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【1分小説】月明かりの幻か【300字小説】

お題:「流れる」
お題提供元:Twitter300字ss(https://twitter.com/Tw300ss)
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 やっと縄が切れた。

 たった一本。しかし岸と小舟を繋いでいたそれを切ることは、この地との縁を切り旅立つことに等しい。
 小舟が動き始めた。

 どうにもならない人生だった。
 一攫千金を夢見、全て投げうって山を掘り続けた。結局、黄金も埋蔵金もなかった。残ったのは多額の借金と、老いぼれた体だけだ。

 川の流れはいよいよ早く、俺が人生を賭した山も通り過ぎる。

 ──目を疑った。

 夜闇の中、俺の掘った山に、金色の一縷いちるの光。
 月明かりの幻か。それとも、まさか本当は──。

 確かめる余裕もなかった。落胆も希望も幻も、急流は全てを飲み込み、俺を知らない場所へ運んでいく。

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