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「かけ算」と「たし算」で企画の質を高めよう

「定量的な根拠は?」
「ROI合っているのか?」
「施策の効果を試算したらどうなるの?」

時間をかけて企画を起案をしても、こういったFBを受けて差し戻しになる…。そんな経験はありませんか?

これらのFBは詰まるところ、「企画の効果を数字で示して欲しい」と言っているのではないかと考えています。

今回は、「数字の根拠を示しながら企画を考える方法」について考えてみたいと思います。

ケース:あるレストランでの会話

店員A:最近、店の売上が不調みたいだね。売上を回復させる施策を僕たちで企画して提案してみないか?
店員B:いいね!そもそもなんで売上が不調なんだろう?
店員A:個人的には最近寒くなってきたから、みんな外出しなくなっているんじゃないかと思うんだ。
店員B:たしかに。寒くなってきたよね。寒いけど、外出してもらう方法…。
店員A:温かいメニューは受けそうだね。鍋とかどうだろう?
店員B:良さそうだ!最近は韓国ドラマが流行っているから、韓国風のお鍋を提供して韓国フェアにしてみてもいいかもしれない。
店員A:いいアイデア!早速企画をまとめてみよう。

いかがでしょうか?
極端にデフォルメしてはいますが、あるあるの会話だと思います。

「寒いから鍋」というのは一見論理は繋がっているように見えるかもしれませんが、この企画をまとめて提案すると、恐らく下記のようなFBがなされるのではないでしょうか…?

・売上が不調な原因を「寒さ」と特定した根拠は?
・今回の施策で売上はどれほど回復するのか?
・他にもっと効果の出る施策はないのか?
・韓国ドラマだから韓国鍋って思いつきじゃないの?

一体、何が問題だったのでしょう。
3つのSTEPに沿って、このレストランの売上をあげる方法を考えてみましょう。

STEP1:売上を「かけ算」で分解しよう

まずは「売上が不調」という状況の解像度を高めていきましょう。

そのために売上の構成要素を分解します。
一番簡単に分解すると、例えば下記のようになります。

売上
= 来店者数 × 客単価

これに数字を当てはめていきます。

売上/月:500,000円
= 売上/日:20,000円 × 25営業日
= 来店者数:20人 × 客単価1,000円

事前に各指標で予算を設定している場合は予算と実績を見比べて。
仮に設定していない場合も「どの指標には伸ばす余地がありそうか?」という視点で考えてみることで、現状の売上に対しての解像度があがります。

同業態のレストランでは客単価は同様に1,000円前後のところが多いということが分かれば、客単価は問題ないことが分かります。
どうやら「来店者数」に余地が大きいようですね。

仮説の深さ次第では下記のように更に分解してみると発見がある場合もあります。

売上
= 来店者数 × 客単価
=( 座席数 × 満席率 × 回転数 ) × 客単価

このように売上を分解するメリットは2つあると考えています。

① 課題設定の解像度が高まる
② ROIの計算が簡単になる

① 課題設定の解像度が高まる

分解をしない場合、解くべきは「売上を上げるには?」という課題設定になります。
一方で分解をして、伸ばすべき指標に当たりがつけられると、課題設定は「来店者数を増やすには?」とよりクリアになっています。

後者のほうが課題に対してシャープな打ち手を検討することができるはずです。

② ROIの計算が簡単になる

指標をかけ算で分解すると、各指標を伸ばした際の売上へのインパクトが簡単に計算できるようになります。

仮に本来の月間売上目標が75万円だった場合は、下記のように来店者数を30名(+10名)にすれば良いことがわかります。

売上/月:750,000円
= 売上/日:30,000円 × 25営業日
= 来店者数:30人(+10名) × 客単価1,000円


このように売上をかけ算で分解することで、
・どの指標を伸ばすか?
・その指標を伸ばした場合のROIは?
という2つの問に答えることができるようになります。

STEP2:指標に影響する因子を「たし算」で深める

STEP1で課題設定が「来店者数を1日20名から30名に引き上げる」だと特定されました。

ここからは「来店者数」を更に解像度を高めて考えていきましょう。
STEP1では売上をかけ算で考えていきましたが、STEP2では来店者を構成する要素を「たし算」で整理していきます。

勝手に「たし算」と呼んでいますが、

来客数=●●+▲▲

となるような切り口をみつけて分解していく作業になります。

例えば以下のようなものが考えられます。

・男女
・来店回数
・居住エリア

それぞれが「たし算」で来客数を構成しています。

・男女(来客数=男性客数+女性客数)
・来店回数(来客数=初回来客数+リピート来客数)
・居住エリア(来客数=近隣来客数+遠方来客数)

マーケティング用語では「セグメント」と言ったりもしますが、来店者が何と何を足し合わせて構成されているのかを考えるのです。
MECEを意識して分解すると、「これ抜けていない?」というFBを防ぐこともできます。

切り口を考える際には、自分なりの仮説を持つことが有効です。
例えば「リピート客は多いが、1回目の客は少ないのでは?」という仮説を持って来店回数で分解をしてみると、

来店者数20人
= 初回来店客:5人 + リピート客:15人

ということがわかりました。

リピート客に対して、初回来店客が少ないことがわかりますね。
どうやら来店者が増えない要因は「初回来店客の少なさ」にあるようです。

STEP3:施策を考える

STEP1・2を経て、売上の不調は「来客数、それも初回来店客の少なさ」に要因があることがわかりました。

ここまでで課題が特定できたので、いよいよ施策の検討に入っていきます。

施策を検討する際には「発散」と「収束」を意識すると考えやすくなります。

1. 発散

アイデアを洗い出して広げる段階です。

今回の課題設定「初回来客者を増やす」だとすると、下記のように広げられます。

・初回来客の方向けの割引キャンペーンを実施する
・店の前で試食を行う
・町内イベントに出店して想起してもらう

しかし、これでは「他にも選択肢がないのか?」がよくわからないですね。もしかしたらもっと良い選択肢があるのではないか…。

思いつきだけでは限界があるので、ここでもいくつかの切り口を用い「課題の要因+解決策」をセットで考えることでアイデアを出しやすくしてみましょう。

例えばマーケティングのファネルを切り口として用いて「初回来店者が増えない理由」を分解してみます。

それぞれのファネルで「課題の要因」を洗い出し、それに対しての「解決策」を洗い出してみたのが下記です。

このように切り口をわけ、課題の要因と解決策をセットで洗い出すことで、網羅的に施策を洗い出すことができました。

2. 収束

発散で洗い出しをしたあとは収束を行います。
ここではそれぞれの施策の中で筋の良いものに絞っていきます。

筋の良し悪しの評価軸にはインパクト×実現可能性のマトリクスが使われることが多いです。
評価軸は考えようによっては無数に検討できてしまうのですが、施策検討の際はベースはこの2軸で問題ないかと思います。

発散で洗い出した施策をインパクト×実現可能性の軸でマッピングすると以下のようになります。

インパクトと実現可能性は定量的なファクト情報に加えて、定性的な情報(お客様の声なども)も踏まえることができると判断に立体感が増していくでしょう。

例えば、顧客アンケートでは「気にはなっていたものの、なんとなく行くキッカケがなくて初めて来ました。また来ます!」というような声が多く集まっている。このような定性情報があれば、「行くキッカケを作る」ための初回限定クーポンの筋が良さそうであることがわかります。

実際の意思決定の場面においてはマッピングで右上にあるから…というロジックだけでは決断ができません。
顧客の声などの定性情報も踏まえたインパクト×実現可能性で意思決定をしていくことが重要です。

ここで1つ考えたいのはマッピングの中での優先順位の問題です。いったいどこから手を付ければ良いのでしょうか?

最優先は

1. インパクト:大きい × 実現可能性:高い

であることは文句がないと思います。

では次に優先すべきはどれでしょうか?

優先度は

2 > 3
2. インパクト:大きい × 実現可能性:低い
3. インパクト:小さい × 実現可能性:高い

です。

なぜなら3はいかに簡単に実現はできようとも、せっかく施策を実施しても効果があまりないのでは意味がないからです。

言われてみれば当たり前ながら「効果は小さいけど、簡単にできるものに手を付ける」という場面は日常に多いのではないでしょうか?

今回はインパクトも大きく、優先度も高そうな「初回限定クーポン」に手を付けていきましょう。

ケース:あるレストランでの会話(かけ算とたし算で考えてみた編)

ここまでかけ算で分解し、たし算で深めて、発散と収束で施策を検討するプロセスを整理してきました。

2人の会話はどのように変化するのでしょうか?

店員A:最近、店の売上が不調みたいだね。売上を回復させる施策を僕たちで企画して提案してみないか?
店員B:いいね!そもそもなんで売上が不調なんだろう?
店員A:売上=来店者数×客単価だよね。同業態のレストランも客単価は1,000円くらいだよね。ウチも客単価は問題なさそうだ。
店員B:ということは来客数かな。男女で分けても来客数の差はあまりなさそうだな…。
店員A:リピートされてないとかはどうだろう?
店員B:初回来客と2回目以降来客に分けてデータを見てみると…あれ、全体の75%がリピート!?むしろ初回来客のお客様が少なそうだ。
店員A:なるほど!解決すべき課題は「初回来客者を増やす」ということだね。
店員B:初回来客が少ない原因は何だろう。「知ってもらえていない」とかなのかな?
店員A:他にも「興味を持ってもらえない」「検討段階で選ばれない」「行ってみるきっかけがない」などもありそうだ。
店員B:そういえばお客様から「前から気になっていたけど、なかなか来るきっかけがなくて」という声はたまにもらうかもしれない。
店員A:初回来店のハードルを下げる必要がありそうだね…。
店員B:初回来店の方だけお得になるクーポンを配布するのはどうだろう?
店員A:なるほど!それであればすぐに始められるし、初来店の方に「行くキッカケを作る」こともできそうだ。課題の解決にも繋がっていそうだね。
店員B:さっそく企画をまとめて店長に提案してみよう!

こんなイメージでしょうか。

今回はかなりきれいに議論が進むケースで考えました。
実際に検討をしてみると、考えをすすめるうちに新しい発見があり、行っては戻ってを繰り返すことになります。
そんな行き来を繰り返しながら、仮説の精度も上がり、課題の解像度も高まり、よりシャープな施策を考えていくことができるようになるはずです。

※参考
企画の考え方の過程では「数字で考える」思考が必要になります。
ご興味ある方はこちらの本などがおすすめです。

長文でしたが、今日はこんなところで。
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