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noteはなぜ行きづまるのか?④ noteの機能について考える−Mediumと比較して見えてきたnoteの弱点


他のSNSと比較したnoteの弱さ

noteを再開したとき、自分はTwitterで次のようにつぶやきました。

 ‏森哲平 @moriteppei 7月12日
思うところあってnoteを久しぶりに見てるんだけど、何これ、残骸じゃないかってくらい、当時フォローしていたアカウントが皆、投稿をやめている。タイミングとしては1年前くらいか。でも、あれは確かに嫌だよね。
森哲平 @moriteppei 7月12日
すごい安い感じするし、自分の真横でイケダハヤトとかはあちゅう(よくわかってない)のnoteばかりが売れるっていうなら、もういっそのこと、自分の作品や文章には値段なんかつかないほうがいい、ってなるのはそりゃ当たり前で。何よりUIが悪いわ。
森哲平 @moriteppei 7月12日
noteは「おお、これで私の作品にも値段がつくかも!」って期待で始まったんだけど、やってみると、私の作品に値段がつかないのはプラットフォームの問題ではなかった、ってことに嫌でも気づかざるをえないわけで。しかも、言い訳しようにも、真横ではあちゅうの記事がガンガン売れると(笑)。

すると、そんな森のツイートを、Shoko Ogushiさんが次のように引用RTしたんですね。

Shoko Ogushi ‏@vostokintheair 7月13日
noteとかcakeとか、得体のしれぬ立ち読み不可テキストにお金を払う人がいるとは思えないのだが。mediumとかだと良質のテキスト(主に英文テキスト)が無料で読めて楽しいのだけど。

Medium?? お恥ずかしいながら、そんなSNSがあることを知りませんでした。そこで気になって、Medium。はじめてみたんですが、これがもう本当に目からウロコというか、設計発想が素晴らしいSNSなんです。これと比べるとnoteがいかにダメかがよくわかる。というわけで、今回はその話をしようと思います。SNSの設計発想としてnote全然ダメじゃん!っていう話。

Mediumとは何なのか

と、その前にMediumとは何なのか、という話なんですけど、一言で言えば「主に中長文主体、テキスト中心のSNS」です。

・長文、写真、動画を投稿=「ストーリー」(という)できるSNS
・文字数制限なし(Twitterとの違い)
・レコメンド=Twitterのリツイート、ブックマーク=Twitterの「スキ」に近い機能がある
・noteでいう「マガジン」のような機能=「パブリケーション」がある
・下書き、ドラフトを公開する前に指定したユーザーと共同ライティング/編集できる
・文章の一部を「ハイライト」できる(本に下線を引く感覚)
・文章の一部に「レスポンス」できる(特定の箇所にコメントできる)

と機能だけで説明していくと「文字制限のないTwitter」のような感じです。ゴシックにした点が特徴的ではありますが、機能から説明すると「長文も投稿できるTwitterね」「友達以外にも広く世界に公開しているFacebookね」って理解になるでしょう。事実、そのように使っているユーザーも多そうです。

世界でのユーザー数はかなり多い様子で、英語圏の投稿を見ていたら、相当数のブックマークやレコメンドが人気投稿にはついています。日本語圏ではまだローカライゼーションが完璧に済んでないこともあり、ユーザー数は少ないと感じます。

Mediumのすごさ

だけれども、このMediumの記事が非常に優良で高品質なものが多いんですよ。ちょっと試しにいじってみようとしましたけれど、見ていて思わず、どんどんブックマークが増えていきました。英語も堪能なら、いい記事集め放題なんじゃないでしょうか。たとえばこんな記事。

「ワーク/ライフバランスなんてバカげている」
オンデマンドエコノミーを理解する

思わず読みふけってしまいました。しかも、読んだストーリー(=投稿)に、ハイライトできる。レスポンスできる。つまり、ほうほう!と言いながら、本に線を引っ張っていったり、メモを書いたりする感覚に非常に近い。また、これがPCでもスマホでもやりやすいんです。

自分で文章も試しに書いてみました。書きやすい! インターフェースがとにかく洗練されているんですね。スマホからすべての操作を完結させることができます。

このMediumには機能やユーザビリティで見ても非常に優れた点がたくさんありますが、何よりも素晴らしいのは、その設計思想、フィロソフィーです。

詳しくは次回書きますが「パブリッシング(出版)革命」という思想の元に、①Webとは1つの巨大な本である。②「書く」とは「読む」であり、「読む」とは「書く」である。③「書く」は孤独な作業ではない、という3つのコンセプトがきっちり伝わってくることです。

これを「数あるSNSのうちの一つ」と考えると、本筋を外すと思います。SNSとしてその機能を言語化して考えていくと「毛の生えたTwitter」「今の所煩わしさのないFacebook」くらいになっちゃうんですね。そう捉えている人がたくさんいると思う、というか、基本そのようなものとして、心地よいSNSの一つとして受け止められている感じがします。だけれど、本当は違うんですよ!

で、このMediumの素晴らしさ、インパクトについては次回稿をあらためて詳述したいと思いますが、これと比べたときのnoteの貧弱さ、時代錯誤さ、って話なんですよね、まずは。

noteの機能の貧弱さ

noteの機能やユーザー特性、設計思想のマズさは、Mediumと比べるとすごくクリアーに見えてきてしまいます。丸裸。

①シェア機能がない。だから情報をnote内で拡散させるのがすごく大変。かつ、わかりにくい

Mediumもそうらしいですが、他のSNSなどからのリンク流入が実は結構少ない。つまり「Medium内で情報が相互に共有されてこそ、活性化するSNS」という性格があります。だからこそ、レコメンドやブックマーク、ハイライトといった機能が充実しているのですが、noteにはこれらに相当する機能がありません。いいノートがあっても共有できないんですよ。

とはいえ、他のSNSに「こんなん書きました〜」とnoteの宣伝をしても、フォロワー10万人レベルの深爪さんとかならまだしも、多くの人は見てもらいすらしないでしょう。本来であれば、note内で相互に言及して盛り上がっていかなければならないところ、相互言及がとにかくしにくい構造になっています。

言ってみれば、ボケばかりの漫才のようなもの。各ノートへのツッコミが【機能的に】入れにくくなっています。これはnote用語で言えば「全員がクリエイター」なのだが批評家不在、という状況だと思います(もちろん、批評家やレビューはありますが、機能的にそうしたことをしにくくしている、という意味です)

②有料ノートは購入しないとコメントできない
③相互にノートを引用しにくい

これも①と同様の効果を果たしています。有料ノートは買わないとコメントできない。確かに全部読んでないのにコメントできてしまう、というのもおかしな話ではあるのですが、当然のことながら、購入者の数は、ユーザーの数からすると圧倒的に少ないですし、購入者=コメントするユーザーになるとも限りません。結果、コメントの数が極端に減ることになります。

ユーザーからすれば、ノートを書く報酬、インセンティブには2つあります。リアクションとお金です。ここでユーザーは、有料にするとリアクションが減る、無料にするとお金が減るというトレードオフを突きつけられてしまうのです。

ノートにはシェア機能がありませんから、リアクションとしては、ほとんど何の機能も果たさない、昔のブログの「拍手」みたいな機能しかない「スキ」か、コメントしかないわけです。有料にすると、このどちらも減ります(でしたよね?)。SNSでリアクションが減る、というのは致命的でしょう。

③の引用がしにくい、というのはmediumと比較すると、その「残念さ」が際立ちます。mediumでは、誰の投稿に対しても、選択してタップするだけで、当該箇所にフォーカスした形でコメントをつけることができます。というか、コメントというより、他人の投稿を元にして、そこから新たな投稿を書くという感覚に近い。これに比べると、いちいち本文をコピペして、さらにURLをコピペしなければ引用すらできないnoteは不便です。

一応、他人のnoteを引用する方法はあります。

こんな感じですが、これって引用された人に通知いくのかなあ。通知、行ってくれ。通知も行ってほしいし、「XXさんが引用しました」と、相手のノート内に「スキ」と同じように表示されてほしいですね。mediumでは表示されます。


④誰がどのノートをどれだけ購入したかが本人にしか分からない

たとえばTwitterなら、スキよりもリツイートが、リアクションとしては「強い」と考えられます。一応何のツイートにスキしたのか、当人のページまで見にいけばわかりますが、リツイートなら、フォローしてるだけで、自分のタイムラインに自動的に出てくるわけですから。「強い」リアクションのほうが拡散性が高いのが、SNSの一般的な設計になっています。

mediumでも同じです。ブックマークよりもレコメンドのほうがリアクションとして強いですし、そのほかにもハイライト、レスポンスという特徴的なリアクションがそろっており、一つの投稿に対して、原理的には無数のリアクションをつけることができます。これがmedium内での拡散性、情報流通速度の高さにつながっています。

ところが、noteでは「リアクションの強さ=拡散性」という理屈が成り立ちません。スキをすれば、ノートを書いた本人以外にも、そのノートを見た全員にスキしたことが見えますし、スキからユーザーのページまでリンクが貼られていて、クリックしたら飛べる仕組みになっています。つまり、スキするほど、他のユーザーからフォローしてもらいやすい仕組みになっています。

他方、どう考えても、スキよりもそのノートを「購入」するほうが、リアクションとしては「強い」でしょう。身銭を切って特定のノートを「買う」のですから、無料でボタン一つで、実際は読まなくても押せる「スキ」に比べるとリアクションとして相当「強い」と言うことができます。

ところが、この、非常に「強い」、言いようによっては、全SNSの中で最も「強い」だろう「購入」というリアクションが、noteでは一番拡散性が低いという設定になっています。買ったはいいけど、買ったことが通知もされない、本人以外誰にも見えない。

人は他人の行動を模倣します。周囲がお金を使っていれば、自分も使おうとなるし、使ってもいいかとなる。みんなが家を買い始めたら、みんなが子どもを塾に入れはじめたら「ウチもウチも」と焦るものです。ところが、周囲が何に、どのくらいお金を使っているのか、noteではまったくわからない。これが致命的だと思います。

⑤アプリから有料ノートを購入できない
⑥アプリから有料ノートを作成・編集できない

今更ですが、これは本当に致命的です。medium見るとよくわかります。mediumではほとんどの機能がアプリでも使えます。ゆえにいつでも好きなときに投稿を書ける、読んでレスポンスできる。この快適さを知ったとき、noteアプリでのノート更新はないなと思いました。いや、mediumはほんとストレスフリーです。それに比べてnoteはどうだ。

人を待っている間、ちょっとした隙間時間に、いざおもしろいノートを読もうと思っても、有料のものはその場で読めません。おもしろそうなのを見つけたけど読めないって、それ一番のストレスです。結果、Twitterやmediumのような他のSNS、FeedlyやPocketで保存していたブログを閲覧するでしょう。Wi-Fiさえあれば、Kindleでその場で本購入して読むことさえできます。

現代において、結局取り合っているのは、お金ではなく時間です。お金は持ってる人は持ってます。ユーザーがつけるnoteの価格もほどほどに良心的ですから、あまり大した考えもなく、300円ならポチ、みたいな感覚はあってもおかしくありません。

ところが時間は24時間有限です。そしてそんなところにSNSやブログが無数に乱立しているのが現代です。スマホはいまや単なるコンピューターではなく、読書デバイスでもあります。「積読」した本すら読めてしまう。それなのにnoteだけ「有料のものは家に帰って、またあとでパソコンで見てね」で勝てるわけがないでしょう。

さらに悪いことに、noteの有料コンテンツはその場で読めないどころか、

⑦「あとで読む」「カート」機能がない

ために、面白そうなノートを見つけても、それを一時保存しておく術がありません。無料ノートなら「スキ」をつけておけば、あとで自分の「スキ」リストを覗いて、発見したノートにもう一度たどり着くことができますが、有料ノートだと、その「スキ」すらつけられません。そこで、その有料ノートを書いてるユーザーの他の無料ノートや、トークにスキしておいて、あとでそのユーザーをチェックする、とか、画面をキャプっておいて、あとで検索するとか、URLだけコピーしておいて、後ではりつけるとか、結構めんどくさい工夫、努力が求められます。

今、自分はどうしているかというと、おもしろそうなノートを見つけたら、Pocketに一度突っ込んで、それを後で見たり、Feedlyに登録することにしています。が、これをやるとPocketやFeedlyを閲覧する時間が増える。ますますnoteアプリを開く時間が短くなるため、結果的にnote離れしていってしまいます。また、無料の記事が最近はクオリティ高くて。とにかくおもしろい。

あと、過去に購入したノートもアプリからは一覧として読めないみたいなんですが、これってぼくの気のせいでしょうか? アプリの「ライブラリ」からは「スキしたノート」しか見られない。間違ってますかね??

このほか、note内についてるリンクをタップしても、アプリだと開けもしないのですが、これってバグ?? 自分のは開けませんでした。

⑧ノートにタグ付けしたり、ノートをカテゴリー分けして整理できない

そして、購入したマガジンやノートも含め、リスト化したり、自分でタグ付けして整理したりできませんから、結局、読んだらそれっきり、です。何度も見返したりしにくいですし、結果、一回読めば大体OKといった内容に適しています。情報がフロー的というか。TwitterやFacebookのように「流れていく」イメージになると思います。


ユーザー/カルチャーから見てもnoteは弱い

以上が機能から見たnoteの欠点ですが、ユーザー層や、カルチャーから見てもnote、弱いです。

①日本語メイン=日本人ユーザーばかり
②ユーザーの絶対数が少ない

あたりは、ほんと、どうにかならないんでしょうか。特に②は致命的。実質、スキとコメントしかリアクションがないのに、そのスキ、コメントすら購入者のみに限定して敷居をあげている上に、このユーザー数です。本当はそこそこみんな楽しんでいるのかもしれません。黙っておもしろいノートを購入し、読んでいる、いわゆるROMユーザーが結構いるのかもしれない。わかりません。でも、その「わからない」が問題です。本当は賑わっていても、閑散とした空気になってしまっています。

さらに、noteの「カルチャー」がこの傾向に拍車をかけます。

③互酬性が成り立ちにくい
④クリエイティブやネタを求められる

たとえば、くるりや高野寛をフォローして、彼らの音源やニュースをnoteでチェックしても、彼らが自分たちの存在に気づいて何か買ってくれる感じが全然しないんですよね。アーティストやイケダハヤトさんのような有名人は、見た感じnoteでのPR活動や、販売活動に力を入れている感じで、こちらの情報をあまり読んでいる感じがしないというか。ここらへんは単なる感覚です。違ってたらすいません。

投稿するにしても、なんとなく「クリエイティブ」なネタを求められます。「なんでも書いていいんだよ」とは言えますが、Twitterほどの気軽さはない。割り切ってROMアカウントって考えられればいいですが、よほどのおもしろさ、好意がないと、一方的にお金だけ払う感じになりがちです。

そんなわけで、いろいろと弱点が多く見えてきたnoteです。ただ、総じて見えるのはその「拡散性の低さ」です。これは拡散こそ命!なSNSにあって、結構貴重な性格なのではないでしょうか。次回はそんなところを見据えながら、欠点がそのままnoteの強みになる視点について論じます。

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