティである自負を持っている側の男が「また弱者がなんかピーチクパーチク言ってるわ」という偉そうな気持ちでふんぞり返っているだけなんだけどね。何も知らなくて何も疑ってないという人が多いってだけ。

俺はモテないというコンプレックスがあるがためにマジョリティにはなれない。クラスの1軍や妻子持ちとかではないし、あと出世とか金銭面とかその他もろもろの人には言えない事情から、マジョリティになれている男とはひとまとめにしてほしくない。

そういう事情もあって俺は女性の男性蔑視ポストに真正面から腹が立つのだ。容認できない、本当に許せない。たまたま人付き合いが苦手な側に生まれ落ちただけでこんなにもSNS上で槍玉に挙げられるのかと考えると、こっちの事情も分かんない?という気持ちになる。

モテる女性側だって若さを消費して生きているとか、若さが無くなればあっという間に男から見向きもされなくなるとか、未だに男性優位の職場で息苦しい思いをしているとか、そういうしんどい事情とかあったりしないの? 弱者が更に弱者を叩くって、見てくれが悪いなぁって省みたりしないの?

…とか言ってる自分だって、正直女性に気持ち悪がられた瞬間もあったと思う。知らず知らずのうちに女性に不愉快な思いをさせたことだってどうせあるんだろう。

「勇気を出してクラスの女子に話しかける」という経験で言うと、ふと思い出したワンシーンがある。髪を切った女性は髪を切ったことに触れてほしいはずだという思い込みで、むやみに女子に「髪切ったの?」と話しかけたことがある。

「むやみに」だったという自覚がある。なんとかして話しかけるタイミングはないかとずっと窺って、割って入るかのような勢いで突然話しかけた記憶がある。案の定会話のラリーは続かなかった。なんか申し訳ないなぁって思う。女性だって「この人には髪を切ったことを触れてほしい」「この人に髪を切ったことを触れられたところで困る」という区別ぐらいあるだろう。

モテない男が勇気を出して女性に話しかけたところで、勢いがよすぎる声かけにはビックリするだろうし、下心が見えてると危機感だって抱くし、男が暴走して性暴力が起こってしまうと、女性が受けたトラウマは計り知れないものになる。

男性蔑視ポストの中にも、逆上した非モテ男からストーカーされたという、リアルに被害を受けた女性だっている。俺だってある程度は非モテ側に寄り添いたいが、迷惑・実害・恐怖心を与える男に同情の余地はない。それはちゃんと法で裁かれてしかるべきだと思う。

そういう事情を考えると、女子はたまたま同じ教室という名の箱にぶち込まれただけで、好きでも何でもない男から声をかけられる危険性があるわけだ。男子側が自分にセーブをかける必要性だってあるのだ。

あの時、人生ゲームに参加する必要があったのだ。Kくんが呼び掛けてくれたボードゲームなら参加もしやすいし、同じゲームをやっているという共通項さえあれば、むやみに話しかけるのではなく自然と女子と話ができたのだ。

何も無い時に無理くり話しかけるのではなく、共通項を持つべきなのだ。男子がみんな出払って俺1人が残された状態で、20人の女子に話しかけるなんて不気味すぎるに決まってる。黙り込んでる男子は薄気味悪いが、逆に必死に喋りかけてくる男子はもっと気味が悪いだろう。