心の優しい皆様へ

 僕が19歳の頃にタクシーの運転手から聞いた話です。


 話し手が中学生の頃、近所に一人で遊んでいる男の子がいたそうです。
 その子は1人でいつもご機嫌そうに鼻歌を歌っていて、時折
 「みつけた!!!!!」
 と大きな声で叫んだかと思うとダッシュでどこかに走っていき、しばらくたつと元の位置へにこやかに戻っていくことを繰り返す不思議な子どもだったそうです。
 そのことを何と無しに家族に話しても、そんな子は知らないと言われて何となくお化けなんだなと腑に落ちて近寄らないようにしていたそうです。
 それを証明するようにクラスメイトに聞いてみても知ってる子と知らない子がまちまちだったようです。


 50代のタクシー運転手はそんな話を乾いた笑い声を交えながら話していました。
 続いてこんな事を話し始めました。
 「いやぁ。この話続きがあってね。その子を知っているクラスメイト、ちらほら死んじゃってるんですわ。事故とか病気とか。普通にこの年なんでたまたまかもしれないんですけど。」
 「その死んじゃったクラスメイトに共通してその近所の子どものお化け?みたいなを怖がって噂もせずに見ても無視してたんですよ。僕らみたいな重面白がって話をしてる人はこの通りピンピンですわ。ガハハハッ。」
 「仕事柄他人と話すことは多いので助かってますわ。お客さんも機会があったら話した方がいいかもしれませんよ。そしたら見つからないかも。あ、到着です。ありがとうございましたー。」


 心の優しい皆様へ。

 この文章を読んでいただきありがとうございます。

 まだ見つかりませんように。

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