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【1分小説】Designed Child

お題:「永遠のデザイナー」
お題提供元:即興小説トレーニング(http://sokkyo-shosetsu.com/)
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「駄目! 椅子が五ミリずれてるわ」

またあの人がわめいている。

私は隣の部屋で、余りもののビンゴカードを何気なくもてあそびながら、
彼女の怒りが静まるのを待っていた。

「いい? デザインは一番合理的な形を追求するのよ。一番シンプルで、研ぎ澄まされた形に」

助手たちが謝りながら椅子をずらす音が聞こえる。

3番81番66番。私はひとり、意味をなさない数字をぷちぷちと開けていく。
景品なんてもらないのに。

「誰よ、この花瓶を用意したのは!」

あと一マスで斜め一列が開く。
残っているのは真ん中の一マス。普通なら、一番最初に開けるはずの場所。
けれど私には開けられなかった。
このマスの上に、彼女が居座っているような気がしたからだ。
私は永遠にビンゴできないのかもしれない。

ビンゴが嫌になった。
待ち合わせの時間に遅れる。私は鞄を手に取り、隣の部屋へ行った。

「A美、どこ行くの!」

テーブルクロスや椅子を怒るのと同じ調子で、彼女が私に向ってわめいた。

「デート」
「許さないわよ。あなたはここの」

彼女、母親が言い終わる前に、私は玄関に行き外へ出た。

私は彼女にデザインされたくない。