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「休んだ影響は、予想の真逆」ベンチャー代表の産休が、会社にもたらした変化と成長

おはようございます。Morning Labo代表の中村朝紗子です。

「"いつか"を迎えに行くことを決めた」

私は昨年、ずっと先延ばしにしてきた「母になる夢」を迎えにいくことを決めました。ベンチャー代表として、20代の全情熱をモニラボに注いできた毎日。ここ数年は特に、仲間が増え、事業が成長し、よりダイナミックな仕事ができるようになり、責任とやりがいが何倍にもなりました。

だからこそ、母になる夢の優先順位を上げることは難しく、叶えるタイミングを見失っていたのですが、昨年、様々なきっかけが重なり、"いつか"を迎えに行くことを決めました。(詳しくはこちらのnoteへ)

そして8月、無事に元気な赤ちゃんが誕生しました。経営者と母。人生の役割を増やしたいま、新しい挑戦が始まっています。

正直なところ、産前は漠然と「産むことによって諦めたり、失うものもあるのではないか」と思っていました。創業5年、社員4人のベンチャーで、代表が抜ける。単純に1人抜けるだけでも会社の戦力は25%落ちるのに、それが代表であるということ。私の妊娠出産を、メンバーは心から祝福してくれましたが、実際は不安も大きかったはずです。私自身も、モニラボを離れて過ごす自分の姿が想像できませんでした。

でも、産んでみてわかったのは、経営者の妊娠・出産は、失うものよりも得られるものの方がはるかに大きいということ。子育てをしながら働く毎日は想像以上に大変ですが、妊娠・出産という経験は間違いなく、経営者としての価値観や、女性としての生きがい、会社のチーム力などをアップデートする機会になりました(もちろん社員の理解と協力があってこそなので、感謝しています)。

この記事では、産前産後の約3ヶ月を時系列で振り返りながら、それぞれの時期にどんなことに悩み、どんな準備をして、結果何を得られたのかをまとめました。

"いつか"の妊娠出産を考える女性や、産休を控える仲間がいる方がへの、エールやヒントになれば嬉しいです。


産休1ヶ月前:脱・属人仕事

◎この時期に得られたもの
・チームのフォーメーションを見直す機会
・メンバーの新しい才能や得意の発見

スタートアップは良くも悪くも、得意を生かした属人的な仕事配分になりがちです。モニラボもメンバーが少ない(=マンパワーが限られる)分、それぞれの得意を生かして爆速で事業を回す必要がありました。個人の裁量や感覚に任せて仕事ができるということはスピーディーではある一方、その人が抜けたときに仕事がストップしたり、引き継げる状態になっていないため、持続可能性が低いというデメリットもあります。産休前、モニラボもそんな状態で、「私が抜けたあと、この仕事は誰がやるの?」という心配が、まずは浮かびました。

そこで産休1ヶ月前は、私が抜けても、事業が持続するためには、誰が何の力をつけなくてはいけないのかを洗い出し、引継ぎのプランを固めました。それぞれがお互いの仕事をフォローしあう体制を作ったり、タスクを交換してみたり、いろんな実験が行われました。

結果、任せてみた仕事が思った以上にワークして、メンバーの新しい得意を見つけられたり、切羽詰まった状態で発揮される火事場の馬鹿力が、大きな事業飛躍に繋がったり。そんな奇跡が、モニラボでもたくさん起きました。(詳しくはこちらのnoteへ)

同時に私は、「得意」「早い」ファーストの仕事配分が、いかにメンバーのポテンシャルに蓋をしていたのかも気づかされました。やるしかない状況になって、初めて知るメンバーの新しい一面がたくさんありました。

アフターコロナを生きていても感じますが、私たちは「変わらざるをえない状況」に直面してはじめて、常識や慣習を見つめ直すことができます。通勤や対面会議のように、疑いもしなかったけれど、無くてもどうにかなるものが明らかになったり、対面や距離といった制限が生まれたことにより、新しいチャンスを見出すエネルギーが生まれることも少なくありません。

1ヶ月前の「誰がこの仕事するねん」と行った危機感は、チームの役割分担を見直し、時にはストレッチしながら得意を拡充する、最高の機会となりました。ゼロベースでチームフォーメーションを組み換えたことで、組織に新しい風が吹いたように感じます。「やるしかない」状況が、個人にも、チームにも、絶対的な成長の機会を与えてくれました。


産休2週間前:「決める」を任せる

◎この時期に得られたもの
・任せられない、自分がやった方が早い病の卒業
・メンバーの意思決定力が上がる
・モニラボらしい仕事の価値基準を言語化できた

産休中は約3ヶ月も会社を離れるわけですから、その間に生じるあらゆる意思決定も、メンバーに任せなければなりません。

冒頭、ベンチャーの仕事配分が属人的であるという課題を取り上げましたが、意思決定においてもそうでした。モニラボは、一人会社だった期間も長いため、あらゆるシーンで「モニさん(私の愛称)に確認してみよう!」が発生していました。

自分は、特に納品のクオリティや対外へのコミュニケーションについてこだわりが強く、メンバーのアウトプットにもこまめにフィードバックを行なっていたため、良くも悪くもメンバーは「モニさんチェック」なしでは安心できない体質になっていたと思います。しかし、そんな自分が休むとなると、メンバーは自ずと「決めて進める力」をつけなければなりません。

ここで重要なのは、プロセスはマニュアル化できても、意思決定の根拠は言語化しづらいということです。私がこれまで自分の感覚で行なってきた、「モニさんチェック」の根拠とは一体なんなのか。産休2週間前は、これを徹底的に見つめ直し、言語化することに挑んでいました。

井上のnoteにもありますが、「決めて進める力」をつけるために大切なのは、葉っぱの共有ではなく、根っこの共有です。経営においても、プロジェクトにおいても、メールの書き方1つにおいても、「今回はこうして」と都度トップダウンすることは簡単ですが、「どうしてそう判断するのか」を共有していないと、メンバーはいつまでも自分の意思決定に自信を持てません。逆に、根っこがしっかり共有されていれば、その葉っぱが多少個性的に伸びていこうと、大切なものはブレないから、安心して任せることができると思いました。

みんなが迷ったときに取り出せる根っこ作り(それを言葉に残すこと)が、産前2習慣前の、私の一番大切な仕事でした。そしてそれが完成に近づいたとき、私自身が「任せられない病」「こだわりが強いが故の心配性」を卒業し、メンバーの意思決定力を格段に上げることができたのです。


産前休暇中:怒涛のインプット

◎この時期に得られたもの
・名作や名著に触れまくった
・インプットに没頭できた

出産予定日1ヶ月前から、産休に入りました。最終出社日はとんでもないサプライズがありました。もらったお手紙には「母になるというモニさんの夢は、モニラボの夢でもあります」という一言も。えぇ、泣きました。

出産日ギリギリまで働く女性起業家も多いようですが、私の場合は1ヶ月前にきちんと休暇に入ってよかったなと思っています。引き継ぎ完了のゴール目標が、出産予定日より1ヶ月前倒しで設定されることで、「産後のトライアル期間」ができたからです。

産休に入ってから1〜2週間は「すみません、ここだけ分からなくて…!」とヘルプの連絡がちょこちょこ来ていました。でも数週間経った頃には、連絡も途絶え、むしろ「モニさんいなくてもどうにかなりそう!」と言われたことが、切なくもあり、嬉しくもあり(笑)。

出産を終えた今思えば、産前休暇って、まさに嵐の前の静けさです。人生後にも先にも、こんなにも時間を持て余すことはないと思いたち、お仕事で尊敬する先輩や仲良しの友達から、オススメの作品(本や映画)を教えてもらい、片っ端から手にとっていくことにしました。

印象的だった作品・本
・『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』(著・山口周さん)
・『大丈夫やで: ばあちゃん助産師のお産と育児のはなし』(著・坂本フジヱ)
・『おなか ほっぺ おしり』著・伊藤比呂美)
・映画「日々是好日」(3回目w)
・映画「最高の人生の見つけ方」

きっと人生で、何かに追われず、インプットだけに集中できる時間ってなかなかないと思います。出産がくれた人生のエクストラタイムでした。


出産直後:人生観、経営観の変化

◎この時期に得られたもの
・人生観、経営観の変化
・社会への新しいまなざし
・会社の存在意義や提供価値を、改めて深く考えるきっかけ

出産という経験は、本当に自分の人生観を変えてくれました。陣痛はなんと42時間の長期戦に(!)。人生で一番心が折れそうで、人生で一番痛くて、人生で一番喜びを感じ、人生で一番達成感を得た、忘れられない約2日間となりました。

自分の記憶の中で1番古いものは3歳頃の思い出なのですが、出産によって、それよりも前の空白の記憶が埋められていく気がしています。「両親もこんな気持ちで、私のことを産み、家族として迎え、育ててくれたのか」と、我が子を前に、知らなかった両親の思いを体感すると、言葉にはできない感謝が溢れてきます。同時に、すべての人がかつては新生児で、それぞれに育てた親がいるんだと思うと、世界の見え方が変わったりもしました。


世界の見え方が変われば、「会社の存在意義」や「命を燃やして働いた先に、何を残したいか」という問いに意識を向けざるを得なくなります。我が子が生きる未来に向けて、モニラボという会社は、どんなプレゼントを残せるのか。そんなふうに、考えるようになりました。

これまでの自分は、世界をほんの一つの面からしか見てなかったんだなぁと思います。今は命のリレーの当事者になって、世界を見つめる視点が一つ増えたことによって、事業アイデアや意思決定に、また新しい変化が生まれる予感がしています。

余談ですが、我が子は言葉に表せないほどかわいくて、かわいくて、かわいいです(語彙w)。守りたい存在ができるということは、その存在が生きる目的になるということ。そういう意味でも、自分の人生観が大きく変わりました。(プライベートでの出産育児のリアルは、ラジオ「#子育て100日会議」でも発信していますので、よかったら合わせてお聴きください)


産後2ヶ月:新しい働き方を模索中

◎いま得られつつあるもの
・経営における選択と集中
・新しい働き方のアップデート

産後2ヶ月が経った今は、「プレ復帰」という形で、社内のコミュニケーションを中心に、1日2〜3時間ほど、リモートで働いています。現在の業務は、こんな感じです。

・PL管理 / 事業開発
・未来につながる意思決定
・会社や事業のブランディング
・チームのモチベーション管理
・重要局面での壁打ち
・モニラボをさらに素敵な会社にするための試行錯誤

産前のようにプレイヤーとして復帰するのではなく、会社の未来につながるタネを撒くのが主な業務となりました。作業系ではなく思考系の仕事にシフトしています。こんな形での復帰ができたのは、産前に行われたフォーメーションチェンジに対応し、「決めて進める力」をつけ、数ヶ月必死で会社を守ってくれたメンバーのおかげです。

出産は本当の意味で、代表である自分にしかできない仕事が何なのかを考えるきっかけをくれました。先日、10月20日に会社は6周年を迎えましたが、この1年は、将来私たちがどんな道を歩んでいくのか、会社としてどうありたいかに真剣に向き合いながら、その土台を耕す年にしたいと考えています。

もちろん、育児をしながら働くことは大変ではありますが、授乳中も手は動かせないけれど、頭は動かせますし、公私混同経営やコロナ中に築いたリモートワークの基盤は、母と経営者の両立にとても有利だと感じています。

赤ちゃんを連れての出社も叶いました。みんなが喜んで抱っこしてくれて、授乳しながらのMTGも受け入れてくれて(笑)、感謝です。

今は、モニラボのこと、娘のこと。大切にしたいものを大切することで忙しい。そんな日々を過ごせて、本当に恵まれているなと感じます。


この先のこと

この先、メンバーもたくさんのライフステージの変化を迎えると思います。そんなとき、それを心から祝福したり、受け入れられる会社を作りたいです。

今回の妊娠出産では、ある時期から意図的に「ごめんね」を言わないようにしていました。代表が謝って、それを"申し訳ないこと"にしてしまうと、妊娠出産・休暇=謝ること、というカルチャーが根付いてしまうからです。(この話は久保が記事に書いています)

全ては順番。まずは代表が先陣を切って産み、休むことで、未来のみんなの選択肢を広げたり、守ることにも繋がればいいなと思います。

今は平均年齢20代の会社ですが、この先きっと、メンバーの年齢の幅が広がれば、それぞれの生き方や暮らし方のリズム、境遇の変化、人生の山谷があるでしょう。それは、生きていれば当たり前のことです。今回はそれが私の出産でしたが、そうした様々な変化や選択を尊重し、ウェルカムするカルチャーを作っていきたいと思います。


最後に

妊娠出産と仕事は、まだまだ「どちらか一方を選ぶもの」「トレードオフの関係」で語られることが多いように思います。私もそんなイメージを抱く一人でした。もちろん時間的制約を受けたり、体力的な負担がかかったりすることは事実です。でも、お仕事においては、想定されるリスクに対処し、準備し、メンバーの理解と協力が合わされば、得られるものが本当に大きかったです。

自分にとっては、経営者としての価値観、女性としての生きがい、会社のチーム力をアップデートする、かけがえのない機会になりました。

母と経営者、2つの役割を全うしていく挑戦は、まだまだ始まったばかりです。この選択や体験が、人生の選択に迷う女性たちや、そのそばにいる方々にとっての、未来のヒントやエールになれば、この上なく嬉しいです。

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